Musical Theater Japan

ミュージカルとそれに携わる人々の魅力を、丁寧に伝えるウェブマガジン

2019年11月のミュージカルPick Up

紅葉の楽しみな季節が到来。劇場街でも色とりどりの話題作が登場します!
 
【11月の“気になる”ミュージカル】
『ダンス・オブ・ヴァンパイア』11月5日初日←植原卓也さんインタビューを掲載!
 
【別途特集の舞台(上演中・これから上演の作品)】
『パリのアメリカ人』←石橋杏実さん・宮田愛さんインタビュー/『ラヴズ・レイバーズ・ロスト~恋の骨折り損』村井良大さん三浦涼介さんインタビュー、観劇レポート/『ラ・マンチャの男』←上條恒彦さんインタビュー観劇レポート/『ビッグフィッシュ』←川平慈英さんインタビュー/『組曲虐殺』←上白石萌音さんインタビュー/『シスター・アクト~天使にラブソングを』←森公美子さんインタビュー屋比久知奈さんインタビュー/『ファントム』←愛希れいかさんインタビュー/『Saturday Night Fever』来日公演←リチャード・ウィンザーさんインタビュー/『フランケンシュタイン』←中川晃教さん、加藤和樹さんインタビュー/『デスノートTHE MUSICAL』←甲斐翔真さんインタビュー/『CHESS』←ラミン・カリムルーさんインタビュー

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』
壮麗にしてコミカルな"熱狂のミュージカル”『ダンス・オブ・ヴァンパイア』
11月5日~27日=帝国劇場、その後名古屋、博多、大阪で上演 公式HP 

【ここに注目!】

名匠ロマン・ポランスキー監督の映画『吸血鬼』(1967年)をポランスキー本人の演出、『エリザベート』のミヒャエル・クンツェの脚本・歌詞、ジム・スタインマンの音楽で舞台化し、97年にウィーンで世界初演。日本では2006年に山田和也さんの演出で初演、大好評を博したミュージカルが5回目の上演を迎えます。 

トランシルヴァニアの山深く、ヴァンパイア研究に燃えるアブロンシウス教授と助手のアルフレートが、宿の娘サラを救うべくクロロック伯爵の城へと乗り込むが…。 

スタインマンの壮麗なメロディも魅力ですが、日本版では何といっても山口祐一郎さんが初演以来演じるクロロック伯爵の、幽玄とも言うべきオーラと歌声が圧倒的。石川禅さんが09年の再演以来、飄々と演じるアブロンシウス教授との対決も注目されます。ほかサラ役の神田沙也加さん、桜井玲香さん(ダブルキャスト)、アルフレート役の相葉裕樹さん、東啓介さん(ダブルキャスト)、伯爵の息子でアルフレートを誘惑するヘルベルト役の植原卓也さんといった若手ホープも、重厚にしてコミカルな世界へと観客をいざないます。 

クライマックスにはスタインマンがかつて映画『ストリート・オブ・ファイヤー』に提供した楽曲“Tonight Is What It Means To Be Young”が登場。観客を巻き込んで熱狂のひと時が展開することでしょう。

 

【ヘルベルト役・植原卓也さんインタビュー:自分でハードルを上げつつ、スケール感たっぷりのヴァンパイア物語に取り組んでいます】 

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植原卓也 88年大阪府出身。2000年にデビュー。『ミュージカル テニスの王子様』、『ミュージカル 黒執事』『イン・ザ・ハイツ』『スカーレット・ピンパーネル』『キューティ・ブロンド』等の舞台、TV、映画等幅広く活躍している。

――ヘルベルトという役について、どんなイメージをお持ちですか? 

