Musical Theater Japan

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渋谷真紀子の連載エッセイ『大夢想展』Vol.1「魔法の言葉」

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「魔法の言葉」撮影:渋谷真紀子

こんにちは、渋谷真紀子です。
真夏のオーストラリアから、この原稿を書いています。初回寄稿なので、簡単に私の事をお話すると…

幼少期をニューヨークと香港で過ごした私にとって、初めての演劇体験は香港の小学校での創作劇でした。
ミュージカルの魔法にかかったのは、劇団四季の「美女と野獣」(野獣:芥川英司さん・ベル濱田めぐみさん)。
中高は英語演劇部に所属し、大学は鈴木壮麻さん・別所哲也さん・川平慈英さん等を輩出した東京学生英語劇連盟(MP)で、英語ミュージカルに没頭しました。そこで演劇の真髄が詰まっている「FAME」と出会い、憧れを抱いたブロードウェイで「HAIRSPRAY」を観た衝撃が、プロへの闘志を燃やしました。

会社員時代を経てボストンの大学院を卒業し、ブロードウェイミュージカル「アリージャンス」の演出家奨学生として創作過程を学んだのが、ミュージカル制作の原点です。
その後、東京では自身の作・演出ミュージカル「KAGUYA」や配信ショートミュージカル「BLOOM」を発表したり、国内外のクリエイターとソングサイクルの創作をしたりしてきました。
今は、シドニーの劇場のミュージカル制作メンバーとして、創作中です。
私にとって、“舞台“はどこにいても、同志で繋がり、違いを楽しめるホームです。
こんな私の「ワクワク」を、これからお伝えしていきたいと思います。

今回のテーマは、「ワクワク」を生み出す言葉です。
皆さんには、どんな“魔法の言葉“がありますか?

“Don’t aim at the top of the mountain, look above the sky.”
(山の頂上を目指すな、雲の上の世界を想像しなさい)

これは、ボストンで働いていた劇場の上司の言葉です。
見える山の頂上を目指しても、想像以上の世界は広がらない。でも、想像するしかない雲の上を目指せば、想像力はどんどん鍛えられ、誰も見たことがない世界を見られる可能性が広がるという意味です。山の頂上は通過点に過ぎなくなり、そこを目指す時より苦を感じずに辿り着くというのです。

「アリージャンス」プレビュー中の幕間に完成した新曲を確認するクリエイティブスタッフ。後方中央が筆者。写真提供:渋谷真紀子

この言葉を聞いてから、未来にワクワクする事が増えました。それはきっと、私が“世界を想像する”ことが大好きだからです。
“世界“というと大きく聞こえるかもしれませんが、日常で言うと、ダイエットの目標体重を決めるより、成功した自分がいる世界を想像するのです。
誰と、どんな場所にいて、何を着ていて、何が見えて、何が聞こえてきて、何を食べたり飲んだりして、どんな気分なのかなどを考えているとワクワクします。それを想像して、大好きな曲を聞けば、苦痛でしかない筋トレも続けられます。

もう少し話を大きくすると、この発想のおかげで、雲の上の世界だと思っていたブロードウェイミュージカルの世界を、「アリージャンス」で垣間見る機会に繋がったと思います。
“世界“のピースを嵌めていく感覚で、集める情報や出会った人達を繋げていこうとします。想像した世界に足を踏み入れると、色々な感情が湧き上がり、世界がより鮮明になりました。想像とは全く違う!という楽しみもあります。
目標地点ではなく、行きたい世界に広げることで、失敗や不足もその世界に必要な要素として前向きに考えられます。このワクワク感が、少しでも伝わったら嬉しいです。

2022年はどんな世界が待っているでしょう。
私は、少しでも偏見に惑わされず、支え合い、愛し合える世界になるよう、作品の準備をしています。劇場で皆さんと同じ作品世界で過ごせる日を楽しみにしています。

(文・写真=渋谷真紀子)
*無断転載を禁じます

渋谷真紀子 東京都出身。全米演出家振付家組合準会員。ボストンエマーソン大学院演劇修士取得。ブロードウェイ版「アリージャンス」の演出家奨学生として、演出助手を経験し、日本版を翻訳。ブロードウェイアジア/ CBE「Neverland: The Peter Pan Immersive Entertainment」ニューヨーク と北京公演の演出助手を担当。 他、ミュージカル「KAGUYA織り成す竹取物語」「THE WIZ」「FAME」「星の王子さま」「BLOOM-Songs from WELL-BEHAVED WOMEN-」等を演出。