Musical Theater Japan

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『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』小野塚勇人インタビュー:“小さな羽ばたき”が人生を変える

小野塚勇人 千葉県出身。第三回劇団EXILEオーディションでファイナリストとなり、舞台『ろくでなしBLUES』でデビュー。2012年に劇団EXILEに加入し、劇団の舞台を中心に、『MEAN GIRLS』音楽劇『精霊の守り人』『ルームメイトと謎解きを』『この世界の片隅に』等に出演。TVドラマや映画でも活躍し、『仮面ライダーエグゼイド』では九条貴利矢 / 仮面ライダーレーザー/ 仮面ライダーレーザーターボ役を演じ、人気を博した。
ヘアメイク 北 一騎 /スタイリスト 大川好一 
(C) Marino Matsushima 禁無断転載


出会いは小学一年生の時。ハロウィンでトーマスが誰の扮装をしているのか、アルヴィンだけが言い当てた。
「映画『素晴らしき哉、人生』に出てくる、おじいちゃん天使!」
その天使は、アルヴィンが6歳の時に亡くしたママのお気に入りだった。

二人は無二の親友となったが、進学のためトーマスは他の町へ。
時は過ぎ、トーマスは作家として成功するが、ある日アルヴィンの訃報を耳にする。
弔辞を読むために帰郷した彼を待っていたのは、アルヴィンとのかけがえのない日々の記憶だった…。

 

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』


ニール・バートラムの作詞・作曲、ブライアン・ヒルの脚本で2009年にブロードウェイ初演、ドラマ・デスク・アワードのミュージカル部門作品賞など4つの賞にノミネートされた二人ミュージカルが、2019年、2021年に続いて日本で上演されます。

今回、新たなペアとしてアルヴィンとトーマスを演じる山崎大輝さん、小野塚勇人さんのうち、本稿では、友人に手向ける言葉が見つからない作家トーマス役の小野塚勇人さんにインタビュー。友人の何気ない言動で人生が変わった経験など、本作に因んだエピソードも含めてお話いただきました。

 

僕と大輝君にしか出来ない『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』に

 

――まずは、本作の第一印象をうかがえますか?

「展開が早くて見やすかったです。楽曲も多いし、会話から自然に歌に入っていくし、現代と過去のスイッチングもスムーズで。“もう終わるんだ”というくらい、観ていてあっという間でした。

内容的には、トーマスとアルヴィンの対比が気持ちいいくらい真逆な人間ドラマですよね。まるで磁石のように、遠くにいても近くにいても、距離に関わらず互いを引き寄せ合っているという感じがして。依存しあっているところもあって、これは友情なのか愛なのかとも考えましたし、そういうところが面白いなと感じました」

 

――現時点で、トーマスについてどんなイメージを持たれていますか?

「はじめはすごくスマートで、才能のあるベストセラー作家に見えるけれど、話が進むにつれ、“天才に憧れた凡人”というか、努力でその地位を勝ち取った人だというのが見えてきます。自分の経験からしか物語を書けないので、アルヴィンという人物がいたからこそ今があるし、書けないことへの悩みや彼への嫉妬も持っている。そういうところも含めて、人間らしい人物だなと感じています」

 

――アルヴィンと仲が良くなったきっかけは、トーマスが名作映画に出てくるおじいちゃん天使の扮装をしたこと。ハロウィンというハレの場で、敢えてマニアックなキャラクターを選んだのは、なぜだったと思われますか?

「子供なりに、作品の世界観が相当好きだったのかもしれないですね。ツキに見放された主人公が出会う天使なので、自分もそういう、人の人生を変えられるような存在になりたいと思ったのかもしれません。

もしくは、ただ“目立ちたい”ということだったのかもしれないですね(笑)。人と違う格好をしたくて、その時、例えばスパイダーマンみたいなキャラクターが流行っていたから、あえて“そっち⁈”と思われるような扮装をしたかったのかも。

だって、彼は後々、自分が書いたもので人の人生を変えるほどの影響力を持つ、“小説家”という仕事を選んでいます。“賞賛は誰にも渡さないぞ”という台詞もあるほどなので、子供の頃から相当、人と違うことに興味があったんじゃないかと思います」

 

――そんなトーマスは、アルヴィンから「トム・ソーヤ―」の本をプレゼントされたことがきっかけで人生が大きく変わりますが、友達の何気ない言動によって人生が変わる、そんな経験を小野塚さんはされたことがありますか?

「ありますね。一つは、小3の時。引っ越ししたてで、まだ習い事もしていなかった時、家の目の前にあった公園で子供たちがサッカーをしていたんです。そこにまぜてもらったら、2つくらい年上の先輩がすごく優しくて“上手だね、絶対サッカーやったほうがいいよ”と褒めてくれて。それまで特に人から褒められることがなかったので印象に残って、サッカーを始めました。まあまあ強豪のところまでいけたし、本気でサッカー選手を目指したのも、あの時の何気ない先輩の一言があったからだと思います。

あと、今の事務所に入ったきっかけも、地元の友達の一言です。芸能界に興味があると話したら“やめたほうがいいよ、はやらないよ”と言われて、逆に“じゃあやってやるよ!”と燃えました(笑)」

 

『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』トーマス(小野塚勇人)


――本作には「バタフライ・エフェクト」(ほんの小さなことが、大きな結果に繋がって行くことの比喩)という言葉が出てきますが、大いにありうることだと信じられますね。

「僕の場合、目指すか目指さないか、というところでまず一歩を踏み出せたのが大きくて、そこから“やめるか、続けるか”という二択が続いた結果が今だと思います。それをバタフライ・エフェクトと呼べるならそういうことなのでしょうね。プロとして12年間食べてこれているのも、あの時やめていたらなかったことです。最初の羽ばたきをして飛ばなければ、風も起きないじゃないですか。飛べるかどうかわからないけれど飛ぼうとすることを選んだ、それが一番大事だなと思います。

