1998年から2017年まで良質の舞台を上演し続け、多くの人々を魅了してきた四季劇場【春】【秋】。再開発に伴い17年6月にクローズとなりましたが、JR東日本グループが推進する竹芝ウォーターフロント開発計画「WATERS takeshiba」の核となる“文化・芸術”を担う存在として、2020年9月「JR東日本四季劇場【春】【秋】」として誕生。9日、WATERS takeshibaプロジェクト発表会が行われました。
会見ではWATERS takeshibaプロジェクトについてJR東日本代表取締役社長、プロジェクト担当者より挨拶・概要説明の後、四季株式会社代表取締役社長・吉田智誉樹さんが新劇場の概要、【春】のオープニング演目を説明。
今回の新劇場は、JR東日本にとっては初の“駅外アトレ”(従来は駅直結)となる「竹芝アトレ」のシアター棟内に並列しますが、エントランスは【春】が3階、【秋】が2階となる予定。吉田社長によると、最近のチケット需要を鑑み、以前の【春】【秋】劇場よりも客席をそれぞれ300席プラス。【春】は1500席、【秋】は1200席となるが、一階客席最後部から舞台までの距離は【春】が25メートル、【秋】は20メートル。最前列から舞台までの距離はわずか1メートルと、見やすさに配慮しているとのこと。劇団創立者の浅利慶太氏が抱いていた“現代日本文化のただ一つの課題は、東西文化の融合だ”という思いを継承し、芸術・文化の発信拠点として劇場をオープンする決意が語られました。
こけら落とし演目については、【春】が昨年、ブロードウェイで開幕した『アナと雪の女王』に決定し、【秋】は今秋以降の発表となる、とのこと。『アナと雪の女王』を選んだ経緯については、まず米国デンバーでのトライアウト(試公演)で“大人向けのエンタテインメント”だと感じ、その後のブロードウェイ公演初日を観て確信を深めたのだそう。
『アナ雪』のナンバーと言えば「Let it go」が有名ですが、舞台版ではエルサの葛藤を描く「モンスター」を含め新曲10曲が加わり、内容的にも“多様化の時代における他者との繋がり”の部分がより深化している、と吉田さん。その後の質疑応答で、「鑑賞後に、“愛に溢れた作品だと感じました。世の中が乾いていると言える状況だからこそ、(本作を観て)愛の豊かさを感じて頂ければ」と語りました。
なお、舞台版の歌詞については、映画版と舞台版では構成が異なるため全てそのまま使うわけにはいかないものの、映画版から続投で歌詞を担当する高橋知伽江さんと相談し、特に「Let it go」については多くの人々が知って(歌って)いるだけに、従来の歌詞をどの程度使えるか検討してゆくとのこと。
その後、希望者は工事現場へ移動。地下通路でヘルメットを受け取ると、いくつかの班に分かれて見学します。
筆者はまず竹芝アトレのタワー棟16階に上がり、ホテル「メズム東京、オートグラフコレクション」のロビーとなる空間へ。東京のベイエリアを見下ろす眺望はまさに絶景です。
続いて案内されたシアター棟では、【秋】の奈落、そして1階客席を見学。床と柱があるばかりで、壁などはこれからという状況ですが、この状態でも舞台と客席の“近さ”“一体感”は十分に想像でき、新劇場への期待が高まります。
この日は台風一過の影響もあってか酷暑のぶり返す気候でしたが、エアコンの設置されていない工事現場は、要所要所に扇風機が置かれていたものの、閉鎖空間で空気が滞留し、筆舌に尽くしがたい暑さ。それでも現場の方々は長袖のつなぎを着用し、きびきびと動いていました。一つの施設が生まれるまでにはどれだけ多くの人々の汗が流されていることかと、改めて痛感する取材でもありました。
(取材・文・写真=松島まり乃)
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*『アナと雪の女王』JR東日本四季劇場【春】2020年9月10日開幕 チケット一般発売は2020年6月14日開始 公式HP