Musical Theater Japan

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『アニー』財木琢磨インタビュー:“絶妙なバランス”の悪党めざして

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財木琢磨 福岡県久留米市出身。ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでフォトジェニック賞、紅茶花伝賞を受賞し、芸能界デビュー。ミュージカル『テニスの王子様』、『里見八犬伝』、『魔界転生』等の舞台、TVドラマ、映画等多彩に活躍している。©Marino Matsushima 禁無断転載

 

アメリカの新聞漫画を1976年に舞台化以来、世界中で愛され続けるミュージカル『アニー』。日本でも1986年から上演され、既に183万人を動員している人気作が、昨年に続き、今年もスペシャル・バージョンにて上演されます。

オーディションで選ばれた子どもたちに加え、個性豊かな大人キャストも例年、注目の的ですが、今年ルースター役で初出演を果たしているのが、ミュージカル『テニスの王子様』等で知られる財木琢磨さん。2.5次元ミュージカルには多数出演されていますが、ブロードウェイ・ミュージカルは初とあって普段とは異なる緊張感もある模様です。主人公アニーの運命に大きく関わるルースター役をどう捉えているか、今後の抱負なども含めお話いただきました。

【あらすじ】1933年、世界大恐慌直後のNY。11歳のアニーは「いつか両親が迎えに来てくれる」と信じて孤児院で暮らしていましたが、ある日大富豪ウォーバックスの秘書グレースに気に入られ、クリスマス休暇をウォーバックス邸で過ごすことに。ウォーバックスも明るく機知にとんだアニーに魅了され、懸賞金をかけて彼女の両親探しにとりかかります。それを知った孤児院の院長ハニガンと弟のルースター、彼の恋人リリーは悪だくみを始めますが…。

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『アニー』

怖いけれどかっこいい、
そして“お茶目”な悪役に

 ――財木さんは今回、『アニー』でブロードウェイ・ミュージカル初挑戦なのですね。

「以前から2.5次元以外のミュージカルにも挑戦したい気持ちがあったので、夢が一つ叶った思いです。『アニー』は“知らない人がいない”というほどの名作で、出演が発表されたとき、デビュー前の職場の先輩から“人生で初めて観たミュージカルが『アニー』だった。絶対観に行く”と言っていただけたし、周りの反響もすごかったです。僕自身、以前映画版を観て、明るく、キラキラした子供たちに圧倒されました。気分が落ち込んだ時には笑顔で、と歌うナンバーも素敵で、人生に大切なメッセージがつまった作品だと思います」

――ルースターは小悪党という設定ですが、これまでどんな犯罪を重ねてきたのでしょうか。

「とにかくお金に目がない人物で、お金に関する詐欺を働いてきたようです。劇中にも、老人を騙してお金を盗ったという台詞が出てきます。ナイフを出してみせるシーンもありますが、実際にそれを使うような度胸は…なさそうですね(笑)」

――詐欺師を演じるにあたり、口調を研究されたりも?

「とにかく笑顔と愛嬌で人に取り入る、懐に入るのがうまい人物なんだろうなと思っています。先日の稽古で、姉のハニガン役のマルシアさんが、僕を思いっきり甘やかしてくれたので、僕のほうも、姉に甘えるけれど裏では鬱陶しがっている、姉をいいように動かしている、というふうに演じてみました。多少は頭が切れるだろうけど、肝心なところでは抜けていたりする。ニワトリの鳴き声を真似したりもするので、そういう箇所でもお茶目さを出せるのではないかな。怖いけれどかっこいい、そしてお茶目。思わず“頑張れ”と応援したくなるような、絶妙なバランスのキャラクターを目指したいです」

――大恐慌の頃のお話ですが、何かイメージはありますか?