時々、人から“これをやってみたいんだけどどう思いますか”と相談されることもあるけど、そこで迷う感覚、僕にはよくわからなくて。“俺がやめたらって言ったらやめるの? それくらいだったらやらなきゃいいじゃん”と答えてしまいます。やってみて違うかなとなったらやめればいいし、好きで続けていれば類は友を呼ぶで人の輪も広がっていくと思うし。そういうことはすごく感じます」

 

――本作には謎めいた要素もありますが、トーマスとアルヴィンの絆に比べたら、そこは問題ではない…というようにフォーカスが絞られて行きます。とはいえ、トーマスとしてはその点について、納得されているのでしょうか?

「正直、小野塚勇人としてはモヤモヤはあるので(笑)、演出の高橋(正徳)さんと、どういう解釈でやっていくのか、しっかり話そうと思っています。そこを敢えて幻想的に、グレーにしている美学がある筈だし、何でも白黒つけるのが作品にとっていいとは限らないとも思います。まだ自分自身、この作品の深層までは行けていないので、1か月後くらいをめざして、“だからこうなのか”となっていくよう、深めていきたいです」

 

小野塚勇人さん。🄫Marino Matsushima 禁無断転載


――本作は二人芝居ですが、これまでにも二人芝居はなさっていますか?

「3人ミュージカルを2回やったことがあるので、出ずっぱりの経験はあります。集中力が続いている限りは大丈夫だけど、一瞬途切れると危なかったりしますね(笑)。

今回だとアルヴィンが長いパートをやっている時に、こちらの集中が切れやすいと思うので、いい意味でペース配分は大事かなと。以前やった3人ミュージカルの時は、多重人格でころころ変わっていく役で、ペース配分を考えるどころではなかったのですが、今回は一つの役を一貫してやれるので、チャレンジしたいです。

(山崎)大輝君とは、スムーズにやっていける気がします。“こう思うよね”という時にどちらかが“僕は違う感覚です”となるとすり合わせるのが大変だけど、彼とは感覚的な部分が似ているというか、一緒に足並み揃えてやれそうです。とはいえ、本作はアルヴィンがかき乱していって、そんな彼の生き方を見てトーマスが何を思うかという作品なので、大輝君のほうが大変なんじゃないかな(笑)。

トーマスとしては、すっとした感じにはしたくないです。やろうと思えば二枚目をぽくもできると思うけれど、彼はどちらかというと人間くさくて愛嬌のあるタイプだと思っています。そんな彼とアルヴィンがかみ合えばいいかなと思うので、稽古の中でバランスをとっていきたいです。アルヴィンがトーマスに、トーマスがアルヴィンに惹かれる理由もあると思うので、そういうところも二人で話しあっていきたいですね」

 

――音楽はいかがですか?

「素敵なのは素敵だけど、今はまだ体に入れ込む段階なので、難しさが先に来ます。海外の作品を日本語で歌って行くので、“ここで伸ばすんだな”“ここで切るのか”と思いながら歌ったり、“本当にこのリズムか?”と思ったり。海外作品のあるあるですが、そこは早く入れ込んで、体になじませるしかないなと思っています」

 

――どんな舞台になればいいなと思われますか?

「今回が3回目の上演ということなので、これまでの流れを崩さず、それでいて新しい、僕と大輝君にしかできない『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』に出来ればと思っています。過去にご覧になった方もいらっしゃると思うので、これまでのペアと見比べて楽しんでいただけたらと思います」

 

足をとめることなく、着実に歩んで行きたい

 

――最近のご活躍についてもお聞かせ下さい。今年出演された『この世界の片隅に』では、主人公すずの幼馴染の水兵、哲役。第二次大戦下に生きたキャラクターを演じるということで、これまでの作品にはない感覚もあったのではないでしょうか。

「まず原作の漫画があって、その世界観をアンジェラ・アキさんがミュージカルという形に落とし込み、素敵な作品にして下さったと思っています。

戦時中のキャラクターではあったけれど、だからといって直接反戦のメッセージを送るのではなく、いろいろな人たちの愛情が詰まった作品だということを意識していました。戦時中も、みんな誰かを思って生きてきたということを表現できたらいいな、と思っていましたね。

哲にはソロナンバーが無かったけれど、もし再演されることがあって出演できたら、ぜひソロを歌いたいなと思っていて、アンジェラさんもそんなことをおっしゃっていました」

 

――歌ではありませんが、結婚したすずの家で語らうシーンでの台詞「ぬくいのう、やわいのう」に哲の思いがこめられ、非常に印象的でした。

「そこは歌にしようかという話もあって、何回かメロディを作ってもらったのですが、最終的に全部台詞のほうがいいということになったんです」

 

――『この世界の片隅に』、情報量の多いミステリー劇を主人公として牽引した『ルームメイトと謎解きを』、そして本作と、このところ非常に充実したキャリアを築いていらっしゃいます。ご本人の手応えはいかがですか?

「こうしていろいろなところから呼んでいただけるのが嬉しいです。3,4年前に“ミュージカルをやろう”と思ってから、着実にステップアップできているような気がします。このまま足をとめることなく、そしてミュージカルにとどまらず、(表現者として)着実に歩んでいきたいと思っています」

 

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報 ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』11月5~15日=よみうり大手町ホール、11月22~23日=サンケイホールブリーゼ (太田基裕さん×牧島輝さんペア、山崎大輝さん×小野塚勇人さんペアの交互上演となります。スケジュールは公式HPでご確認下さい)公式HP

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