Musical Theater Japan

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次世代の『デスノート』を担う新星、甲斐翔真に訊く

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甲斐翔真 東京都出身。16年に『仮面ライダーエグゼイド』でドラマデビュー。映画『写真甲子園0.5秒の夏』『君は月夜に光り輝く』等の話題作に出演。『デスノートTHE MUSICAL』で初舞台にして初主演。(C)Marino Matsushima

そこに名前を書きこまれた人間は死ぬという死神のノートを手に入れた天才高校生と、彼を追う探偵「L」の攻防を描いて大ヒットした漫画を、作曲=フランク・ワイルドホーン、演出=栗山民也と日米の才能がコラボする形で2015年に舞台化。日本版の演出がライセンス輸出され、現地キャストによって上演された韓国版も大きな話題を呼んだ『デスノートTHE MUSICAL』が2020年、オール新キャストで上演、新たなフェーズを迎えます。

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『デスノートTHE MUSICAL』(C)大場つぐみ・小畑健/集英社

この新生『デスノート THE MUSICAL』で、村井良大さんとダブルキャストで主人公の夜神月を演じるのが、舞台初出演にして初主演となる甲斐翔真さん。16年に『仮面ライダーエグゼイド』でドラマデビューしたばかりの新人ですが、オーディションで圧倒的存在感を見せ、この役を射止めたのだそう。

初演から5年、作品が一過性のブームに終わらず、恒久的な光を放ち続けるミュージカルとなってゆくか、大きな試金石となる2020年公演の芯を担うこととなった甲斐翔真さんとは、一体どんな逸材なのか。現在、稽古のスタートに向けて出来うる限りの準備を積み重ねているという彼を取材しました。

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『デスノートTHE MUSICAL』(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 写真提供:ホリプロ

ーー甲斐さんは今回が初ミュージカルとの事ですが、以前からミュージカルに関心があったのですか?

「はい、小さい頃に『ライオンキング』を観て、何度もリピートするほど好きでした。歌うことも好きだったので、この業界に入ってからはいつかミュージカルに挑戦できたら、と発声練習や歌唱練習を重ねていました」

 

ーーミュージカルのオーディションと言っても色々な作品があると思いますが、その中でも『デスノート』を受けたのは?

「小学校の時に映画版が公開されて、学校でも流行っていたこともあって、物語や登場人物については知っていました。でもその後、ミュージカル版が作られていたことは知らなかったんです。それが昨年、Act Against Aidsというチャリティ・コンサートに出演した時、柿澤勇人さんと小池徹平さんが本作のナンバーを歌われていて。すごくかっこいいロックナンバーで印象に残っていたので、今回のオーディションの話を聞いて、ぜひ挑戦したいと思いました」

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『デスノートTHE MUSICAL』(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 写真提供:ホリプロ

ーーオーディションではどんな課題が出されましたか?

「歌唱と台詞の審査がありました。『デスノート』という夜神月のソロナンバーについては特に韓国版のホン・グァンホさんの歌唱が好きで、韓国語で歌えるほど(笑)聴き込んで研究しましたね。迷いから決意へ、月の内面の変化をイメージして練習しました。

当日は音楽監督の方に『まずは軽く歌ってみようか』と言われて、どこまで軽くていいのかわからず、気がついたら本気で歌っていました(笑)。台詞の審査では『次はこういう風に演じてみて』と指示されても、なかなかうまく変化を見せられなかったのですが、技術的には舞台専門でトレーニングされている方にはかなわなくても、誰よりも将来性があると思っていただけるようにしようと、与えられた10分でできうる限りの事をやったつもりです」

 

ーー10分ぐらいだったのですね。

「実際はもう少しあったそうですが、僕の体感的にはあっという間でした」

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『デスノートTHE MUSICAL』(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 写真提供:ホリプロ

ーーオーディションではあまり気迫を前に出さない方もいらっしゃいますが。

「奥ゆかしいのが日本人の美徳かもしれないけど、僕は目の前の方々には2度と会うことがないかもしれないし、精一杯やらなくちゃと思って気持ちを込めました」

 

ーーそれが伝わったこともあって、見事合格。第一報を聞いた時は?

「その瞬間は実感がなかったけれど、次第に『ちゃんとやらなくちゃ』と責任感が増してきました」

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『デスノートTHE MUSICAL』夜神月(村井良大)(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 写真提供:ホリプロ

ーー既にミュージカルでキャリアを積まれている村井良大さんと、新人の甲斐さんがダブルキャストというのには驚きました。

「身が引き締まります(笑)。この舞台で初めて僕をご覧になる方もいらっしゃると思いますが、『こいつ今までどこに隠れていたんだ』と驚いていただけるよう、今はボーカルレッスンを受けたり、舞台を見たり、今まで生きてきた中で一番というくらい吸収しているところです。村井さんとは年齢も違うので、自然と違う色が生まれてくるとは思いますが、稽古が始まったら村井さんの稽古を拝見させていただき、たくさん学ばせていただきたいです」

 

ーー夜神月という役について、現時点でどう演じたいと思っていますか?

「ごく普通の高校生が運命の渦に巻き込まれていくというのではなく、恵まれた人間が(デスノートを発見したことで)自分でも気づかないうちに人間として堕ちていくのを、観客の皆さんが観ていて感じられるように演じられたら面白いのではないかなと思っています。なんていう舞台を観たんだと衝撃を受けたり、満足感を得ていただけたら嬉しいです」

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『デスノートTHE MUSICAL』夜神月(甲斐翔真)(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 写真提供:ホリプロ

ーー甲斐さんは芸能界に入る前はサッカー少年だったのですよね。

「12年間やっていました。ゴールキーパーです」

 

ーースポーツをやっていたことがこの仕事に生きていると感じたことはありますか?

「あります。サッカーをやっていたときは日々の練習が習慣化していたので、この世界に入ってもこつこつトレーニングを重ねることが苦にならないです。周囲を見ていても、やはりトップにいる先輩方はお客様に見えないところで自分を磨いていらっしゃるし、遊んでばかりの人はそこで止まってしまう。大袈裟に「努力」というのは好きではないけれど、地道に積み重ねていきたいです。

でも技術的な訓練だけではどうしてもわからないことがあって、それが最近、事務所の先輩のソニンさんに講習していただいてわかったんですよ。『どうしたら人の目を引きつけることができるか』、それには一つのメソッドがあると教えていただき、すごく勉強になりました。その答えは公にしたくないです。いつか僕がいい役者と呼ばれるようになったら、後輩に伝えようと思います」

 

ーーどんな表現者を目指していらっしゃいますか?

「何を演じても特定のカラーに染まって見えるというのではなく、役によってガラッと雰囲気も変わり、その役にしか見えないという表現者を目指したいです」

 

ーー演じてみたい作品はありますか?

「いつか演じたい演目が『ジキルとハイド』で、韓国版は特に何度も見ています。チョ・スンウさん、ホン・グァンホさん、そして繊細に役を作り込むパク・ウンテさん・・。それぞれのジキルとハイドを拝見しながら、いつかこの役に到達するには次に何をするべきか、いつも考えています」

 

(取材・文・写真=松島まり乃)

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*公演情報『デスノートTHE MUSICAL』2020年1月20日〜2月9日=東京建物Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場) 他静岡、大阪、福岡でも上演 公式 HP

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