Musical Theater Japan

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『銀河鉄道999』花總まりインタビュー:“憧れの女性(ひと)”メーテル役に挑む

 

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花總まり 東京都出身。宝塚歌劇団で歴代最長記録となる12年3か月間、娘役トップスターをつとめる。退団後も『レディ・ベス』『エリザベート』等の舞台で活躍。2016年に菊田一夫演劇賞大賞を史上最年少で受賞するなど、受賞多数。©Marino Matsushima 禁無断転載


母を殺された少年・鉄郎が謎の美女メーテルとともに、銀河鉄道に乗って宇宙へと旅立つ…。
1977年の連載開始以来、世代を超えて愛される松本零士さんの『銀河鉄道999』が、この度3度目の舞台化。今回は初の“ミュージカル版”となり、映画版で主題歌を担当したゴダイゴのミッキー吉野さんが、音楽監督をつとめます。

この舞台でメーテルを演じるのが、宝塚歌劇団娘役トップスターを経て『エリザベート』『レディ・ベス』等、数々の舞台で活躍している花總まりさん。幼少の頃、アニメ版や原作漫画に親しんでいたこともあり、本作への思いは格別のようです。“謎の美女”メーテル役にどんなイメージをお持ちか、公演への抱負、最近ますます広がりつつある芸域について等、幅広くお話いただきました。

【あらすじ】富裕層が肉体を機械に変え、永遠の命を手にする一方で、貧しい人間が虐げられている未来社会。母を機械伯爵に殺された少年・鉄郎は謎の美女メーテルに出会い、彼女と共に機械の体をもらえる星を目指し、銀河鉄道999に乗り込む。旅の途中でキャプテン・ハーロックやクイーン・エメラルダス、大山トチローらと出会い、限りある命の価値に気づく鉄郎。そんな彼を見守りながら、メーテルはあることを決意する。汽車は刻々と終着駅へと近づき…。

大切にしたい
鉄郎に対する思い

 

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『銀河鉄道999 THE MUSICAL』

 

――花總さんは、宇宙についてどんな感情をお持ちですか?

「憧れはやはりあります。星空を眺めるのも好きですし、まだまだ分からない宇宙の謎というものにとても惹かれますね。

今回出演させていただく『銀河鉄道999』は、子供の頃、アニメ版を観ていまして、オープニングに出てくる、宇宙に目に見えない線路が伸びていて、その上を銀河鉄道が走ってゆく光景に物凄く憧れていました。全部のエピソードを覚えているわけではありませんが、小さいころに一生懸命、メーテルの顔を描こうとしたりした記憶があります。メーテルの中に憧れの女性像を見ていたのかもしれません」

――アニメ版をご覧になっていたのでしたら、メーテルについては(声優の)池田昌子さんの声のイメージもお強いでしょうか?

「それはありますね。池田さん演じるメーテルが鉄郎に向かって呼びかける“鉄郎…”という台詞が耳に残っています。その後、別の方も(ラジオドラマ版等で)この役を演じているので全員が連想されるわけではないと思いますが、私の中では池田さんのあの声が理想のメーテルです。」

――『銀河鉄道999』の魅力はどんなところにあると思われますか?

「子供の頃は、現実ではありえない世界に連れていってくれるという点でとても魅力的だったのですが、大人になった今、改めて振り返ってみて、とても深いテーマのある作品なのだなと再認識しました。子供から大人まで万人に共通して、観て頂きたいテーマがある作品です」

――今回の舞台の台本を読んでの印象はいかがでしょうか?

「今回、(出演の)お話をいただいて、自分の中で(『999』について)忘れていた部分もあったので、いろいろ調べなおしながら読みました。今回はミュージカル版なので台詞と歌詞が同じ色分けで書かれていますが、作品の膨大なテーマを、いかに限られた時間の中で表現するか。初めて『銀河鉄道999』に触れる方もいらっしゃれば原作の熱烈なファンの方もいらっしゃる中で、どこをポイントに、どこまでお伝えできるか。この台本を振り出しにどう深堀りをしていこうか、と考えながら読みました」

