Musical Theater Japan

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デビュー作でメインキャストを演じ、最新作はトニー賞ノミネート。ブロードウェイで快進撃中の新星・上林龍インタビュー【前編】

上林龍(Ryo Kamibayashi)東京都生まれ。幼少期をタイ、インドネシアで過ごす。日本で高校卒業後ミシガン大学School Of Music, Theatre & Danceに進学。卒業後1か月半でブロードウェイ・ミュージカル『The Outsiders』に準主役アンダースタディおよびスウィングとして出演。25年には『Pirates! The Penzance Musical』に海賊役で出演(第78回トニー賞再演ミュージカル賞にノミネート)。その他の出演に『Loud Nite』『RENTd』『Sophisticated Ladies』(ミシガン州⽴⼤学) ⽶ABC「Good Morning America」( 2024) ⽶NBC「Macyʼs Thanksgiving Day Parade」( 2024) 「WolvTV Spotlight Interview - George Takei」( 2024、司会)等がある。


ブロードウェイに昨年、彗星のごとく現れた日本人俳優のホープ、上林龍(Ryo Kamibayashi)さん。
大学を卒業後わずか1か月半で、トニー賞ミュージカル作品賞を受賞したばかりの人気作『The Outsiders』にメインキャストのアンダースタディ兼スウィングとして出演し、今年は『ペンザンスの海賊』を新解釈で上演する『Pirates! The Penzance Musical』で、ラミン・カリムルーと共演。この作品がトニー賞再演ミュージカル賞にノミネートされ、6月9日(日本時間)の授賞式には、ラミンらとともにパフォーマンス出演する予定です。

今回、この注目の新星へのロング・インタビューが実現。“前編”では、出演してきた2つのブロードウェイ・ミュージカル、そして最近オファーを受け、参加した新作ワークショップについてうかがいます。ブロードウェイの最前線に食い込み、才能を発揮する彼の“今”を、たっぷりお話いただきました。

 

『Pirates! The Penzance Musical』右端がRyo Kamibayashiさん。Photo by Joan Marcus
 
オーディションで勇気を出して挙手したことで、本番でジャズ・ピアノを弾く演出が生まれました

 

――まずは『Pirates!』のトニー賞ノミネート、おめでとうございます。

「ありがとうございます」

 

――トニー賞はカンパニーの皆さんが目指してきた地点でしょうか?

「今年はいろいろな作品があって、めちゃくちゃ競争率が高い状況でした。この『Pirates!』に関しては、演出家のスコット・エリスさんと、オーケストラをやっている方が五年間ぐらいかけてアレンジをしてきたパッション・プロジェクトです。トニー賞を目指すというよりは、この作品の新しいアレンジをすごく楽しんで創り上げてこられたので、開幕すること自体、クリエイティブ・チームはわくわくしていたし、有難さを感じていて、まさかトニー賞にノミネートされるとは! でも嬉しい! という感じです」

 

――ギルバート&サリバンの19世紀のオペラ『ペンザンスの海賊』を、どう新しく見せるかというのがポイントだったかと思いますが、皆さんの間でどんな共通認識をお持ちでしたか?

「仰る通り、本作はイギリスが舞台の、クラシカルなオペラが原点なのですが、もしも設定をイギリスから(米国の)ニューオーリンズに移して、1880年代に大流行したニューオーリンズ・スタイルのジャズ風味にアレンジしたらどうなるか検証してみようという試みが、まず最初にありました。

そういう意図で作られているので、作品の中でも何回か、曲についての説明が入ったりします。“1幕の終わりはジャズに合わせるため、別の作品からこの曲をとって来て入れてみました、どうぞ!”みたいに、お客さんとの交流もあります。元の作品を知らないお客さんからしても、すごくジャジーで楽しめますし、元の作品を知っている人も、この曲はこういう風にアレンジされているんだなと新鮮さを感じていただけるものになっていて、僕自身、出演しながらワクワクしている毎日です」

 

『Pirates! The Penzance Musical』中央でピアノを弾くのがRyo Kamibayashiさん。Photo by Joan Marcus


――ラミン・カリムルーさん演じる主人公はじめ、メインキャラクターの人物造形は台本の段階で描き込まれていると思いますが、Ryoさんたちが演じる海賊に関しては、オーディション後に決まっていきましたか?それとも既に描き込まれていて、そこにはまる方がキャスティングされていったのでしょうか? 

