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THE CONVOY SHOW 今村ねずみインタビュー:35年間、コンボイと歩き続けて

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今村ねずみ 北海道出身。1986年にTHE CONVOY SHOWを立ち上げ、作・構成・演出・出演。06年には韓国演劇界から依頼を受け、韓国版『ATOM』ロングランを成功させる。現在はオリジナル・メンバーに若手を加え、新しい形でTHE CONVOY SHOWを進化。また俳優として『蜘蛛女のキス』『6週間のダンスレッスン』等多くの舞台に出演。映画出演作に『菊次郎の夏』。第35回菊田一夫演劇賞を受賞。©Marino Matsushima 禁無断転載

歌にダンスに芝居に…と、様々な要素を詰め込みながら出演者たちの個性が輝く、唯一無二のショー“THE CONVOY SHOW”。1986年に赤坂で誕生以来、口コミでファンが増え続け、2017年からは本田礼生さんら若手メンバーも加わってますます人気のエンタテインメント(vol.39『ATOM』観劇レポートはこちら)が、35周年記念公演THE CONVOY SHOW vol.41『コンボ・イ・ランド』を上演します。

その時々の“時代の空気”やメンバーたちの生きざまも織り込まれるショーは、どのように生まれてゆくのか。グループのリーダーであり、誕生以来ずっと作・演出を手掛けてきた今村ねずみさんにうかがいました。

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

 

――今、お稽古はどんな段階ですか?

「1から4ラウンド目まである中で、現在は2ラウンド目です。先週は本読みが中心で、シーンをデッサンしている感じ。2ラウンド目はそれにタッチを、3ラウンド目には色を入れ、4ラウンド目には絵画から彫刻になってゆくという感じかな。

今週は皆に流れを覚えてもらうために、act(芝居の部分)を抜き出しては一つずつ、“全体の流れの中のここだよ”ということを確認しています。頭から細かくやっていると着地点が分からなくなることがあるので、行く方向はこっちだよ、と。

それがわかってさえいれば、途中で迷ったりするのも、演劇としては無駄なことじゃないんです。勘のいい奴もいれば忘れる奴もいるけれど、その繰り返しの中で、今回のカンパニー14名、10代から60近いメンバーと60を越えた僕まで、みんなで発見し、成熟し、最終的にTHE CONVOY SHOWというスタイルを打ち出してゆく…というのが目標。ありそうでなさそうなスタイルでしょ?」

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

――そのスタイルというのは、今村さんの中にまずヴィジョンがあってそれを皆と共有していく、もしくは稽古場で次第に醸成してゆく、という感じでしょうか?

「前者ですね。“こういうエンタテインメントだったら面白いだろうな”と僕が机の上で勝手に妄想したものを皆に提案して、それを稽古場で皆でやっていくうちに具現化してきたというのが事実です」

――そのヴィジョンは時代によって変化してきましたか?

「変わってはいないけれど、時代の風は絶えず感じていました。なぜなら出演者一人一人の“その人そのもの”を引っ張り出して、その人が見え隠れするまで作品に落とし込むので、そこには彼らがその時生きている環境がつきまとったり、作品に反映されます。CONVOYの見た目は変わってきたかもしれないけれど、やっていることは一緒です。
ただ、自分のモノ作りは成長しました。明確にこれだ、こういうやり方だというのを現場で勉強させてもらったことで、外で演出家として呼ばれた時も、“こういうふうに作りたい”というのを漠然とではなく、具体的にお伝えできます。

こういう現場で生きてきて何が強みかというと、やっぱりオリジナリティだと思いますね。“こんなの前にも観たな”と思われたらそこまでで、“これ、初めて観た”という衝撃を与えることは大変です。僕は最初に夢の遊眠社に入ったけれど、遊眠社しかり、状況劇場、寺山さん、東京キッドブラザーズといった小劇場運動の中で勇気を持って新しいものを作り出した人たちを超える演劇人はなかなかいないじゃないですか。かたや、劇団四季は海外ミュージカルを日本人がやったらこうなる、というものを見せて、これだけの日本人の足を運ばせている。生き残っている劇団にはそれぞれの味があると思います」

――そんな中で、THE CONVOYとはどんなものなのか。今村さんとしてはどう表現されますか?