「前回公演の上口耕平君演じるヘルベルトを観て、強烈なインパクトを残せるキャラクターだと思いました。耕平君は以前からの知り合いで、もともと明るい方だけど、その彼が数割増しで弾けていて。でもそこまで没頭するからこそ、作品も盛り上がる。それに、本作は華やかに見えて、ヴァンパイアの物語なので、やっていることは結構残酷だったりするんですね。重い空気が流れかねないところを、面白く(エンタテインメントとして)見せている要素の一つがこの役なのかな、と思っています。 

今回、僕は初参加なので、はじめ凄く緊張していたんですよ。初めての読み合わせで、いきなり山口(祐一郎)さんの隣でしたし。でもその時、演出の山田和也さんが真顔で“いいよ、めちゃくちゃいい”とおっしゃって下さって、それに凄く励まされました。…と、自分でハードルを上げていますが(笑)」  

――ヘルベルトというと、かつてこの役を演じた吉野圭吾さんの、露出度高めの衣裳を含めた怪演が忘れがたいのですが、ちなみに今回は…。 

「まだ本番の衣裳についてはどうなるか聞いていませんが、僕としては求められれば(露出度高めの衣裳も)大丈夫です!」  

――お稽古はどんなご様子ですか? 

「今回セットが新しくなって、それによって皆の動きが変わってきているので、一から作っている感じです。ちょうど今日、僕の演じるヘルベルトがアルフレートを誘惑する二幕の場面を初めてやるんですよ。歌や台詞はもちろん入っているけど、具体的に動くのは今日が初めて。今日、稽古が終わったらどういう気持ちになっているのか、自分でも楽しみです」  

――ヘルベルトはアルフレートに対して遊びでアプローチしているのでしょうか、それとも本気で自分のものにしようと? 

「ヴァンパイアは極上の血を求めているので、本能で彼を求めているのだと思っています。ヴァンパイアについてはいろいろな説があって、自分の好みだったり綺麗な人間の血はすごく欲しくなるそうです。きっとヘルベルトにとって、アルフレートは好みのタイプで…」 

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ヘルベルト(植原卓也)


――一幕でアルフレートたちがやってきた時、ヘルベルトは彼に対してひとめ惚れを…⁈ 

「そんな感じみたいですね。これからの稽古でどうなるかわからないですが」  

――アルフレート役は二人いらっしゃるので、それぞれに惹かれるポイントが出来そうですね。 

「今後出てくると思いますね。バッチ(相葉裕樹さん)は何年か前からの知り合いで気心も知れているし、とんちゃん(東啓介さん)ははじめましてだけど年下で可愛らしいので…と言うとそれだけで変なふうに聞こえてしまいますが(笑)」  

――父親のクロロック伯爵役は山口祐一郎さん。どんな親子関係になるのか、楽しみですね。 

「山口さんとははじめましてなんですが、“自由になっていいんだよ”と言ってくださったり、想像していた3倍お優しい方で、緊張は一気にほぐれました。ヨーロッパの伯爵家ということで距離のある親子を想像していたけれど、わざわざ溝を作る必要はないし、愛のある父親に甘やかされて育った息子というふうにもできるなと思っているところです」  

――ジム・スタインマンの音楽はいかがですか? 

「わくわくする音楽ですね。二幕の頭、ダンサーの方々が踊りまくるナンバーなんて圧巻です。ここの振付はすべてのカウントが動きで埋まっていて、この作品に自分も参加しているんだなと、見ていてテンションが上がります。 

そういうナンバーもあれば、僕とアルフレートとの掛け合いのナンバーは、怯えるアルフレートに対して我が道を突き進むヘルベルトのギャップが面白くて。ヘルベルトって、ミュージカルでなくても普段から歌っているんじゃないかな、なんて思いながら歌っています」  

――“弾ける”演技というのはやりやすいですか? 

「正直、簡単ではないですが、こういう役の時は稽古場でもなるべくテンションを高く上げるようにしているとスイッチが入りやすいです」  

――役に影響されるタイプですか? 

