国際的なコラボレーションというと、日本から海外の作家に委嘱して…という流れが想起されますが、本作は既に存在する楽曲を骨格として、新たに板垣恭一さんが脚本を書き下ろし、9曲もの新曲を作詞・作曲家たちに発注するというイレギュラーなスタイル。その結果、クレイトン・アイロンズとショーン・マホニー、二人のクリエイターたちにとっては非常に新鮮な舞台に仕上がったようです。今回のキャストについての感想から、コラボに至るまでの経緯、ミュージカル修業の日々、そしてミュージカル創作に興味のある日本の若い方々へのアドバイスまで、興味深いお話をたっぷりとうかがいました。
“アメリカ的”な物語に普遍性を与えた、フレッシュな舞台
――初日の舞台、いかがでしたか?
クレイトン・アイロンズ「とても気に入りました。巧みに演出されているし、生き生きした舞台で、新鮮に感じられます。キャスト、舞台美術、照明、音響、演奏、振付…。全般的によかったです」
ショーン・マホニー「本作はとてもアメリカ的な物語なので、はじめは日本で上演することに自信が持てなかったのですが、(日本版脚本・演出の)板垣(恭一)さんとコラボをすることで、実は普遍的な物語なのだと気付くことができました。“歴史”を描きながらもフレッシュに感じられる作品だと思います」
クレイトン・アイロンズ「とても気に入りました。巧みに演出されているし、生き生きした舞台で、新鮮に感じられます。キャスト、舞台美術、照明、音響、演奏、振付…。全般的によかったです」
ショーン・マホニー「本作はとてもアメリカ的な物語なので、はじめは日本で上演することに自信が持てなかったのですが、(日本版脚本・演出の)板垣(恭一)さんとコラボをすることで、実は普遍的な物語なのだと気付くことができました。“歴史”を描きながらもフレッシュに感じられる作品だと思います」
――キャストはいかがでしたか?
クレイトン「素晴らしかったです。特にReon(柚希礼音さん)とSonim(ソニンさん)。陰と陽といった感じで、パワフルなReonに対して、柔らかいが芯の通ったSonimが、理想的なコントラストをなしています。他にも、例えばアビゲイル役(実咲凜音さん)はもともとはおおらかであたたかなキャラクターとして作っていましたが、日本版ではより落ち着いて力強く、クリアな印象。でも本質的な部分は変わらず、興味深かったです」
クレイトン「特にアボット(原田優一さん)がいいですね。(観るまで)予期していませんでしたが、リングマスターのようなコミックリリーフとして物語を牽引しているのがいいなと思いました」
『FACTORY GIRLS』誕生までの12年間
――今回、どういった経緯で日本の演劇界とのかかわりが生まれたのですか?
ショーン「発見されたんです(笑)。本作はもともと12年前、2007年に僕らが大学院の卒業制作として作った作品でした。女性演出家と組んでワークショップ形式で上演したこともあり、その後、楽譜と台本をケン・ダベンポートという、若手の発掘に熱心なブロードウェイのプロデューサーに送ったところ、彼が作っている“ニューヨークで上演されたことのない優秀作品”というリストの2016年版の1位に選んで、ネット上で発表してくれたんです。
クレイトン「物語の舞台である1840年代のアメリカではいろいろなことが起こっていたこともあり、本作には非常に要素が多いんです。アメリカではじめて女性たちが経済的自立を得たこと。“Lowell Offering”という、女性工員たちの寄稿集。労働運動。友情物語。そんな中で、板垣さんは日本のお客さんのための構想を最初から明確に持っていて、なるほどと納得できました。彼の意図を汲んで作っていけば間違いない、と思えたし、結果的にうまくまとまったと思います」
――板垣さんとはどのように作業を進めていったのですか?
ショーン「はじめにスカイプで話して、あとはメールでのやりとりでした。こういう瞬間のためのこんなナンバーが欲しい、ロックというより少しソフトなものがいい、と具体的にリクエストをいただいたので、作業はとてもやりやすかったです」
クレイトン「最初にスカイプしたとき、板垣さんが作品の核の部分を僕らと同じように理解されているとわかったので、リクエストがあった時も、僕らのバージョンとはこういうふうに違うものが求められてるんだな、とすぐにイメージできました。作業過程にはとても満足しています。
日本ならではの描写
――一つ興味深かったのが、Lowell Offeringを編集するハリエットが、誌面を通して応援してくれないと知った時の、サラのリアクションです。板垣さんの台本では、彼女は“ハリエットは忙しいんだわ”と自分に言い聞かせますが、アメリカ人の作家だったら、そこで二人を衝突させるのではないかな、と感じました。
クレイトン「実際、アメリカ版だとそこで二人は衝突しますね。サラが“わたし、ちょっと混乱してるんだけど…”と歌い始めて。僕らもその描写は日本的かもしれないと感じましたが、それと同時に、1843年だったらありうるかもしれない、と思いました。当時の空気感が実際どういうものだったか、誰にもわからないですからね」
――日本の観客に本作をどう楽しんでいただきたいですか?
ショーン「音楽に身を委ねてみてほしいです。コメディではないけれど、笑いもあるし、力強い物語だと思います」
“ミュージカル作り”を学んだ日々
――プロフィールについても少しうかがわせてください。お二人はニューヨーク大学の大学院ティッシュ・スクール・オブ・アートでミュージカルを専攻されたそうですが、授業はいかがでしたか?
クレイトン「素晴らしい体験でした。2年コースで、最初の1年は歌詞も脚本も書いたし、いろんな学生と組んで曲を作りました」
ショーン「僕らもよく知るブロードウェイ・ミュージカルの作者たちが、“次はこういうシチュエーションで”と課題を出し、コメントをしてくれるんです。生徒のバックグランドはいろいろで、僕はボストン出身のギタリストで、クレイトンは南部出身のピアニスト。他に韓国やオーストラリアなど、各国から集まってきていて、お互いいろいろなスタイルを知ることができましたね」
クレイトン「そして2年目は卒業制作で、2人組で90分の作品を作るんです。まずは組みたい人の名前をリストアップして、その結果で相手が決まる。クラスには作曲家志望ばかりだったけれど、ショーンと僕は二人とも作詞作曲両方をやるので、うまくやっていけるんじゃないかということでコンビを組みました」
ショーン「パブリック・ドメインかオリジナル・ストーリーで作るという決まりで、僕らは1840年代の女性たちの寄稿集に行き当たり、これを出発点とすることにしました。それが今回の『FACTORY GIRLS』というわけです」
“ミュージカル作家”になるために、必要なこと
――当時、ミュージカルの環境をどうとらえていましたか?
クレイトン「僕らが出会った当時はある種、ミュージカルのルネッサンス期で、『春の目覚め』のような(勢いのある)作品が生まれていました。映画やテレビでもミュージカルがよく取り上げられるようになっていましたね」
――ミュージカルを作ってみたい日本の若者たちに、何かアドバイスをいただけますか?
ショーン「愛と情熱をもって取り組むことですね。僕はいろいろな規模のショーで試行錯誤をしてきました。曲だけを書くことも歌詞も書くこともありましたが、一つ一つ、どの現場でも学びやときめきがありました。また、新作を書くと、まず自宅のテーブルに友人を6人くらい招いて、ワイン片手に聴いてもらうんです。すると彼らは“この曲はいい”“効果的じゃない”と、的確な意見を言ってくれる。信頼できる友人がいることも、僕にとっては大きいです」
(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
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*公演情報『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』9月25日~10月9日=赤坂ACTシアター、10月25~27日=梅田芸術劇場メインホール 公式HP