Musical Theater Japan

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『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』山崎大輝インタビュー:“二人芝居”だからこそ出来ること

山崎大輝 95年静岡県出身。ジュノン・スーパーボーイコンテストで審査員特別賞を受賞し芸能界デビュー。近年の舞台出演作に『ピアフ』『ザ・ミュージック・マン』『スリル・ミー』「TOHO MUSICAL LAB.『DESK』」『スウィーニー・トッド』等がある。ヘアメイク  北 一騎 /スタイリスト 内田考昭 (A-T) ジャケット、パンツともにCULLNI(クルニ) (C) Marino Matsushima 禁無断転載


“僕はアルヴィンの人生に、どう関わればよかったんだろう…”
幼馴染の弔辞を読むために故郷に帰ってきた人気作家が、彼と過ごした日々を紐解き、埋もれた記憶を呼び覚ましてゆく…。

ニール・バートラムの作詞・作曲、ブライアン・ヒルの脚本で2009年にブロードウェイ初演、ドラマ・デスク・アワードのミュージカル部門作品賞など4つの賞にノミネートされた二人ミュージカルが、2019年、2021年に続いて日本で上演されます。

今回、新たなペアとしてアルヴィンとトーマスを演じるのが、山崎大輝さんと小野塚勇人さん。話題作、大作ミュージカルで着実にキャリアを重ね、今最も注目されるホープのお二人です。

本稿では、友人に手向ける言葉が見つからないトーマスの前に現れ、二人の人生が記された本棚へといざなうアルヴィン役、山崎大輝さんにインタビュー。文学的な奥行きを持つ作品に取り組む心境を語っていただきました。

 

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』


“ブレない”勇人トーマスに頼らせていただいて、僕は好きに演じていけたら(笑)


――山崎さんは本作とはどのように出会われたのですか?

「出演が決まってから、過去の公演の資料映像と台本をいただきました。まずは台本を読み解いた上で映像を拝見しようと思ったのですが、読み始めると、子供の頃の回想に切り替わったり“今”に戻ったりするので、自分の中で混乱してしまって(笑)。

(時系列的に)今、何がどうなっているんだろう⁈とうまく想像できなくて、これをいったいどうやって演じるのだろう…と思いました。

ですが、映像を観てみると、(演出の効果によって)時系列はスムーズに移行していました。お芝居のスピード感もありましたし、楽曲の力で言葉以上に伝わってくるものもたくさんあって、台本を見た時よりもはるかにわかりやすさがありました」

 

――本作のどんな部分に、一番魅力を感じましたか?

「この作品は、上演時間は110分なのですが、その110分の中でアルヴィンとトーマスの人生の中で生まれた絆や感情、しかもいろいろな年代のエピソードが出てきて、とても濃い時間を味わせてくれます。

そして登場する一つ一つのエピソードが、二人の人生の本当に大切な時間を描いている…というのが、すごく魅力的だと思います。まるで彼らの人生を追体験しているというか、覗かせてもらっているような気持にさせてくれる作品だな、と感じています」

 

――今回、山崎さんは登場する二人のうち、繊細な一面を持つアルヴィンを演じます。(取材時は)本稽古開始直前とのことで、掘り下げてゆくのはこれからかと思いますが、現時点で、彼の独特の感性は生まれ持ったものだと想像されていますか?それとも幼児期のつらい体験に根差したものでしょうか?

「人物像を読み取っていく上では、いろいろな要素がヒントになっていきますが、その中でも“親”の存在というのはとても大きいのではないかと感じています。

本作の歌詞の中でも、“子供には親が全世界”というようなことを歌っている箇所があります。アルヴィンが6歳でお母さんを亡くしたことは、彼の人格形成に大きな影響をもたらしたのではないかなと思っています」

 

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』アルヴィン(山崎大輝)


――彼には、書店の主であるお父さん譲りなのか、“その人にピッタリの本を見つける”という素敵な才能がありますね。親友のトーマスにもある本をプレゼントし、この一冊は後々、トーマスの人生にある“きっかけ”を与えることになっていきます。

「普通なら“偶然”でしかないように見えると思いますが、アルヴィンはひょっとしたら、トーマスの眠っている才能に気づいていてその本を選んだ…という見方もアリかもしれません。そういう第六感を持っている、ということはありえると思います」

 

――いろいろな要素をヒントに想像を膨らませたものが、稽古を経てどう深まったり、変化してゆくかも楽しみですね。

「そうですね。人物像のことに限らず、俳優として、いつも柔軟な自分でありたいと思っています。もともと自分自身が信じるものに対してはぶれることはないのですが、“頑固”になってしまうのは違うなと思うんです。いただいたアドバイス、何気ない一言をキャッチして、柔軟に取り入れていくよう、意識しています」

 

――山崎さんの代表作『スリル・ミー』と同じく、本作は二人芝居。二人でのお芝居はとりわけキャッチボールが大事と言われますが、本作のアルヴィンは『スリル・ミー』で演じた“彼”と感覚的には同じポジションでしょうか?

