世界で最も有名なラブストーリーとして4世紀の間愛されてきたシェイクスピアの戯曲『ロミオ＆ジュリエット』を、エネルギッシュな舞台づくりで知られる鈴木勝秀さんが“ROCKでアナーキーなスパイスを振りかけて”脚色。主演に佐藤流司さん（音楽劇『道』、ミュージカル『刀剣乱舞』）、仲万美さん（マドンナのバックダンサーもつとめたダンサー、演劇的作品は今回が初）を迎え、藤田玲さん、AKANE LIVさん、コング桑田さん、陣内孝則さんらの共演にて上演されます。
ミュージカル・ファンにとってはフレンチ・ミュージカル版『ロミオ＆ジュリエット』公演の記憶も新しい中で、今回“誰も見たことがない『ロミオとジュリエット』”と銘打たれたこちらはどのような舞台となるのか、注目が集まります。
観劇レポート：ハードロックに彩られた、愚かしくも鮮烈な人間模様
開演前に客席通路を練り歩いていた男（山岸門人さん）が舞台に上がり、口上を述べる。近未来の巨大都市で、グルッパと称する不良たちとビアンカズーリ（警察）の二大勢力が対立する中で繰り広げられるこの物語には“愚か者しか出てこない。でも愚か者こそ人間の本質なのだ”と彼は解説、耳をつんざくハードロックの音色とともに本編がスタートします。
ティボルト（藤田玲さん）率いる白い衣裳のビアンカズーリ、そして、黒い衣裳のグルッパの若者たちが小競り合いをする中で、客席通路から現れるロミオ。演じる佐藤流司さんは左目は前髪に隠れていることが多いものの、その一つの目、そして歌う姿には群を抜いた輝きが宿り、厭世的な台詞を並べていても、どこか人生に対する好奇心に満ち溢れているように見えます。
そんな彼に、何らかの意図をもって仮面舞踏会の招待状を渡すロレンス神父（陣内孝則さん）。ちょっとした冒険のつもりで出かけたロミオは、そこで警察長官の娘ジュリエット（仲万美さん、要所要所で切れのいい所作を見せ、表情も豊か）に一目ぼれしてしまう。
“一目ぼれって信じる？”
戸惑うジュリエットに、ロミオはこのフレーズを何度も畳みかける。そしてジュリエットも“信じる！”と応じ、二人は手をとりあって走り出す…。
原作戯曲の骨格を借りつつも、修辞的な台詞はほとんど排し、スピーディーに展開する物語。原作についてはなぜ二人の恋が悲劇に終わってしまうのか、現代人からすればまだるっこしく感じられる側面もありますが、今回の舞台ではその部分についても斬新なアイディアが加えられ、歓びと生命力に満ち溢れた二人がなぜ真逆の方向を向いてゆくのか、なるほどと思わせるものがあります（脚本・演出＝鈴木勝秀さん）。
大嶋吾郎さんによる楽曲・ギター演奏は大音量であってもメロディが耳に残り、2層のセットを適宜動かし、劇場の大空間を使い切ろうとする演出も効果的。梅雨の季節の湿度など吹き飛ばすような、小気味いい舞台に仕上がっています。
(文・写真＝松島まり乃）
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＊公演情報 Rock Opera『R&J』6月14日～23日＝日本青年館ホール、7月4日～7日＝森ノ宮ピロティホール 公式HP
