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『Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-』観劇レポート:2024年の幕開けを華やかに彩る“スペシャル”な舞台

『Yuichiro & Friends  -Singing! Talking! Not Dancing!-』写真提供:東宝演劇部


山口祐一郎さんと日替わりの出演者たちによるトーク&コンサート『Yuichiro & Friends -Singing! Talking! Not Dancing!-』が、6日に開幕。
山口さんが連日、きら星のようなミュージカル・スターたち(石川禅さん、浦井健治さん、大塚千弘さん、今拓哉さん、涼風真世さん、中川晃教さん、平方元基さん、平野綾さん、保坂知寿さん、吉野圭吾さん(50音順)が回替わりで出演)とともに、山田和也さん(『ダンス オブ ヴァンパイア』『レベッカ』)の演出で贈る新春舞台をレポートします!

 

 

明るくジャジーな演奏に続き、快活な英語のアナウンス(ご本人!)。
舞台中央ステップの向こうから颯爽と登場した山口祐一郎さんが、にこやかに歌い始めたのはお馴染みのミュージカルナンバー…ではない模様です。注意して歌詞に耳を傾ければ、続くのは意外なフレーズ。結びの固有名詞で、ご自身の少年時代に関連する歌であることが判明します。

ご挨拶に続いて、この日の“フレンズ”たちがシックな装いで現れ、一曲ずつ披露。大塚千弘さんはディズニーミュージカルの名曲を生き生きと、石川禅さんはJ-POP女性アーティストのナンバーを力強く、保坂知寿さんは近年演じた役柄のナンバーを華やかに、そして中川晃教さんは名作ミュージカルのナンバーをお洒落なアレンジで歌いあげます。

『Yuichiro & Friends  -Singing! Talking! Not Dancing!-』写真提供:東宝演劇部

 

歌声の余韻に場内が満たされたところで、トークタイム。山口さんを囲む形で皆さん革張りのソファに着席し、先程歌ったナンバーの選曲ポイントを語り始めますが、しばしば山口さんの自由な発言(?)により、話はあらぬ方向へ。劇団時代にともに看板俳優的存在であった保坂知寿さんはじめ、山口さんとは長きにわたり共演歴のある方ばかりとあって、リラックスしたトークが展開します。全員が語り終えるころ、山口さんの代表作の一つ『レベッカ』の音楽が時間を知らせ、次の歌唱パートへ。

かくしてステージは歌~トーク(この日はお正月ネタ、健康ネタ、“今だから話せる話”等々)~歌…という流れで進行。山口さんが、中学時代からある場所で慣れ親しんでいたらしい(⁈)英語のスタンダード・ナンバーをニュアンスたっぷりに歌えば、中川さん、大塚さんは某作品のデュエットで“懐かしのカップル”を再現。石川さんは当たり役の決意の大曲をドラマティックに聴かせ、保坂さんは劇団時代に吹き替えを担当した映画のナンバーを“平穏な世の中に…”と祈りを込めながら披露するなど、多彩な選曲で観客の耳を楽しませます。

『Yuichiro & Friends  -Singing! Talking! Not Dancing!-』写真提供:東宝演劇部

 

そんな中でもひときわ強い印象を残すのが、一幕ラスト。山口さんが代表作の一つである某作品のナンバーを歌い出すなり、場内はたちまち幽玄の世界に染め上げられ、“人ならざるもの”の存在を信じさせるに足る最後のロングトーンも圧倒的です。この一曲、この数分間で前回公演の記憶が鮮やかに蘇ってくる方も、多々いらっしゃるのではないでしょうか。

そうかと思えば、アンコールで彼が披露したのは、冒頭とはまた異なる方向性で意表をつく、とあるアニメの主題歌。甘酸っぱい歌詞を優しく、茶目っ気たっぷりに歌う山口さんの姿に、どなたもきっとほっこりとした気分で帰途につくことが出来るでしょう。

なお、“フレンズ”は4名ずつ回替わりで出演し、その組み合わせによってセットリストも変わってゆくそう。トークも含め、公演の一回一回が初春に相応しい、“スペシャルな舞台”となりそうです。

(取材・文=松島まり乃)
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*公演情報『Yuichiro & Friends  -Singing! Talking! Not Dancing!-』1月6~26日=シアタークリエ、2月3~4日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 公式HP