「お口に合うか分からないけど、35年こういう形でいる、というのが一つの答えなんじゃないかな。やり続けている、ということ、集団として残っている、というのが一つの答え。それはなぜなのかというと、やっぱり、ありそうで他にないのでしょうね。男たちが集まって舞台をやろうとなったときに、“これをやりたい、こういう世界を作りたい”という発信元がここにいるのだもの。

歌って踊って芝居して、でもミュージカルとは違うぞ。それなら、ジャニーズやEXILEみたいな人たちが芝居してるということ?と聞かれると、ポップ感覚はあっても、ミュージック・シーンのボーカル・グループではなく、もろに(演劇の)台詞を喋っています。だったら“男版・宝塚”か?うん、そういう要素は確かに入ってる。そういったものを混ぜながら、僕ら自身の関係が抉り出され、普通の演劇を超えたライブ感のあるショーになった、と言えるのではないかな」

――個人的には、THE CONVOY SHOWには“エンタメであること”よりもまず、出演者・作り手の“人間としての存在証明”が先にあるように感じます。

「僕の(芸能生活の)スタートは演劇で、野田秀樹さんの夢の遊眠社でしたが、役ももらえず、出来ることといったら稽古を見ること、走り回ることでした。野田さんの台本を読んでも何を描いたストーリーなのか理解できず、わかろうと思って体を使って汗をかいていました。

そんな挫折を経て、自分が出来ることは何だろうと考え、その結果がこういうことだった。別に、かっこいいものじゃないんですよ(笑)。やることが無かった時に何かやりたいと思って、自分の中から生まれた物語や欲望、世界を吐き出したら、こういうスタイルになったんです。THE CONVOY SHOWという名前すら、まさか何十年もやることになるなんて思いもせず、いい加減につけた名前です(笑)」

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

――数年前から若手俳優たちが加わるようになりましたが、それは若い世代の表現との対比といった意図だったのでしょうか?

「この35年間で、THE CONVOY SHOWには女性版や、韓国人俳優たちによる韓国版もあって、それを知っていたスタッフたちが“若い人版のコンボイもあっていいんじゃないですか?”と言ってくれたんです。そうとらえてくれるなら、作り手としては面白そうだとちょっとでも思ったらやるべきだ、こういうセッションも楽しいかもな、と思えたんです。一緒にCONVOYやってみようよ。やってみたらどうなるかな、と。

音楽はこうで振付はこうでと全て決まっているブロードウェイ・ミュージカルも嫌いじゃないけど、全部オートクチュールで出来るショーって、楽しいんですよ。生みの苦しみはもちろんありますよ、“誰か決めて”と言いたくなるときもあります(笑)。質問されることばかりで“逆に俺が質問したいよ”ということも。でも35年やってきて、一番成長させてもらったな、という実感があります」

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

 

――今回はどんな舞台になりそうでしょうか?

「今回、35周年ということで、今までの作品を一本に集めてみたら、というところから始まっている作品です。僕は『ラ・ラ・ランド』という映画の内容云々ではなく、タイトルの響きが面白いなと思っていて、千葉にディズニーランドがあるように東京にはコンボ・イ・ランドがあるよ、いろんな作品を集めたらこうなったよ、というものをお見せしたいと思っています。

それと、今回初めてCONVOYに来てくれる方がいらっしゃったらもちろん嬉しいけれど、35周年を迎えるにあたって、長年応援してくれたファンの方にまっさきに届けたいです。あの日あの時観たワンシーンが“今やったらこうなるんだ”という形で現れるかもしれません。過去を振り返りながら、“この人たち、まだ歩き続けてるんだ。おっさんになっても、若い子たちと一緒に前を向いてるんだ”と感じていただける作品を届けたいです。できるかどうか、わからないけどね(笑)」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
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*公演情報 THE CONVOY SHOW vol.41 『コンボ・イ・ランド』 東京公演12月10~18日=こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ 大阪公演12月30~31日=森ノ宮ピロティホール 公式HP
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『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載