Musical Theater Japan

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』観劇レポート:愛おしさに満ちた“ハッピー・ミュージカル”

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

連載開始から70年以上が経った今も、世界中で人気のコミック『ピーナッツ』(原作・チャールズ・M・シュルツ)。その名場面の数々をもとに誕生したミュージカルが、4年の時を経てシアタークリエに帰ってきました。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

心浮き立つようなメロディ(作曲・クラーク・ゲスナー)に乗せ、仲間たちから♪君はいい人~♪と歌われる8歳の少年、チャーリー・ブラウン。野球も凧揚げも不得手で、自己肯定力に欠けているけれど、とっても優しい。そんな彼と仲間たちの日常が、コミックからそのまま切り取られたような、ポップでカラフルなヴィジュアルに包まれ展開します。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

赤毛の女の子の隣でランチをしたいけれど勇気がなく、一人ぼやくチャーリー・ブラウン。ピアノに向かい、「月光」を弾く芸術家肌のシュローダーに「私たち、結婚してみたらどうなの?」と大胆にアプローチするルーシー。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

一方チャーリー・ブラウンの愛犬スヌーピーは、今の暮らしは“悪くない”と思いながらも、ジャングルの獣になった自分を夢想します。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

ルーシーの弟ライナスはお気に入りの毛布が手放せないのを茶化され、一度は毛布無しで生きようとするも断念。チャーリー・ブラウンの妹サリーがスヌーピーと“ウサギ狩り”に出かける一方で、他の仲間たちは「ピーター・ラビット」についての読書感想文に取り組みます。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

スケッチの多くは数分間のエピソードですが、チャーリー・ブラウンの妹サリーが登場してひとこと、縄跳びをしていて虚しくなったと言ったり、ライナスが親指をしゃぶりながら登場してひとこと、味がしなくなったと嘆くといった“一コマ漫画風”のシーンも印象的。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

無邪気で他愛のない“子供の世界”をアトランダムに描きながら、人生に迷える大人たちにさりげなく「ポジティブ思考」の素敵さを伝える舞台…ではありますが、小難しいことを考えずとも、全力で遊び、考え、喋り、彼らなりに“生きるヒント”を見つけてゆくキャラクターたちが何とも魅力的です。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

演じるのは清新にして実力を備えた面々。自分に自信のもてないチャーリー・ブラウンをナチュラルに演じ、ごく自然に言葉が音楽化する歌唱も見事な花村想太さん、ヒロイックな立ち姿・声と“指しゃぶり”から抜け出せないライナス役とのギャップが新鮮な岡宮来夢さん、おませで強靭なメンタルを持つルーシーをきっぱりと演じる宮澤佐江さん、率直な発言が兄チャーリー・ブラウンの心中をかき回すサリーを天真爛漫に演じる林愛夏さん、シュローダーの“アーティストのオーラ”を豊かに醸し出す植原卓也さん…と、カラフルな5人がエネルギッシュに、物語世界を体現しています。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

そして前回から続投の中川晃教さんは、“Snoopy”“Suppertime”等のナンバーでの自由自在のパフォーマンスを通し、“自分らしくあること”を謳歌するスヌーピーの流儀を存分に表現。

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『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』(C)Marino Matsushima

終盤、この6人がパジャマ姿で日常のあちこちにフォーカスしながら、♪幸せは誰にも、どこにもある 君が愛せば♪と歌い上げる“Happiness”は、実にシンプルにして深遠な幸福論。管楽器がアクセントとなったまろやかな生演奏の余韻の中で、観客はポジティブな“気”と愛おしさに包まれつつ、劇場を後にすることが出来るでしょう。

(取材・文・撮影=松島まり乃)
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*公演情報『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』3月30日~4月11日=日比谷シアタークリエ、その後大阪、愛知、長野で上演 公式HP