「嬉しい質問です(笑)。オーディションでは、ダンスの審査が5回くらいあったのですが、2回目ぐらいの時に、バレエ・コンビネーションが終わってから“この中で、楽器を演奏できる人いますか?”と振付の方に聞かれて、勇気を出して“ピアノ弾けます”と手を挙げたら、“じゃあ今、弾いて”と言われ、即興でジャズ・ピアノを弾きました。

そこからコールバックの度に“Ryo、今日は何か別のを弾いてみて”とお願いされるようになって、そういうことを繰り返したことで、僕が演じるデューイは、本番でもルースというメイドのキャラクターの曲に合わせてピアノを弾くようになったんです。

あと、僕が日本人ということもあって、歌詞の中に“海賊王”という日本語が取り入れられたりもしています。今回のキャストは一人一人、とても個性豊かな人たちなのですが、その中でもリハーサルを通して自分のキャラクターを作っていけたな、という手ごたえを強く感じています」

 

『Pirates! The Penzance Musical』右端がRyo Kamibayashiさん。Photo by Joan Marcus



――ラミン・カリムルーさんは日本のミュージカル・ファンにもお馴染みの方ですが、彼との共演はいかがですか?

「“おちゃらけなおじちゃん”という感じです(笑)。“同い年か⁈”というくらい、本番中もふざけ倒すんですよ。突然、“どれだけお互いを見ながらベロを出し続けられるか対決”をし始めたりして。ラミさんと俺、ブロードウェイで何やってるんだろう…と思うこともあるけど(笑)、本当に遊び心満載です。あんなにかっこよくてマッチョで歌もうまいのに、本当に中身は小学生…そのギャップにもめちゃくちゃ萌えます。あと、すごくいい香りがします(笑)。いい香水をつけているんだと思います」

 

――トニー賞授賞式のパフォーマンスのリハーサルもそろそろ始まりますか?

「明後日くらいからリハーサルが本格的に始まります。一幕の最後の曲をやろうか、トニー賞用に歌詞を変えてみようかなんていう話が出ているらしくて、まだどういうパフォーマンスになるのか僕自身、把握できていないんですが、めちゃくちゃ楽しみです」

 

『Pirates! The Penzance Musical』左端がRyo Kamibayashiさん。Photo by Joan Marcus


――『Pirates!』の前には、昨年トニー賞ミュージカル作品賞をとった『The Outsiders』にも出演されたのですよね。

「そうですね。プリンシパルの一人のポールというキャラクターのアンダースタディと、それプラス、アンサンブル7人全員のカバーをしていました。なのでダンスもたくさんありました」

 

――ということは、メインキャストのアンダースタディ兼スウィング?

「はい、そうです」

 

――大学を出てすぐ即戦力としてブロードウェイに出演、というのはなかなかないと思いますが…。

「NYでは毎年、卒業したての俳優たちのショーケースが開催されていて、一人あたり60秒間、自分が決めた曲でパフォーマンスを披露することができるのですが、僕がいたミシガン大学は有難いことにコネクションがたくさんあって、いろいろなプロデューサーやキャスティング事務所が見に来てくださるんです。

で、僕がパフォーマンスをした後、『The Outsiders』のプロデューサーの一人が“ちょうどスウィングのポジションがあるのだけど、オーディション受けてみない?”と声をかけてくださって。

その時はまだトニー賞をとる前だったし、僕としては、卒業してすぐスウィングとして拘束されちゃうのはどうかなという気もしましたが、ビザの関係で、とりあえず仕事がないと日本に戻らなければいけなかったので、受けてみようと思って受けたら、ありがたいことに受かりまして。大学を卒業して3週間後には、リハーサルが始まっていました。そしてリハーサルの1週間半後にはブロードデビューを果たしていて…。あまりに無我夢中で、自分自身、いったいどうして出来たんだろうと思うほどです(笑)」

 

――共演者にもフレッシュな方が多かったのですか?

