Musical Theater Japan

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『ALTAR BOYZ 2021』観劇レポート:観客と自身を救う、熱狂の“福音”舞台

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『ALTAR BOYZ 2021』(チーム「LEGEND」)(C)Marino Matsushima 禁無断転載

薄闇のステージにスタッフが現れ、スモークを撒く。男たちが一人ずつ現れ、鳴り響くロック・サウンドのなか踊り、歌い始める。迷える魂を救う“福音”の歌を…。

“神に仕える5人の使徒たちが観客を救済するLIVE”という設定で、04年に初演。05年からはオフ・ブロードウェイで2000回以上上演され、日本でも09年の初演から上演を重ねる舞台が、7演目の今回、「LEGEND」「GOLD」「SPARK」の三チームで実現しました。

電光掲示板に表示される、会場内の“迷える魂”数をゼロにしようと、BOYZは時にスタイリッシュ、時にユーモラスにパフォーマンスを繰り広げます。

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『ALTAR BOYZ 2021』(チーム「LEGEND」)(C)Marino Matsushima 禁無断転載

3組のキャストのうち、この日はオリジナル・キャストの東山義久さん、植木豪さん、中河内雅貴さん、良知真次さんと、新メンバーの浅川文也さんから成る「LEGEND」チームが出演。

流し目(!)で観客を悩殺し、助走付きの跳躍も迫力満点の東山さん、余裕のていでダイナミックなブレイクダンスを見せる植木さんに、弟分的なかわいらしさ漂う中河内さん、飄々としながらもドラマティックな歌声で舞台に陰影を加える良知さん、エネルギッシュなダンスと歌声で新風を吹き込む浅川さん…と、それぞれの個性が炸裂します。

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『ALTAR BOYZ 2021』(チーム「LEGEND」)(C)Marino Matsushima 禁無断転載

キリスト教という背景が盛り込まれた作品だけに、本来はある程度の知識が求められる作品に見受けられますが、玉野和紀さんの日本版演出は分かりやすく、お笑い要素もふんだん。観客が5人のBOYZに十分親近感を抱いたころ、シリアスに転じる流れが鮮やかです。

『ALTAR BOYZ』(チーム「LEGEND」)(C)Marino Matsushima 禁無断転載

 

掲示板に表示される“迷える魂”の数字を眺めるうち、もしやこの中には自分たちも含まれるのではと気づくBOYZ。マイノリティとしての生きづらさなど、彼らの抱える様々な問題が明らかになる一方で、チームの結束を脅かす事態も勃発します。

しかしメンバーの一人アブラハムが、秘めた思いを歌い上げ…。役としての思いに本作と過ごした12年間の自身の思いを重ね合わせたかのような、良知さんの歌唱が圧巻です。

『ALTAR BOYZ』(チーム「LEGEND」)(C)Marino Matsushima 禁無断転載

 

フィナーレにはそれまでのナンバーが、メドレーとなって再登場。使徒たち一人一人の個性が十分に浸透した段階で“復習”が出来、さらに愛着が強固なものに。本作が上演の度に新たなファンを獲得していることにも頷ける舞台です。

今回、3チームの公演後には、3組合同のスペシャル公演が予定されていましたが、緊急事態宣言発出に伴い、やむなく中止に。一チームでも相当の熱量が放出される舞台だけに、合同公演ではどれほどの熱狂が…と多くのファンが胸膨らませただけに残念でなりませんが、遠くない未来にきっと、晴れやかにエネルギッシュに、特別な舞台が実現することが期待されます。

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『ALTAR BOYZ 2021』(チーム「LEGEND」)(C)Marino Matsushima 禁無断転載

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報『ALTAR BOYZ』4月9~30日=新宿FACE(緊急事態宣言発出に伴い、25日以降の公演は中止となりました)