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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』観劇レポート:舞台という名の宇宙を駆け巡るATOMたち

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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』

1986年に今村ねずみさん、瀬下尚人さん、石坂勇さんらが結成し、芝居に歌、ダンスと様々な要素を盛り込んだショーを上演してきたTHE CONVOY(コンボイ)。その人気演目の一つで96年に初演、2006年には韓国でも現地キャストで上演された『ATOM』が、作・構成・演出の今村さんと清新な若手キャストによって上演。今の様々な不自由、制約を忘れさせる熱いパフォーマンスをレポートします!

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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』

薄闇の中に現れる俳優たち。B’Zのロックナンバー“Love Phantom”が響く中、彼ら…本田礼生さん、荒田至法さん、伊藤壮太郎さん、バーンズ勇気さん、高橋駿一さん、帯金遼太さん、山野光さんが瑞々しくも激しいダンスを繰り広げます。CONVOYでは“皆が主役で脇役”ということで、前列と後列の入れ替えなど、フォーメーションの変化が頻繁。特定の誰か、ではなく全員のダンスをしっかり観ることが出来、一人一人の(踊りにおける)個性が見えてきます。途中からその中に加わるのが、今村ねずみさん。同じ振りを踊っていても、その動きの一つ一つにはニュアンス、まろやかさがじわり。エネルギッシュな空間がいっそう奥行きを増してゆきます。

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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』

たった数分で場内の空気がドラマティックに変化してゆく、高揚感たっぷりのオープニングを経て、舞台はガラクタ倉庫へ。自転車、ランプ、時計など様々なモノが散らばる中、“WHY?の会”と手書きされた看板が目を引きます。中央に置かれたこの看板を囲むように(?)若者たちが集っていると、Uber Eatsを名乗る男(今村さん)が登場。

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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』

誰も何も頼んでないのに?と訝しがるメンバーに向かって、彼は竹原ピストルの“Rain”を噛みしめるように歌い、“昔ここにいた俺たちが、お前たちを招いたとしたら?”と問いかけます。オープニングで舞台上方のスクリーンに映し出された、『ATOM』過去公演の映像が思い出され、観客は今回の舞台が、かつての『ATOM』と地続きの作品であることを強く意識することでしょう。男は、自分たちは無数の細胞…原子から成る存在で、僕らは宇宙を駆け巡るATOM(原子)なのだと言い、本作タイトルの意図が明らかになります。

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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』

“詩集を持て、言葉をかみ砕くんだ”という男の呼びかけに応じ、『コーラスライン』の一場面さながらに横一列に並び、詩集やレコードジャケットを掲げる若者たち。“ソクラテス”“フロイト”“カント”等、哲学者たちの名で呼び合う彼らは歌や踊りを交えつつ、さまざまな詩を語ります。もしも生まれ変われるなら、君が思い出せるようにもう一度僕になる、という詩とともに踊られる“ボレロ”。ウクレレやピアニカ、ギター、マラカスで彩られたボブ・ディランの“風に吹かれて”(平和や平等の叶わない世界に対する当惑をリアルに表現するバーンズ勇気さんの歌唱が印象的)。自己について、生と死について、友について…。

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THE CONVOY SHOW vol.39 『ATOM』

宇宙という広大な空間の中では原子のように小さな存在である自分たちが、巡りあい、関わりあう。全身でその歓びを表現する彼らを祝福するかのように、満天の星空が場内を包み込みます。年齢の近い同士で演じられていた歴代の『ATOM』とは異なり、実は親子ほど歳が離れているという今村さん(と今回は出演していないオリジナル・キャスト)世代から、10代から30代までの若いキャスト世代へ、CONVOYのスピリットの継承という側面もうかがえる舞台。観ている側も、無心で踊り、ATOMとして駆け巡る彼らと空間を共有するということの奇跡を噛みしめられる舞台です。

(取材・文=松島まり乃)
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