――メーテルには“静”的なイメージを抱かれる方も多いかと思いますが、台本を拝見した限りでは、今回は彼女の思いが、かなり噴出してきそうですね。

「後半に大きな展開があるので、そうかもしれません。楽曲で表現されている部分もありますので、メーテルの思いをそこで膨らませることができたらと思っています。

一つ大事にしたいなと思っているのが、鉄郎に対する思いです。メーテルはお母さんに対して葛藤がありますが、それとは別に、鉄郎によって自分の心を見つめなおしているという側面があって、それをふまえて心の動きを辿っていかないと、最後がうまくいかなくなるような気がするんです。そこはきちんと表現していきたいと思っています」

――終盤のメーテルの名台詞が、今回の舞台版にも取り入れられており、原作好きとしては感動しました。

「感動されるのですね、やっぱり!(笑)。私自身、この台詞は大切に発したいです。アニメ版をなぞるのではなく、メーテルを演じながら自然にイメージするところにいけたらいいなと思っています」

――今回は映画版で主題歌を担当したゴダイゴのミッキー吉野さんが音楽監督をつとめられています。楽曲はいかがですか?

「多彩なイメージですね。鉄郎の“My Dignity”というナンバーを聴いた時には、メーテルのナンバーとは違った雰囲気だったので“こういう曲調もあるんだ”と新鮮でした。メーテルのナンバーでは、私の目指しているメーテルの声や雰囲気と曲をうまくすり合わせてゆければと思っています」

――メーテルを演じる上で特にこだわりたい点はどんなところでしょうか。

「やはり声にはこだわりたいですね。私の中には“メーテルの声はこう”とイメージしているものがあるので、一人で練習していると、つい“違う、違う”と思ってしまいます。でも私には私の声質がありますし、真似をして感情のない人形になってしまってもいけないので、いろいろ葛藤しているところです」

――どんな舞台になれば、と思っていらっしゃいますか?

「限られた上演時間で、限られたスペースの舞台で、限られた人数によって演じるという前提はありますが、原作が持つ、とてつもなく大きなテーマを表現できたら、と思っています。現実を忘れるくらいの、無限に広がっていくイメージ。そのエネルギー。そんな世界観を打ち出せたらいいな、と思いますね」

――プロフィールについてもうかがえればと思いますが、花總さんは近年、大地真央さんと共演された『おかしな二人』や柄本明さんの妻役を演じた『本日も休診』といった作品を通して、コメディエンヌとして新境地を拓いていらっしゃいますね。

「コメディエンヌですか⁈(笑)。確かに、以前からコメディをやってみたいなとは思っていました。(初挑戦の)『おかしな二人』は難しかったですが、思い切ってやることができました。はじめは緊張しましたし、毎日必死でしたが、大地さんをはじめとする皆さんがうまく導いてくれまして、こういうお芝居も楽しいなと思えました。『本日も休診』は刺激が多かったです。学ぶことがたくさんありました」

――最近ではシアタークリエで『リトル・プリンス』に出演。星の王子様に大きな影響を与える“花”役で、出番は短かったにも関わらず強い印象を残されました。

「(出番は)20分もあったでしょうか、その中に全てが凝縮されていましたね。自分の中ではかなりエネルギーの要る役でした」

――ご自身の中で、こういう作品、お役と出会いたいとイメージしてキャリアを築いていらっしゃいますか?

「そういうものはありません。いろいろな役をやらせていただく中で一つ一つ、新たなチャレンジが出来ましたので、これからも様々なお役をいただけたらいいなと思っています」

――役との向き合い方は変化されているでしょうか?

「以前と変わらないと思います。ただただ、一生懸命お稽古して、探りながら、役を演じています」

――今回の『銀河鉄道999』では、漫画の舞台化ということで、扮装はある意味、2.5次元的です。そういった点でも新たなチャレンジになりそうですね。

「そうですね。今までとは違った難しさがあると思います。こういった扮装はしたことがなかったので、それに負けてしまうことがないように。自分自身の理想や御覧になる方のイメージも壊さないようにしながら、メーテルという役をうまく作っていけたらと思っています」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報『銀河鉄道999 THE MUSICAL』4月8日~18日=日本青年館ホール 公式HP

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