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配信有『メイジ・ザ・キャッツアイ』観劇レポート:東京を代表する劇場の一つ、明治座の150周年を寿ぐ華麗な舞台

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座

 

東京を代表する劇場の一つ、明治座の創業150周年のファイナルを飾る『メイジ・ザ・キャッツアイ』が、2月から3月にかけて上演。
北条司さんの人気漫画『CAT‘S♥ EYE』の設定を明治時代に移し、怪盗三姉妹の冒険を、歌やダンスを織り交ぜながら描く話題作です。

長谷川初範さんが威勢よく演じる活弁士にいざなわれ、幕が開くと、そこはとあるお屋敷。所有する浮世絵を頂戴しに参るとの犯行予告があり、警官たちが大挙して警戒にあたりますが、彼らの間抜けさに乗じ(?)、怪盗キャッツアイは難なく盗み出してしまいます。

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座


ところ変わって舞台は優美かつ明治レトロ(当時の感覚ではおそらく最先端をゆくモダン)なカフェ(舞台美術=乗峯雅寛さん)。泪、瞳、愛の美しき三姉妹が営むこの「猫目喫茶」には、昨晩怪盗を取り逃した警官たちや車いすの令嬢、その有能すぎる執事らが次々に訪れます。

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座

 

カラフルなキャラクターたちが一通り紹介されると、キャッツアイとネズミ小僧三世の泥棒対決、次女・瞳の恋、謎の怪盗ホークスクロウの活躍等のエピソードが次々登場。観客がおおらか、かつ賑々しい舞台に慣れるうち、思いも寄らない展開が! 終盤まで意外性に富んだストーリーとなっています。(脚本=岩崎う大さん)

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座


共同脚本と演出は、『ロッキー・ホラー・ショー』等の演出で知られる河原雅彦さん。花道はもちろんのこと、すっぽんからの登場や本舞台でのセリの活用、フライングなど、明治座の舞台機構を存分に活用し、さらにはサーカスの花形演目であるエアリアル・コントーションも採用。生の舞台ならではの贅を尽くした演出ですが、ところどころに明治座では珍しい?シュールな笑いもまぶされ、河原さんの個性もしっかり反映されているようです。

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座


主人公の三姉妹を演じるのは、藤原紀香さん、高島礼子さん、剛力彩芽さん。長女・泪役を艶やかに、大人の色気たっぷりに演じる高島さん、華やかなオーラを漂わせ、クライマックスでは凛とした歌声も披露する次女・瞳役の藤原さん、末っ子ならではの“愛され”感をキュートに醸し出す愛役・剛力さん、とそれぞれに期待に違わぬ存在感で、舞台を牽引しています。

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座


一方で、ミュージカル・ファンにとっては宝塚出身の美弥るりかさんが、謎の“デキる執事”藤堂薫として、歌に身のこなしに、台詞回しにと“昔とった杵柄”を余裕でパロディ化しているのが、大きな魅力でしょう。ドラマティックな展開を見せる後半には、大きく包み込むような情味の滲む演技を見せ、ご自身にとっても新境地と言えるかもしれません。

『メイジ・ザ・キャッツアイ』写真提供:明治座


終盤の立ち回りで魅せる瞳の恋人・俊夫役の染谷俊之さん、ハイテンションな芝居で場に躍動感をもたらす警官・平野役の上山竜治さん、朗らかな持ち味が得難い記者・神谷役の川久保拓司さん、そして本役のミケール・ハインツのみならず、活弁士(ストーリーテラー)を兼ね、味わい深い歌声も聴かせるなど大活躍の長谷川初範さんら、共演陣もそれぞれに個性を発揮。終盤に突然存在感を放つ“執事の執事”鮎川役、松之木天辺さんの不思議な味わいも、最後まで油断のならない舞台に貢献しています。

明治6年に「喜昇座」として開場し、明治26年に現在の名称となった明治座。その150周年記念公演シリーズの最後を飾った舞台は、3月8日までアーカイブ配信中です。

 

(取材・文=松島まり乃)

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*公演情報 舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』2月6日~3月3日=明治座 3月2日公演を3月8日までアーカイブ配信。 公式HP