「『The Outsiders』は“この作品でデビュー”という人がすごく多い作品で、ミュージカルではなく、ダンスを中心にやってきた子も割と多かったですね。そういうフレッシュなメンバーの中の一人になれたことは、すごく光栄でした」

 

――若いとはいえ、突然8人分の演技を覚えるのは大変ではなかったですか?

「死ぬかと思いました(笑)。しかも僕は日本で子役時代、劇団四季の『サウンド・オブ・ミュージック』に出させていただいた頃から歌と演技ばかりやっていて、ダンサーとして育ってはいなかったんです。

アメリカの大学でダンスに触れて、うわ、体って面白いな、と思い始めて、そこからすごく動くようになりましたが、まさかブロードウェイ・デビューがダンサーだとは僕も思ってもいなかったし、なおかつ7人分の細かい動きを覚えることになるとは(笑)。

『The Outsiders』は喧嘩のシーンがすごく多くて、一歩でも間違えたら怪我する可能性が高いのですが、中でも“ランブル”という、雨の中でみんなが闘いまくるシーンがありまして。そこでは、このキャラクターは舞台裏のここから血のパケットを取って、この瞬間で血を出す…というような、細かい段取りがたくさんあって、それを全部覚えないといけない。ブロードウェイってこういうものなんだな、というのを、いきなりドボーンと入り込んでいくというより、いわば足湯に浸かった感じで、スウィングとしてちょっとずつちょっとずつ演じながら慣れていったなぁ…という感覚です。

キャストもみんなすごく助けてくれて、おかげで全然間違いなく出来ましたし、あのカンパニーじゃなかったら、あんな怖い試練を乗り越えられなかったな、という思いが残っています」

 

――“The Outsiders”は“グリーサーズ”という不良グループと“ソウシーズ”という金持ちグループの抗争物語。Ryoさんがその中で演じた役について、少し教えていただけますか?

「僕がブロードウェイ・デビューを果たしたのは、“グリーサーズ”の一人、スティーヴ役。映画版では若き日のトム・クルーズが演じていたと知って、めちゃくちゃ興奮しました。

アンダースタディをつとめたポール役は、お金持ちの白人グループ“ソウシーズ”の側の人間で、一幕は全然踊らないし、台詞もないので楽なのですが(笑)、ソウシーズのリーダー、ボブがグリーサーズのジョニーに刺されて“グリーサーズをやっつけろ”という機運が生まれるところで、先頭に立つキャラクターです。“こんなのはありえない、なぜ戦わないんだ”とソロを歌って革命を起こそうとする、責任重大な役で、彼が一発殴ったことで全員が喧嘩を始めるという、二幕が美味しい役どころでした」

 

――演じるにあたって“日本人としての表現”は意識されましたか?

「スティーヴを演じた時は、白人が少ないグループということもあって、みんな人種を表に出していました。僕は“日本人らしさを表現するのに鉢巻とネックレス、どっちがいい?”と演出家に聞かれて、“ネックレスかな”と答えたら、なぜか五円玉をネックレスに通してつけることになって(笑)。それがこの役の唯一の日本人アピールでした。

一方、ポール役に関しては、ソウシーズのメンバーとして、白人ではない俳優が出たのは、僕が初めてだったそうです。

1960年代の物語で、アジア人の僕が白人側のキャラクターを演じたことで、ファンの方々の間では“歴史上こういう意味合いがある”という考察や意見がたくさん生まれたそうです。僕は何もやっていないのに、僕が出ているだけでこんなに見方が変わるんだと、身に染みて感じました。そこにはアメリカならではの複雑さがあって、僕が僕でいるだけでこんなに面白い視点や発想が作品にもたらされるんだな、面白い経験をしたなと思いました」

