Musical Theater Japan

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19年4月のミュージカルPickUp

新たな時代が始まる高揚感とともに、Musical Theater Japan(MT)もスタート! ミュージカル・ファンなら“おさえておきたい公演”“注目したい人々”を続々、ご紹介して行きます。それでは早速、4月の注目公演は?

 

4月の“気になる”舞台、上映作品、ライブ】

 『ふたり阿国』上演中/『花園』413日開幕/『プロパガンダ・コクピット』418日開幕/『レ・ミゼラブル』419日開幕/『銀河鉄道999さよならメーテル~僕の永遠』4月20日開幕 /松竹ブロードウェイシネマ『シー・ラヴズ・ミー』/彩吹真央25th Anniversary LiveLe Printemps--419日開幕←彩吹真央さんインタビュー 

 

【別途特集した舞台】

『ライムライト』49日開幕←実咲凜音さんインタビュー/『笑う男』49日開幕←上田一豪さんインタビュー/『いつか~one fine day~』411日開幕←藤岡正明さん・荒田至法さん・内海啓貴さんインタビュー

名作漫画の舞台版が完結『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』

42029日=明治座 公式HP

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『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』(C)Marino Matsushima

《ここに注目!》宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に想を得た松本零士の名作SF漫画が、1979年に大ヒットした映画版の公開40周年を記念して舞台化。昨年の第一弾の続編にして完結編が上演されます。 

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『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』(C)Marino Matsushima

前作に引き続き主人公・鉄郎を演じるのは中川晃教さん。前作では機械の体を手に入れようとしてその虚しさに気づく過程をみずみずしく演じた彼が、新たな旅でどんな姿を見せるか。また、凰稀かなめさん演じるクイーン・エメラルダスの背景等、登場人物たちの関係性が浮かび上がり、人間ドラマとしてのコクも加わった舞台となりそうです。 

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『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』(C)Marino Matsushima

《ミニ・レポ》もとはプリンセスだったエメラルダスが母プロメシュームと対立して故郷を飛び出し、宇宙海賊となったいきさつが描かれるプロローグを経て、本作では主人公・鉄郎が、機械帝国を破壊するため、メーテルとともに出発。銀河鉄道999のフロント部分が現れた後、人々が列車の座席を使って歌い踊り、旅の高揚感が高まります。 

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『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』(C)Marino Matsushima

1幕では前作で倒したはずの機械伯爵が意外な形で再登場、鉄郎との因縁が明らかなものとなり、後半はプロメシュームの密命を帯びて鉄郎を案内していたメーテルの真意が判明。韓国ドラマ並みの濃密な人間関係が宇宙のスケール感と対比をなし、興味深く映ります(脚本・石丸さち子さん、演出・落石明憲さん)。 

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『銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠』(C)Marino Matsushima

緊迫した場面が続く中、中川晃教さんはだらりと列車の座席に座る風情や台詞にちょっと間の抜けたお茶目さもある鉄郎らしさをまぶし、終盤のナンバー“さよならメーテル~僕の永遠”では、壮絶な経験を通して新たに人生に向かう決意を、万感の思いをこめて表現。ラストまで力強く舞台を牽引するその姿が印象的な舞台です。

ミュージカル形式で日本の芸能を問う『ふたり阿国』

上演中~415日=明治座 公式HP 

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『ふたり阿国』

《ここに注目!》歌舞伎の創始者・出雲阿国の“かぶいた”生きざまを、彼女に憧れ、後にライバルとなる娘・お丹との交流を絡めて描いた時代劇ミュージカル。3時間超の長尺で様々な要素が“てんこ盛り”となっていますが、芸のためならすべてを投げうつ阿国らのシビアな台詞や、芸人たちが“ガチバトル”よろしく芸を競い合う姿を通して、中世~近世の日本の芸能を、ミュージカルという西洋起源の表現形態の中で探求する意欲作です。(脚本=中屋敷法仁さん、田尾下哲さん) 

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「ミュージカル ふたり阿国」北翔海莉・峯岸みなみ 写真提供:明治座

スケール感がありつつも折り目正しい芸風の北翔海莉さんは、阿国として舞台に現れる度に観客の目を引き付け、明治座という大空間にぴったり。また前述の“ガチバトル”で芸人・とっぱ役の坂元健児さんが披露する一人狂言は、“芸能の戦国時代”を象徴するような気迫に満ちて圧巻。お丹の姉貴分・こふめを演じる雅原慶さんの、しなやかな存在感も光ります。(『ふたり阿国』プログラムを2名様にプレゼント!。詳細はこちら) 

注目の芸術集団がミュージカルに挑む『花園』

41321日=座・高円寺1 公式HP

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『花園』

《ここに注目!》1999年、伊藤靖朗さんを中心に結成、国際的な注目を集める舞台芸術集団・地下空港。斬新な空間芸術と寓話的な物語を通して人間と社会の関係を描いてきた彼らが、18年の構想期間を経てミュージカルに取り組みます。 

