川平慈英さん、伊原剛志さんの息の合った注意事項アナウンスに続き、二人がステージ上に現れ、黙々と掃除を始めます。空間を整えると袖へと引っ込み、代わりに現れた自称“新世界劇場の妖精”(小南満佑子さん)が、歌に乗せて漫才の歴史を解説。漫才は1000年以上前、平安時代に伝統芸能として行われた万歳を起源としているのだそうです。
いよいよ漫才コンビ“なにわシーサー‘s”のうち、なにわのつよっさん(伊原さん)が登場。散々、琉球のジェイ(川平さん)の“恥ずかしいエピソード”を話していると、ジェイさんが“こらこら”とステージに上がり、二人の漫才が始まります。いつしか時は遡り、1970年の万博会場に沖縄から家族で出かけ、迷子になったジェイ少年と、アイスをなめていた地元のつよし少年が出会うシーンが再現。当時からお笑いセンスがあった(?)二人は成人後、奇跡的な再会を果たしてコンビを結成、売れっ子への階段を駆け上がって行くが…。
日本を代表するエンターテイナーの一人、川平慈英さんと多彩なドラマ、映画で活躍する伊原剛志さんが2024年12月に結成した漫才コンビ“なにわシーサー‘s”が“漫才ミュージカル”に。恵比寿・エコー劇場で開幕、7月27日まで上演されます。
畑中翔太さんによる脚本は川平さん、伊原さん自身の背景を取り入れつつ、オリジナルのエピソードやファンタジー的要素も注ぎ込んでおり、どこまでが実話でどこからがフィクションか、判然としないのが魅力と言えます。小澤時史さんの音楽、平澤智さんの振付ともに躍動感があり、川平さんのあたたかさ親しみやすさ、伊原さんのリラックスした大阪弁を引き立て、“妖精”の他にもマネジャーやジェイの母役などでしばしば登場する小南さんの“華”が、舞台をミュージカルの香りで満たします。
彼らは漫才界で活躍を続けることが出来るのか、それとも…⁈
華々しさと哀愁が交錯する舞台。今回は喋り(漫才)にたっぷりウェイトを置く構成となっていましたが、今後再演を重ねるなかで、ミュージカルナンバーを増やすなど、さまざまな可能性が感じられる作品です。
(取材・文・撮影=松島まり乃)
*公演情報 『なにわシーサー‘s』7月17~27日=恵比寿・エコー劇場