Musical Theater Japan

ミュージカルとそれに携わる人々の魅力を、丁寧に伝えるウェブマガジン

氷川きよし特別公演「ケイト・シモンの舞踏会」観劇ミニ・レポート:革命前夜のフランスへ、華麗&大らかにタイムワープ

「氷川きよし特別公演 第一部『ケイト・シモンの舞踏会~時間旅行でボンジュール~』」写真提供:明治座

 

歌手を夢見る青年、慧音(けいと)は病床の母を見舞いながらコンビニで働いていたが、ある日、母の容態が急変。悲しみに暮れながら“時を戻せたらどんなにいいか…”と傍らの砂時計をひっくり返すと、にわかに辺りの様子が一変、1788年のパリへとタイムスリップしてしまう。
ブルボン公爵家で使用人たちの教育係をすることになった慧音は、令嬢ショコラにヌガー公爵との縁談が持ち上がっていることを知る。ショコラは家に出入りする音楽家ゴーフルと思い合っており、慧音に彼への手紙を託すが…。

「氷川きよし特別公演 第一部『ケイト・シモンの舞踏会~時間旅行でボンジュール~』」写真提供:明治座

 

2003年以降、座長公演で様々な時代劇を演じてきた氷川きよしさんが、「氷川きよし特別公演」第一部『ケイト・シモンの舞踏会~時間旅行でボンジュール~』にて初の現代劇に挑戦。冒頭で母への思いを情味豊かに見せますが、“現代”にいるのはわずかな時間で、物語の主たる舞台は革命直前のフランスです。

「氷川きよし特別公演 第一部『ケイト・シモンの舞踏会~時間旅行でボンジュール~』」写真提供:明治座

 

宣伝ビジュアルで彼が扮しているのは、エンタメ好きならきっとどこかで見たような(⁈)ブロンドの衛兵ですが、劇中ではそれにとどまらず、ジャンヌ・ダルク風やアルセーヌ・ルパン風のキャラクターに次々変身。装いの美しさで魅せながら、頑迷なタマネギ頭のメイド役では茶目っ気も見せています。マリー・アントワネット風のとびきり豪奢な扮装では氷川さん自身が心から楽しんでいることがうかがえ、それを長年の、親・祖父母世代のファンたちが客席からあたたかく見守るさまも印象的。

「氷川きよし特別公演 第一部『ケイト・シモンの舞踏会~時間旅行でボンジュール~』」写真提供:明治座

 

共演筆頭は彩輝なおさん。少し前に『ピアフ』で演じた妖艶なマレーネ・ディートリッヒ役からがらりと変わり、清純な公爵令嬢として登場しますが、ゴーフルとの恋を成就させるため、とある計画を思いつく…という設定で、颯爽たる〇〇姿に。今回はストレート・プレイとしての作りでしたが、一曲なりともショコラと慧音のデュエットがあれば、さらに楽しめそうです。また、同じく宝塚歌劇団OGの愛原実花さんも、くせの強い役で好演。

物語にはあくどいキャラクターも登場しますが、血なまぐさい展開とはならずおおらかに丸くおさまるのも、“今”の観客のニーズを汲んだものと言えましょう。(作・演出=堤泰之さん。振付はミュージカルでお馴染みの当銀大輔さん)。

(取材・文=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報 氷川きよし特別公演 6月3日~7月4日=明治座、この後大阪、博多、名古屋で上演 公式HP