「されますね。素に戻る時間は必要なので、家に帰ったらリセットするようにしていますが、『キューティ・ブロンド』の時は抜けた二枚目みたいな役だったので稽古場でもそんな感じだったと思いますし(笑)、『黒執事』の時は周りに積極的に絡んでいました。以前共演した方はその時の作品の印象で僕に話しかけてくれるので、そのアプローチで“あの作品でご一緒していた”と思い出せたりもします」  

――どんな舞台になりそうでしょうか? 

「本当に面白い舞台になると思います。今までご覧になった方もいらっしゃると思いますが、今回はさらにスケール感がアップして、圧倒されると思いますし、他の帝劇でかかる演目とは違った華やかさのある舞台になると思います。最後にお客様も一緒に踊れるのもめちゃめちゃ楽しみです。帝劇で(お客様を)煽れる機会なんてなかなかないと思いますので。 

カンパニーの中には続投の方もいらっしゃって、作品愛の強い方ばかりです。和やかな稽古場で僕ら初参加組も居やすくて、エネルギーを発揮しやすいですね。このまま頑張っていけば楽しい舞台になりそうだね、と相葉君たちとも話しているところです」 

ふり幅をこなせる役者を目指して 

――プロフィールについても少しうかがわせてください。植原さんは12歳でダンスグループのメンバーとしてデビューされたそうですが、ダンサーを目指していたのですか?

 「というわけではないんです。踊ることは好きで母にダンス教室に入れてもらって通っていたら、そこにたまたま今の事務所の会長さんがいらして、声をかけてくださって。ダンスとボーカルのあるユニットでデビューさせていただいたんです。夢を抱く前に奇跡が起きたような展開でした」  

――では例えばEXILEのような、TVに出る方だったんですね。 

「そうですね、最初は音楽番組にすごく出させていただきました」  

――ミュージカルとの出会いは? 

「初舞台が19歳で、25、26 歳ぐらいが初ミュージカルだったと思います」  

――フィット感はありましたか? 

「いえ、こんなすごいものに自分が出ていいのかと思いましたし、(ミュージカル)経験がなかったので、受け入れられる自信もありませんでした」  

――ダンスと歌という武器があったにも関わらず? 

「“少年にしては歌える・踊れる”というレベルだったと思うんです。大きくなって、ダンサーを目指している方と並ぶとまた違う世界が見えてきました。でもやっていく中で、応援して下さる方がいたり、現場で“また次も行けますね”といって下さる人がいたりして、自然とやる気がわいてきたし、事務所でやっているコンサートなどを通して、経験を積む機会に恵まれました。周りと違う自分を活かせるものはなんだろうとなった時に、おのずと舞台、ミュージカルに行き着いて、今に至ります」  

――最近では『るろうに剣心』の相楽左之助役で、歌舞伎の見得的な動きをきれいにこなしていらっしゃったのも印象的でした。 

「あの時は演出の小池(修一郎)先生のこだわりもあり、実際に歌舞伎俳優さんに何度かご指導いただきました。そう言っていただけて嬉しいです」  

――その都度、ご自身の引き出しにされていらっしゃいますね。ちなみに、これまで一番ご自身に近かった役は? 

「うーん、無いです(笑)。なんでこんなにテンションの高い役をくださるんだろう、と不思議ですが、だからこそ役を演じるということが楽しいです」  

――どんな表現者を目指していらっしゃいますか? 

「このところ自分でもびっくりするくらい、いろいろな役柄をいただいていて、例えば『るろうに剣心』の相楽左之助は“THE男”で筋肉ムキムキな役柄でしたが、今ヘルベルトで求められてるのは妖艶さ。今後もこうしたふり幅をこなせる役者になっていけたらいいなと思います。 

でも、最近『エリザベート』で初めて僕を観てくれた方が“すごくよかったです。『ダンス オブ ヴァンパイア』も楽しみにしてます”と言って下さったんですが、今回、『エリザベート』のエルマーとは全然違う役どころだけど、大丈夫かな…。エルマーのイメージでヘルベルトを観た時の衝撃って半端ないんじゃないか、というのがちょっと心配です(笑)」 

(取材・文=松島まり乃)

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