スピーディーな音楽に乗って舞台奥の扉からキャストが登場、数人ずつひとしきり踊ってはバトンタッチ。シャープな振付をそれぞれのニュアンスで滑らかに踊る姿が心憎いオープニングに、北翔海莉さん・沙央くらまさんの大人のムードたっぷりのナンバー“Fever”を経て、玉野和紀さんのユーモア・センスが炸裂する“スケッチ集”がスタートします。
さりげない日常的光景から最近のヒット・ドラマまで、様々なシチュエーションで繰り広げられるドタバタ劇を大真面目に、かつ余裕たっぷりに演じるキャスト。毎回のお約束である無茶ぶりコーナーでは、それぞれの“素”がちらりと覗く瞬間もあり、見逃せません。
“レジェンド・メンバー”(玉野さん・吉野圭吾さん・東山義久さん・西村直人さん)の振り切った演技はもはや“おなじみ”ですが、目を疑うような(!)キャラクターの数々を思い切りよく演じつつ、どこか清々しさの漂う北翔さんが魅力的。
沙央さん、大山真志さんも若手ながら“達者”なパフォーマンスで、レギュラーさながらのはまりっぷりを見せています。
スケッチ集で場内が大いに沸いた後は、全員が白スーツでスタイリッシュに踊り、男性陣の誠実な優しさ溢れるボーカルで1幕終幕。
緩急を心得た巧みな構成は2幕も続き、禁酒法時代のアメリカのとあるバーが舞台のミニ・ミュージカル『F』では、玉野さん、吉野さん、西村さんが大人の男の色気を、大山さんが弟分の初々しさ、沙央さんもパイプ(長煙管)を扱う姿等で当時の“粋”な女性像を体現。
北翔さんは短い時間の中でヒロインの心の揺れ動きを鮮やかに表現し、もう一人の弟分的役柄の東山さんが、本作のタイトル意図が明らかになる最後の台詞を決め、余韻を残します。
続いて玉野さんの呼び込みでTシャツ姿のメンバーが順に登場、お題に沿ったトークで楽しませた後は、お待ちかねの“50音ヒットメドレー”。新旧のポップスからCMソングまで、77曲ものナンバーが数珠つなぎとなり、目まぐるしくシチュエーションを変えながら歌われます。
ネタバレ回避のため具体的には言及できませんが、このネタからあのネタに行く?と意外な展開で楽しませたり、やっぱりこう来ましたか、とニヤリとさせたり。
ちょっとしたダジャレのためのほんの数秒間しか出番のないキャラクターさえ作り込まれた扮装で登場することにも驚きますが、何より早替えにつぐ早替えに違いないこのメドレーを、パワー全開で駆け抜けるキャストに感服。
よくよく見れば終盤、男性陣は皆さん額に汗が光り、消耗度もさぞやと想像されますが、パフォーマンス自体は最後までキレがよく、冒頭と同じシャープな空気感の中で終演と相成ります。
玉野和紀さんの眼鏡にかなった実力の持ち主たちが、一切の出し惜しみをせず、とことん歌い、踊り、演じ切る3時間強。“本物のエンターテイナー魂”に胸熱くなるひとときです。
(取材・文・写真=松島まり乃)
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*公演情報『CLUB SEVEN ZERO Ⅱ』6月15~30日=シアタークリエ、7月3日=日本特殊陶業市民会館ビレッジホール、7月5~7日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 公式HP
*出演・北翔海莉さんの本作に関するインタビューはこちら