「『スリル・ミー』で僕が演じた“彼”は、“私”がいろいろ投げてきた球をキャッチしては別のところに投げて行く…というイメージでした。

今回演じるアルヴィンは、トーマスに向かって投げてはいろいろと場をかきまぜていくポジションかな、と感じています。あと、アルヴィンは体を使える役だなと思っていて、けっこう動きます!」

 

――二人芝居の醍醐味はどんなところにありますか?

「二人だからこそ、作品の“色”をより決めやすい気がします。大人数でやると、例えば“1”に向かってみんなで芝居をしていても、“1.05”とか“0.95”にずれてしまう…ということも生じますが、二人だとぴったり“1”に合わせられるという自信があります。

テンポ感だったり、作品の後味も、二人芝居のほうが操りやすいような気がします。メインのお話があって、その中で作品のテーマや伝えたいことがあるとして、サブの感情もクリアに伝えることが出来るように感じます」

 

――今回はどんなコンビになるといいなと思われますか?

「月並みではありますが、これまでの2ペアとは違うものにしたいなと思います。(小野塚)勇人君には、どしっと構えたようなというか、押してもブレないような印象を受けたので、そこに頼らせていただいて、僕は好きにさせてもらおうかなと思っています(笑)。うまく二人のバランスがとれたらいいですね」

 

山崎大輝さん。(C) Marino Matsushima 禁無断転載


――絶賛歌稽古中とのことですが、本作の楽曲はいかがですか?

「頭がパンクしそうです(笑)。数も多いですし、日本語に落とし込むという作業もありますし、そこにアルヴィンという人物を入れての歌唱ということもありますし、やらなくてはいけないことがどどっと山積みで(笑)。

楽曲の印象ということで言えば、素敵な楽曲が多いです。歌うのは一筋縄ではいかないけれど、いろんなところにギミックというか仕掛けがあって、それを行うことでこういう伝わり方になるんだなというロジカルな部分が面白い楽曲ばかりです。でもまだ、もがき苦しんでいます(笑)」

 

――どんな舞台になるといいなと思われますか?

「二人の友情の物語で、作品自体もハートフルですので、お客様には温かい気持ちになっていただきたいです。

僕ら自身としては、稽古の過程で自分たちのテーマが見えてくると思いますので、ペアの勇人君やスタッフの皆さんと話し合って、どういうものを伝えに行くか、意識を整理して、みんなで気持ちを一つにやっていきたいです」

経験を重ねる中で感じる“演じることの醍醐味”

 

――最近のご活躍についてもうかがわせてください。市村正親さん、大竹しのぶさんと共演された『スウィーニー・トッド』では、ダークな作品世界の中で、山崎さん演じる明るく大らかな水夫アンソニーが救いとなっていました。手ごたえはいかがでしたか?

「いろんな体験をさせていただいた作品です。アンソニーはあの作品の中で“希望の光”的な存在で、楽曲にも希望が見えるようなものが多かったのですが、いっぽうで僕は最初に映画で観たとき、アンソニーについて“病的だな”という印象を持ちました。

この作品に出てくる人たちは強烈な思いを持っていて、アンソニーがジョアンナに対する気持ちも現代の恋心とはちょっと違う。きれいでもあり怖くもある、その塩梅をうまく表現できたらなと思いながら演じました。希望の光というだけでは終わらず、作品本来のダーティーな雰囲気も纏いたいなと思いながらやったつもりです」

 

――8月の劇団『ドラマティカ』ACT4/魔女とお菓子の家』では、魔女のディシー役で登場するなり場の空気を変えていらっしゃいましたが、『あんさんぶるスターズ!!』の登場人物たちが演劇サークルで演じている設定だとわかってはいても、カーテンコールで「斎宮宗です」と挨拶され、“二重の演技”をされていることに改めて驚かされました。

「(山崎さんが斎宮宗を演じ、その斎宮がディシーを演じているという)二重の演技は楽しいです。が、カーテンコールでも自分自身に帰るわけではないので、気が抜けません(笑)。緊張の糸がほどける時間が、一瞬もないという不思議な感覚がありました」

 

――以前のインタビューで“常に物語の中心にいたいとは思わない”とおっしゃっていて、すべての役に魅力を感じていらっしゃることに、読者から“(山崎さんの考え方に触れて)演劇の観方が広がった”等の反響がありました。

「主人公を演じる時は、その物語を引っ張って行くことを意識しながら、どう生きるのかを考えます。いっぽうで、主人公以外の時は自分に任されることが増えますし、やれることが多くて、自由だなと感じます。どちらの立場もやりがいがあって、今はどんなに大変でも、お芝居が楽しくて仕方がないです」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報 ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』11月5~15日=よみうり大手町ホール、11月22~23日=サンケイホールブリーゼ (太田基裕さん×牧島輝さんペア、山崎大輝さん×小野塚勇人さんペアの交互上演となります。スケジュールは公式HPでご確認下さい)公式HP

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