時は鎌倉末期。妖しく、美しい花園に迷い込んだ人々が出会うものとは…。主演に、昨年『Indigo Tomato』で主人公の弟役を好演した溝口琢矢さんを迎えるほか、元宝塚宙組の悠未ひろさん、元劇団四季の酒井良太さん(『アラジン』イアーゴ役)らが客演。“ミュージカル出身”ではない作り手たちがミュージカルという表現形態をどのように咀嚼し、表現へと昇華させてゆくか、興味は尽きません。(公演に1組2名様をご招待します。詳細はこちらへ。 )

荒唐無稽な中に覗く“リアル”が怖い⁈コメディ『プロパガンダ・コクピット』

41822日=IMAホール 公式HP 

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『プロパガンダ・コクピット』

《ここに注目!》脚本・作詞作曲・翻訳・演出をこなす藤倉梓さんが14年に発表、再演が待たれていた作品が遂に登場。架空の国の閉鎖的な居住区で暮らす人々と、そこに迷いこんでだ亡命失敗者たちの4日間のドラマがコミカルかつスリリングに描かれます。 

風変わりな物語世界は、実は藤倉さんが某国の実情に想を得たもの。お気楽なシチュエーションコメディととるか政治的なメッセージを含むととるかは観方次第という、“余白”のある作品と言えます。主人公の亡命失敗者コンビを演じるのは泉見洋平さん、田村良太さん。数週間前の別演目でも共演し、阿吽の呼吸⁈の二人だけに、硬軟自在の演技で作品世界をリードしてくれることでしょう。 

ミュージカルの金字塔が新キャストを得て登場『レ・ミゼラブル』

419日~528日=帝国劇場、その後名古屋、大阪、福岡、札幌で上演 公式HP 

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『レ・ミゼラブル』2019年版新キャスト発表会にて。(C)Marino Matsushima

《ここに注目!》本作の開幕時には『笑う男』『ノートルダムの鐘』(名古屋)も上演され、計3本の作品が上演されている予定のヴィクトル・ユゴー。人間味豊かなキャラクターたちが彼の巧みなストーリーテリングで活躍するドラマは、本質的に人間を描く表現形態、ミュージカルにぴたりと合うということなのでしょう。
その中でも本作は、数多くのキャラクターがひしめきながら、作詞・作曲のアラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルクが緻密に、かつわかり易く、全編を歌でまとめ上げた傑作。1985年の英国初演以来、世界で7000万人以上の人々に愛されてきています。
 

日本でも1987年の初演以降圧倒的に支持されてきましたが、今回は新たに佐藤隆紀さん(ジャン・バルジャン)、上原理生さん、伊礼彼方さん(ジャベール)、濱田めぐみさん(ファンテーヌ)、三浦宏規さん(マリウス)、熊谷彩春さん(コゼット)、小野田龍之介さん(アンジョルラス)、斎藤司さん(テナルディエ)、朴璐美さん(マダム・テナルディエ)が参加。新キャストを得てどんな深化を見せるか、見届けずにはいられない公演です。

ブロードウェイの舞台をミュージカル愛溢れるカメラワークで楽しむ『シー・ラヴズ・ミー』

419日開幕=東劇 公式HP 

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『シー・ラヴズ・ミー』©Joan Marcus

《ここに注目!》日本に居ながらにしてブロードウェイ・ミュージカルが映画館で楽しめる、という触れ込みで17年に上映された『ホリデイ・イン』が、連日満員御礼。晴れてシリーズ化(年に3~4本上映)が決定した松竹ブロードウェイシネマが早速、2016年トニー賞でミュージカル・リバイバル作品賞にノミネートされた『シー・ラヴズ・ミー』を上映します。(予告編映像はこちら 

トム・ハンクス&メグ・ライアン主演映画『ユー・ガット・メール』と同じ原作(ミクロス・ラズロの戯曲『パフューマリー』)をミュージカル化した本作は、名前を知らずに文通し恋に落ちた男女が、実は険悪な仲の同僚だったら…というラブコメ。 

なかなか素直になれない主人公たちの繊細な表現が見どころとあって、映像のカメラワークはかなりの凝りよう。ヒロインのアマリアが歌いだすとまずは正面からじっくり迫り、続いてやや下から、今度は引きで、お次にまたアップと、かなりの頻度で切り替わります。

撮影スタッフが“ここからだったらこの女優(ローラ・ベナンティ)の魅力が伝わるかな”“いやこっちの方が”と熱く議論する様が容易に想像できるカメラワークは“愛”以外の何物でもなく、彼らのミュージカル・オタクぶりを感じつつ鑑賞できるのが、今回の上映の面白さ。ちょっといじらしいヒロインを(夏に『王様と私』で来日予定の)ケリー・オハラ系の正統ソプラノで歌うベナンティ、その同僚で男に騙されやすいイローナ役を、おバカにならない絶妙のバランス感覚で演じるジェーン・クラコウスキーらの名演技が、存分に楽しめることでしょう。