 

――それまでアマチュアだったのが、プロとして突如、大勢の観客の視線を受けることにもなりましたね。

「はじめは恐ろしかったです(笑)。 『The Outsiders』は今、一番熱い作品と言っても過言ではないくらい人気の作品なので、出ると決まった瞬間に、僕の似顔絵を描いてくれるファンも出て来て…。全然似てないからどう反応していいかわかりませんでしたが(笑)、とにかく熱心に応援して下さって。一か月前までは無名の大学生だったのが、『The Outsiders』という作品に出ることでこんなにファンが増えて、僕でいいのかな?と不思議な感覚でした。

でもアメリカのお客さんってエネルギーがすごいので、緊張感も一気に飛ぶんです。彼らに支えてもらったことで、舞台に出ても全然緊張しなかったです。ようやくアメリカに来たんだな、という感覚にもなりましたね」

 

――素朴な疑問ですが、『The Outsiders』は10代の少年たちの物語ですが、ブロードウェイのチケット代はかなり高価ですよね。それでもチケットを買える若いファンがたくさんいるのですね。

「確かに、500ドルのチケットもあるので、皆さん何をされているのかな、と思うこともあります(笑)。いっぽう、今出演している『Pirates!』はノン・プロフィット(非営利団体Roundabout Theater Company)の公演なので、100ドルくらいのチケットも多くて見やすいと思います。

でもチケット代がこれだけ違う背景には、製作費の規模の違いもあって、アンジェリーナ・ジョリーさんがプロデュースした『The Outsiders』は、かかっている額も次元が違うようです。いっぽう『Pirates!』は内容的にはブロードウェイ・レベルだけど、出来るだけコストを抑えながら、ただオープンすることだけを夢見て作られていました。対照的な二作品に出させていただいて、全然違う経験をさせていただいたなと感じています」

 

個性的なカットが多い、Ryoさんのアーティスト写真。「自分を少し大人らしく見せたいなと思い、白黒にしたり表情を落ち着かせてみながら取り組みました。普段は割とにこやかなので、こういう一面も見せてみたいなと思って臨んだら、自然と表情が出来上がって行きました」とのこと。


――最近、『Memories Of Gentlemen』のワークショップにも参加されたそうですね。日本ではミュージカルのワークショップはまだあまり聞きなれない言葉ですが、実際どういうものだったのでしょうか? 

「アメリカでは、NY以外の都市でトライアルをやって、そこでの評判を集め、改善した上でブロードウェイに持ってくるのが主流なのですが、そのトライアルの一歩手前にあるのがワークショップです。脚本を役者がリーディングして、それを聴きながらクリエイターが良くないと思った歌詞やメロディを変えていくという感じで、クリエイティブ・チームのために存在するものですね。

既存の作品の場合は、キャラクターの大枠は出来上がっているので、僕としてはそれにどう攻めるかを考えなくてはいけないのですが、ワークショップをする作品は、まだキャラクターがそこまで定まっていません。自分に寄せることもできるし、役者側から“こういうのはどう?”と提言すると、その人に合わせて書いてくれることも多いんです。今回は単なる演じ手というより、コラボレーターというか、アーティストたちの協力者として扱っていただけました。

そして今回はその中でも唯一の日本人ということもあって、脚本家のリア・ナナコ・ウィンクラーさんという日系アメリカ人の方とも、日本語でたくさんコミュニケーションしました。“このセリフは僕こう思うんですけど、どうですか? ”とお願いすることもあって、めちゃくちゃクリエイティブな感覚でしたね。

こちらではワークショップに出ることで、作品がブロードウェイに行った場合にキャスティングされる可能性が高まることもあるらしく、貴重な経験ができました。今、アメリカにはアジア人の波がどんどん来ているので、これからもこういったワークショップに参加していきたいです。本当にたくさんのことを学べました」

 

――オーディションを経ての参加だったのですか?

