Musical Theater Japan

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』観劇レポート:“ミュージカル”で追求する、生身の人間の可能性

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

 “A never ending journey..”
神秘的なサウンドに密やかな囁き声が重なり、光の玉を持つ人々が舞う。
鉄郎、そしてメーテルが現れ、それぞれの場所から星空を見上げる。
“君とのあの日々が この胸で息づく”
“何度も思い出す あの銀河の旅を”
思い出されるのは彼らの人生を大きく変えた、あの日々…。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

ファンキーな音楽が鳴り響いて舞台は一転、喧騒のスラム街へ。
両親を亡くした少年・星野鉄郎は、機械化人たちを翻弄しながら銀河鉄道999のパスを盗み、警官に捕らえられるも謎めいた女性、メーテルに助けられる。
彼女からアンドロメダへの同行をオファーされた鉄郎は、これで機械の体がもらえると喜び、渡されたパスに記名。二人は銀河鉄道999に乗り込み、宇宙へと旅立つが…。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

1977~81年にかけて連載され、後にTVアニメ、劇場アニメ版も大ヒットした松本零士さんの漫画『銀河鉄道999』が、2018年、2019年に続き3度目の舞台化(これまでも歌の要素はありましたが、“ミュージカル”と銘打つのは初)。映画版で主題歌をつとめたゴダイゴのミッキー吉野さんが、今回初めて音楽監督として参加しています。

 

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

高橋亜子さんの脚本は鉄郎の旅の始まりから終わりまでをカバーしつつ、主に鉄郎と機械伯爵の因縁、そして宿命を背負ったメーテルの葛藤にフォーカス。惑星マスプロンで鉄郎が平和を愛するプライダーやその恋人リューズと出会い、歌いながら友情を深めてゆくという“ミュージカルならではの見せ場”も組み込まれています。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

小山ゆうなさんの演出も“舞台ならでは”の表現を重視し、映像の使用は控えめ。フレキシブルな表現力を持つアンサンブル・キャストを得て、プロローグでの光の玉を使った身体表現や、迷いの星における“抜け殻”たちのダンス、“異様に滑らかな動き”を見せる機械化人たちの描写等を展開、生身の人間の可能性を浮き彫りにしています。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

第一作から一貫して鉄郎を演じる中川晃教さんは序盤、機械化人たちが跋扈する社会で逞しく生き抜く少年像をキレのある動きで描き出し、“受け”の芝居が多くなってくる中盤以降は、鉄郎の“核”ともいえる純粋さと意志の強さをしっかりと保ち続けます。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

メーテル役の花總まりさんは、原作ファンから見ても“メーテルそのもの”の儚くミステリアスなシルエットに加え、母親への愛と罪悪感との板挟みになる彼女の葛藤を、折々のナンバーで迸らせ、佐藤流司さんは朗らかな青年プライダーと冷酷な機械伯爵を鮮やかに演じ分け、感傷を排したラストの身体表現はいかにも機械らしく、強い印象を残します。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

クイーン・エメラルダス役の北翔海莉さんはメーテルに向けた“自分を愛せてる?”等の台詞や歌詞を粒だたせた歌唱で確かな存在感を見せ、キャプテン・ハーロック役の三浦涼介さんは、鉄郎の亡き父から託されていたメッセージを伝える物語歌“人生は最高だ”の歌唱が味わい深くもパワフル。この歌を受け止めることで鉄郎の価値観が変わってゆく瞬間を、多くの観客が“体感”できることでしょう。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

やはり鉄郎の生き方に影響を及ぼすトチローを演じるのは、藤岡正明さん。今回のバージョンではやや“しどころ”が少なくはありますが、藤岡さんが人間味豊かに演じることで、“その姿を見た者は死ぬ”と恐れられる傑物クイーン・エメラルダスが思い続ける男という設定に説得力を与えています。

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』(C) Marino Matsushima 禁無断転載

 

様々な出会いと別れの果てに、鉄郎が最後に歌うのは、長年の『999』ファンにはたまらない“あの曲”。ただし、広く知られる軽快なイントロからではなく、中川さん演じる鉄郎の、ゆっくりと噛みしめ、自分に言い聞かせるような歌声から始まります。その歌詞を聴きながら、本作が一人の少年の、大人への通過儀礼の物語であることに改めて気づかされる方もいらっしゃることでしょう。一つの旅を通して“人間であることの奇跡”を知った鉄郎が、それまでの出会いを力に変え、一歩踏み出す。ナンバー後半は他のキャラクターたちも加わり、新たな旅の始まりを祝福する爽やかなフィナーレとなっています。

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報『銀河鉄道999 THE MUSICAL』4月8~18日=日本青年館ホール 18日には生配信も有り(アーカイブ24日迄)。公式HP
*メーテル役・花總まりさん、機械伯爵役・佐藤流司さんのポジティブ・フレーズ入りサイン色紙をプレゼント致します。詳しくはこちらへ。