*鑑賞券を3組6名様にプレゼントします。詳細はプレゼント頁へ。  

豪華ゲストを迎え、じっくりと歌で魅せる彩吹真央25th Anniversary Live『Le Printemps-春-』

 41921日=丸の内コットンクラブ 公式HP 

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彩吹真央 25th Anniversary Live 「Le Printemps -春-」

《ここに注目!》宝塚歌劇団で男役スターとして活躍後、女優として『End of the RAINBOW』『Red Hot and COLE』等に出演、着実な歩みを見せている彩吹真央さん。温かな歌声も魅力の彼女が、芸歴25周年を記念したライブ『Le Printemps--』を開催します。(前回ライブの映像はこちら)。音楽監督・ピアノを大貫祐一郎さんがつとめ、 鈴木壮麻さん、鳳蘭さん、篠井英介さん、 小松亮太さん、田代万里生さんが日替わりでゲスト出演。彩吹さんの思い入れのある楽曲から初挑戦の曲まで、彼女の“これまで”と“これから”を同時に味わえるライブとなりそうです。

 

彩吹真央さんインタビュー「“まだ見ぬ自分”に出会おうと、日々勉強を続けています」 

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前回ライブにて。写真提供:グランアーツ

――デビューから25周年、振り返ってみると早かったという感じでしょうか、いろいろあったなという感じでしょうか。 

「本当にあっという間に感じますね。私は小さいころから宝塚に入りたいと思っていて、3回目の受験で音楽学校に合格しました。それから歌劇団で16年間男役をさせていただき、退団。女優になったことで一つの転機を迎えました」

 

――それを踏まえて選曲されているのですね。 

「はい、私の芸の基本は宝塚で学んだ事なので、宝塚の懐かしい曲を入れつつ、これからチャレンジしたいジャンルとして、今回はシャンソンを選び、ライブのタイトルもフランス語にしました。最近も『マリー・アントワネット』のローズ・ベルタン役で半年ぐらいフランス人を演じ、“フランス時間”が長かったこともあって歌ってみたいと思ったのです。 

また、シャンソンに精通されている音楽監督の大貫さんにシャンソンにチャレンジすることを勧めて頂いたり、曲をリクエストされたこともきっかけになりました。自分の歴史を振り返りつつ、シャンソンという新たな世界も入れる形で、構成を考えています」

 

――タイトルは“春”の意ですが、4月の公演ということ以外にも何か象徴されていますか? 

「宝塚に入ったのも卒業したのも春で、私の人生の中で春は意味があるなと思っています。もちろん、その他の季節も好きですよ。特に美味しいものがたくさんある秋とか(笑)。ただ、今回は開催するのが出会いも別れもある春という季節ですし、これからの人生もこの春をまたいで進んでいこうということで、Le Printemps--と名付けました」

 

――宝塚時代の曲は男役として歌われる予定ですか? 

「役の歌はその役として歌いますが、シャンソンについては、(在団中)当時のように男役として歌うのか、今の私として歌うのかというのは決めていません。宝塚をやめてすぐの頃は、せっかく女優になったのでちょっと遠慮しようと思って、あえて男役的な歌唱はしませんでした。
けれども女優9年目になった今では、男も女も関係ないという境地です。これまで出演した舞台の中で、女性の心を持った男性の役や、男性の役を演じることもありましたし、あまり性別を意識することもなくなってきたので、等身大の今の私が曲に投影したい感情を、素直に歌うことになるのかな。“これは男役”という歌の場合は男役で歌うと思いますが、私自身はボーダーレスになっていますね」

 

――今回のライブは、彩吹さんのこれからの方向性も占えるものとなるでしょうか? 

「ずっと舞台に立たせていただいているなかで、私はいつも、やったことのない役をやってみたいと思っています。でもいろいろ出演する中で“この役、これまで演じたあの役に似てるね”と言われて、ちょっと悔しく感じることもあるんです。自分の癖のようなものが出てしまったのかな、と。自分の引き出しをもっと引き出して、毎回“新しい彩吹さんに出会えた”と思っていただけたら、と思っています。 

また、今回シャンソンに挑戦するにあたっては、ちゃんとシャンソンとして確立させないといけない、とも思っています。“シャンソン風”になってしまってはいけないので、いろんな方のシャンソンを聞いたりして勉強しています。“シャンソンになってるね”と思っていただけるよう、歌い込みたいですね。
欲が深いと思われるかもしれませんが、自分がまだ知らない自分に会いたいんです。これからもずっと。今回はこういう彩吹を楽しめた、次はどんなだろう、と思っていただけるような役者になりたいと思っています」

 

(取材・文=松島まり乃)

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