「基本的にはオーディションが多いのですが、今回は有難いことに、オファーという形で参加しました。日本人のキャラクターということも、プラスに働いたのかなと思います」

 

――演じてみて、Ryoさんの中に、日本人であること以外にもその役と通じるものを感じましたか?

「原作である安野モヨコさんの漫画『鼻下長紳士録』では、このサカエという役は“30代のおっちゃん”なんです(笑)。

最初は“僕でいいのかな”と思いましたが、僕がやることでがっかりさせたくないな、と思ったし、クリエイターたちとコラボしながらやればやるほど、キャラクターも理解出来ました。『The Outsiders』の時の経験を思い出して、役に対してそこまで“寄せに行く”ことはしなくていい、一人のアーティストとしての自分であることだけで十分なんだと自分に言い聞かせながらやったら、皆さんからの評判もどんどん良くなっていって。

僕自身はまだ30代にはなっていないけれど、そのニュアンスを見つけて、キャラクターに近寄れたという手応えはありました」

 

――ワークショップを終えた段階の脚本の中には、Ryoさんが居るのですね。

「そう思います。一見原作とは全然違うキャラだけど、生で見るうちに“サカエだ”と思えたと言って下さる方もいて、有難かったです」

 

――ワークショップの期間中に曲がどんどん変わっていったということはありましたか?

「ありましたね。 『春のめざめ』を書かれたダンカン・シークさんが作曲されているのですが、曲も追加されるし、彼は独特な世界観をお持ちで、送ってくれるデモ・テープがちょっと風変わりなのですが、翌日すぐパフォーマンスしないといけないので、どう解釈したらいいのかなんて迷っている暇はないなという感じでした。

セリフも演じる2分前に突然変わるし、いろいろヤバかったです。かなりスパルタでしたが、だからこそ、ただただ自分でいることで充分なんだと信じて取り組みました。自分のエゴはさておいて、やっぱり作品のため、クリエイティブ・チームのためのワークショップなんだとリマインドさせられるプロセスでした」

 

――相当なスキルがないとついていけない世界ですね。

「本当にそうですね。僕は作曲もやっているので、音楽に関しては、コード進行とかメロディもわりとすぐ理解できるのですが、芝居に関してはまだまだ勉強中だし、英語で感情をバーっとぶつけるという経験を実人生でやってこなかったので、自分なりに日本語に訳して、これはこういう感情なんだろうなと頭の中で整理しないとすぐ感情移入できない、というストレスもありました。

でも僕に限らず、クリエイターたちもみんな本当にスパルタ状態で苦しみながらやっていたので、最終的には本当にいいところにたどり着いたなあという、爽快な気持ちになりました」

 

――アメリカではいったん書かれた作品が、かなり時間と人数をかけて練っていかれることが多いようですが、それだと“最大公約数的”な作品になることはありませんか?それとも関わる人数の“掛け算的”な作品になる、という感覚でしょうか?

「(掛け算の効果は)めちゃくちゃあると思います。 こちらでは、ワークショップやリーディングをやる作品って、最初はクオリティも全然高くないものもすごく多いんです。クリエイター自体、“うまくいってない”というのは頭の中ではわかっている。でもそれを一度俳優たちに演じてもらうことで、アーティストは何かを受け取って、また作り直す。そしてまた生でやる。そのサイクルが、アメリカの人たちは得意なんです。

クリエイターって、頭の中で全部完璧に練り上げて、“これが私のものだ”というものを呈示するというイメージがあると思いますが、生の舞台になってくると、役者のニュアンスによってストーリーやキャラクターも全然変わってくるので、まずは自分が作り出したものにそこまでエゴを与えず、とりあえず演じてもらって、そこで生まれたものに反応する、そのプロセスを何回も繰り返す。それによってクリエイターが思いもよらなかった形や色が生まれてゆく。本当にエゴがあったらできない作業だな、と思ったし、僕自身もミュージカルを書いているので、勉強になりました」

 

後編に続く)

(取材・文=松島まり乃)

*無断転載を禁じます

*『Pirates! The Penzance Musical』7月27日まで=Todd Haimes Theater 公式HP

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