Musical Theater Japan

ミュージカルとそれに携わる人々の魅力を、丁寧に伝えるウェブマガジン

自宅でミュージカル!“今、観られる”配信中のお勧め舞台

緊急事態宣言の発出により、いよいよ日本各地で生の舞台が観られない事態が本格化しています。ミュージカル・ファンにとっては胸塞ぐ日々ですが、一方では様々な舞台映像配信スタートのニュースも。この機会に、これまでは観ることのなかったカンパニー、作品も体験してみてはいかがでしょうか。
(様々な業界が甚大な損失を被る中で、日本のミュージカル産業も例外ではありません。私たちが出来ることとして、この機会に“草の根的にミュージカル・ファン層を広げる”ことを意識してみるのもいいかもしれません。例えば以下にご紹介する配信をご覧になって「これはいい!」と思ったものは、ミュージカルを観たことのない知人・友人にお勧めしてみる→リアクションがあった人を、事態の収束後、実際の舞台に誘ってみる、といった具合です。ミュージカルがこれからも私たち観客の“夢”であり“日常”であり続けるよう、出来る範囲で応援して参りましょう!)
 
“ノブリス・オブリージュ”を体現!ロイド=ウェバーが自身の作品を無料配信する “The Shows Must Go On”
 (無料配信:日本時間土曜3時から48時間)
『キャッツ』『オペラ座の怪人』等の大ヒット作を生み出してきた作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが、不自由な生活を送る世界中の人々に心の慰めを、と4月上旬にスタートさせたプロジェクト。英国の毎週金曜夜7時から48時間、彼の代表作を無料で鑑賞出来ます。第一弾の『Joseph and The Amazing Technicolor Dreamcoat』に続き、4月11日(日本時間12日)からの第二弾は日本でも劇団四季版でお馴染み、キリスト最後の7日間を鮮烈に描くロックオペラ『Jesus Christ Superstar』。ベン・フォースター(ジーザス)、ティム・ミンチン(ユダ)、メラニーC(マリア)らが出演する2012年アリーナ・ツアー版で、現代のニュース映像~若者たちの暴動描写から始まる“今”風演出です。こちらを鑑賞後には、物語の舞台であるイスラエルで撮影された1973年の映画版(ヒッピーの若者たちが現地で劇中劇を演じるうち虚構と現実がないまぜになってゆく演出。amazon等で入手可)もご覧になってみてはいかがでしょうか。
 
 

出会いの奇蹟に心温まる
『In This House~最後の夜、最初の朝』2018年版、2019年版

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『In This House~最後の夜、最初の朝』2018年公演より。写真提供:conSept

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『In This House~最後の夜、最初の朝』2019年公演 撮影:岩田えり

(有料配信:各48時間1500円-4月30日迄)
Simple, small but specialをモットーに、良質の舞台づくりを目指すconSeptのミュージカル・ドラマ第一弾。米国片田舎の廃屋を舞台に、二組の男女が出会い、交流する一夜の奇蹟を描きます。岸祐二さん・入絵加奈子さん・綿引さやかさん・法月康平さん(18年版)・川原一馬さん(19年版)の緻密な演技が、観る者の心にそっと寄り添う一作。(19年版のキャストインタビューはこちら
 

等身大の人々の苦悩が胸を刺す
『いつか~one fine day』

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『いつか~one fine day』写真提供:conSept

(有料配信:48時間1800円‐4月30日迄)
こちらもconSeptのミュージカル・ドラマ・シリーズ。保険会社に勤める主人公を中心として、それぞれに悩みを抱える等身大の人々を描くオリジナル・ミュージカルです。17年の韓国映画を原作として板垣恭一さんが脚本を執筆、桑原まこさんの音楽、藤岡正明さん・皆本麻帆さん・内海啓貴さんらの真摯な演技が昨年の初演時、口コミで評判を呼びました。(キャストインタビューはこちら
 

生死を超えた永遠の愛を描く
Tip Tap『Play A Life』(黒猫チーム白猫チーム

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『Play a Life』黒猫チーム 写真提供:Tip Tap

 

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『Play a Life』白猫チーム 写真提供:Tip Tap


(無料配信中:4月17日12時迄)
本誌連載でもお馴染みの柴田麻衣子さんがプロデュースし、『キューティ・ブロンド』等の上田一豪さんが主にオリジナル作品を演出するカンパニーの人気作。確かな愛で結ばれた男女と教育実習生が明日に踏み出してゆくまでを、小澤時史さんの音楽で包み、時にコミカルに、時にしっとりと描き出します。今回は15年の初演版2バージョン。“黒猫チーム” 小林遼介さん・池谷祐子 さん・平川めぐみさん、“白猫チーム” 丹宗立峰さん・木村花代さん・田中里佳さんそれぞれのテイストを楽しめます。

 
”三人一役”で描く独創的ミュージカル Hikopro project『ツクリバナシ』

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hikopro project『ツクリバナシ』
(無料配信中)
下北沢の若手演出家コンクールで最優秀賞・観客賞をダブル受賞した作品。哀しい記憶に囚われた漫画家の夫とその妻が四コマ漫画に取り組み、微かな希望へと向かってゆくまでを、奥田祐さんの疾走感溢れる音楽に彩られながら描きます。夫・妻をそれぞれ3名の俳優が演じる、という独創的な演出(永野拓也さん)。遠山裕介さん、和田清香さんらの迫真の演技も必見です。10日アップされたこの動画はオフブロードウェイで公演予定のミュージカル「えんとつ町のプペル」の翻訳も担当している工藤優子さんによる英語字幕付きバージョン。
 
ミュージカルではありませんが、こちらも注目
スーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』
 

www.youtube.co

(無料配信:4月13日16時~19日23:59)
古来の手法と最新のテクノロジーを掛け合わせた斬新な演出で、旋風を巻き起こした市川猿翁さんの「スーパー歌舞伎」。その精神を継承した市川猿之助さんが演出・主演をつとめる『新版オグリ』が、上演予定だった南座で収録され、松竹チャンネルで期間限定無料配信されます。原作は中世から語り継がれてきた小栗判官伝説。劇団四季在籍時に『ライオンキング』スカー役等を演じた下村青さん(当時は下村尊則さん)も出演。これまで上演された新橋演舞場や博多座での舞台とも一味異なる演出とのことですので、かなり貴重な映像となりそうです。