Musical Theater Japan

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映画館で愉しむ『パリのアメリカ人』:未来を模索する若者たちの美しき恋

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松竹ブロードウェイシネマ『パリのアメリカ人』©Angela Sterling

 

装置のデザイン画をあしらったお洒落なオープニング・タイトルに続き、煙草に火を付ける手もとのクローズアップで始まる本編。若き作曲家アダムを水先案内人として、観客は第二次世界大戦直後のパリへといざなわれます。

人々が終戦を祝い、戦地から帰った兵士と恋人が歓喜の再会を果たす一方で、通りには貧しさにあえぐ人や、戦中にナチス兵と交際したとして私刑に遭う女性たちの姿も。戦争によってあぶり出された人間の“光と影”を流麗なダンスで描くオープニング・ナンバーの中で、GIジェリーはミステリアスな女性と出会い、この地に留まり画家を目指すことを決意しますが…。

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松竹ブロードウェイシネマ『パリのアメリカ人』©Angela Sterling

 

一流の舞台映像を、映画館の大きなスクリーンで上映。日本にいながらにしてブロードウェイやウェストエンド気分を味わえる、と好評の「松竹ブロードウェイ」の最新プログラム『パリのアメリカ人』が、今月15日にスタート。全国各地の映画館で、順次公開される予定です。

日本でも劇団四季版(2019~20年)で一躍知られることとなった本作は、ガーシュインの音楽に彩られた1951年のジーン・ケリー主演映画を、世界的な振付家クリストファー・ウィールドンのもと、より演劇的に膨らませて舞台化したもの。2014年にパリで初演の翌年ブロードウェイに進出、トニー賞では振付家賞など、4部門を受賞しました。今回の映像は17年のウェストエンド公演(ドミニオン・シアター)での収録となります。

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松竹ブロードウェイシネマ『パリのアメリカ人』©Angela Sterling

 

見どころはなんと言っても、当時活躍した振付家や美術からインスピレーションを得、英国らしく演劇的なドラマ性も持たせたウィールドンの振付(ウィールドンの振付意図については、2018年、劇団四季版のために来日した際の、別媒体での取材レポートをご参照下さい)。そしてそれを初演以来磨き上げてきた、ジェリー役のロバート・フェアチャイルド(元NYシティ・バレエのプリンシパル)、リズ役のリャーン・コープ(元英国ロイヤル・バレエのファースト・アーティスト)の渾身のパフォーマンスからも目が離せません。特にクライマックスのバレエ“An American In Paris”では、わけあって内面を外に表現することを避けて生きてきたリズのジェリーへの思いが迸るさまを、コープが情感たっぷりに表現しています。

舞台映像は撮影者の視点でアングルが決まってしまうため、フラストレーションが生まれることもままありますが、本作では舞台上から撮ったようなアングルもあれば全身、表情のよく見えるクローズアップのバランスもほどよく、こだわりの感じられる編集。特にオープニング・ナンバーはその流麗さ、細緻な振付ゆえに、生の舞台では目があちこちに行ってしまいがちですが、映像では残酷な出来事を明確にフォーカスしており、暗さも残る世相の中で若者たちが希望を持ち、未来を切り拓いてゆくという本作の骨子がより理解しやすいものとなっています。

プロジェクション・マッピングを巧く取り入れた美術も美しく、デート・ムービーとしてもお勧めの一本。ミュージカル・ファンとしては、劇団四季版の思い出が蘇り、再演への期待がいや増す鑑賞となるかもしれません。

(取材・文=松島まり乃)
*上映情報 松竹ブロードウェイシネマ『パリのアメリカ人』10月15日~、全国順次限定公開 公式HP 上映劇場一覧
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