「一作前の出演作『モンローによろしく』が40年代アメリカの赤狩りの話だったので、少し想像できます。貧富の差が激しく、危険が溢れる状況だったのかもしれないな、とイメージしています」

――そういう環境となると、ルースターにとって詐欺というのは…。

「生きるための手段、ですよね。だから全然悪びれていません。そういう点もルースターの愛嬌に繋がっていけばと思います」

――財木さんは子供と遊ぶのが得意と伺いましたので、ルースターがアニーに話しかける場面も楽勝かも⁈(笑)

「現時点ではまだその稽古に入っていないのですが、どうなるかな。事前にあまり考えすぎても的外れになることもあるので、作りすぎず、稽古の場で空気を読みながら、面白く作っていけたらと思っています」
 
――どんなルースターになるか、楽しみですね。

「本読みの時に、演出の山田和也さんから“今までとは違うルースターになりそう”と言っていただけたので、模索しながら、自分なりのルースター像を作っていけたらと思っています」

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財木琢磨さん。©Marino Matsushima 禁無断転載

 

――そもそも、一般のミュージカルにも出たいと思われたのは、自分の枠を広げたいというお気持ちからですか?

「役者としてたくさん経験を積みたいという思いがあったのと、ファンの期待に応えたいという気持ちからです。ここのところ、僕の歌声をもう一度聴きたいというお手紙を多くいただいていて、そうした声に応えたいと思っていました」

――実際に体験してみて、2.5次元ミュージカルとは稽古の仕方など、何か違いを感じますか?

「顔合わせをして読み合わせに入った時に、皆さん既に完成された歌を歌っていることにびっくりしました。とりわけ子供たちの歌唱力に圧倒されて、自分が歌うシーンが近づくにつれ、緊張が半端なかったです(笑)。2.5次元ミュージカルでも歌の上手い人たちとは出会ってきたけれど、今回のキャストはとにかく凄いです」

――財木さんにとって2.5次元ミュージカルは“故郷”のような存在かと思いますが、その世界で得られた、一番大きなものは何でしたか?

「僕にとって、この道で頑張っていこうと思わせてくれたのは2.5次元ミュージカルでした。自分のキャラクターを愛して演じればそれはお客様にも伝わるんだな、俳優というのは何かしら人の役に立てる職業なんだな、と思えましたし、(原作の)漫画やアニメに突き詰めて向き合うことで、その魅力も再確認することが出来ました。数えきれないくらい、たくさんのものをいただいた世界です」

――一般のミュージカルでは2.5次元とはまたひと味違うものも求められてゆくかと思いますが、特にこういった部分を磨きたいと思っていることはありますか?

「技術はもちろん磨いていきたいです。顔合わせの時、今回のキャストの皆さんの凄さに一発で気づかされましたので、楽しい気持ちは忘れずに、皆さんからたくさん学んで、自分のものにしていきたいです。僕にとっては目の前の課題を頑張ることだけでもハードですが、この作品を終える頃には、ミュージカルのとらえ方も変わってくるかもしれない…そんな予感もあって楽しみです」

 ――幼くして舞台に触れる方もいる一方で、世の中にはまだまだ人生で一度もミュージカルを観たことがない方もいらっしゃると思いますが…。

「絶対いると思います。僕自身、小学生の頃はドッヂボールに明け暮れていて(笑)、その後もずっと、20歳ぐらいまでミュージカルという存在があることを知りませんでした。アニーと同い年くらいの頃の僕に“ミュージカルって面白いんだよ”と言っても響かなかっただろうと想像できるし(笑)、皆がミュージカルを知っている前提で話してはいけないんだろうなとも思います。

でもその一方で、小さいころに『アニー』を観て舞台が好きになったという人も、僕はたくさん知っています。今回の舞台が初のミュージカル鑑賞という方もいらっしゃると思うので、そういう方たちにとって心に残るような作品にしたいな、と思っています」 

――現時点で、財木さんはミュージカルの魅力をどうとらえていますか?

「一つ、確実にストレート・プレイと違う点と言えば、歌で表現することですよね。お芝居における歌なので、何というか、“ただの歌”ではない、というのが難しくて、まだまだ模索中です。だからこそ焦りはあるけど、本番までに解消していけたらいいなと思っています」
 
――どんな表現者を目指していますか?

「僕は常に、人の役に立ちたい、人のためになることがしたいと思っているので、僕がお芝居をしたことによってお客様の心が救われたり、明日も頑張ろうという気持ちになっていただけたら嬉しいです。そして“この人の次の作品も見たい”と思って下さる方が増えていくような役者になりたいですね。僕の芝居が皆さんの気持ちを明るくしたり、パワフルに出来る。そう感じて下さる方が僕の周りに溢れたらいいなと思っています」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報『アニー』4月23日~5月8日=新国立劇場 中劇場 公式HP
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