Musical Theater Japan

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『フィスト・オブ・ノーススター』山﨑玲奈インタビュー:心揺さぶるナンバー、大事に歌いたい

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山﨑玲奈 愛媛県出身。地元でレッスンを受け、舞台デビュー。19年『アニー』アニー役、20年『スクール・オブ・ロック』サマー役(公演中止)、ドラマ「おいしい給食 season2」皆川佐和子役等に出演。20年ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを獲得。©Marino Matsushima 禁無断転載

累計発行部数が1億部を突破し、連載終了から30年以上を経た今も世界的な人気を誇る漫画『北斗の拳』を、ホリプロがミュージカル化。脚本に高橋亜子さん、音楽にフランク・ワイルドホーンさん、演出に石丸さち子さんを迎えた新作が、いよいよ12月に誕生します。

この舞台で主人公ケンシロウに出会い、行動を共にする少女リンを(近藤華さんとのダブルキャストで)演じているのが山﨑玲奈さん、14歳。2019年の『アニー』でタイトルロールを演じ、昨年のホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞した新星です。

単なる“子役”ではなく、作品における“未来への希望”を象徴するような役柄であり、ソロ・ナンバーも予定されているリン役に、彼女はどのように取り組んでいるでしょうか。ミュージカルの道に進むに至った経緯なども含め、お話いただきました。

【あらすじ】
核戦争によって荒廃した世界。北斗神拳の修行に励んでいた三兄弟(ラオウ、トキ、ケンシロウ)のうち、ラオウは力による世界支配を目指し、被爆したトキは残り少ない時間を人々の病を治すことに使い、ケンシロウは愛するユリアをシンに奪われ、放浪の旅に出る。

孤児バットとリン、女戦士マミヤや用心棒レイらと出会ったケンシロウは、ラオウの軍に囚われたトキを助け出し、恐怖で支配された世界に光を取り戻そうとするが…。

「試行錯誤の連続」が
新作ミュージカルの醍醐味

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『フィスト・オブ・ノーススター』©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111

――山﨑さんは、本作の原作はご存じでしたか?

「はい、知っていました。読んだことはなかったけれど、主人公のケンシロウが戦うお話だというイメージは持っていました」

――本作では戦いがたくさん出てきますが、山﨑さんは武術を経験したことは?

「ありません。でも今、アクションをされる方たちがお稽古をしているのを、私もやりたいな~と思いながら見ています(笑)。ただ技を出すだけではなくて、いかに強そうに、美しく見えるかというのを皆さん細かく追求していて、(今回の舞台では)そういうところに気をつけないといけないんだなと感じました」

――作品世界に触れたのは、台本が最初だったのですか?

「台本を読む前に原作漫画を読んだり、アニメを見たりしました。台本をいただいて、“このシーン、原作にもあった!”と思ったり、原作と照らし合わせたりしながら読んでいきました」

――山﨑さんが演じるのは、力で世界を支配しようとする拳王軍に両親を殺され、言葉を喪ってしまった少女リン役。どんな女の子として造型されていますか?

「年齢としては、8歳ぐらいかなと思います。私は今、14歳なので、自分よりかなり幼い役です。

リンちゃんは、はじめは弱くて何もできなかったけれど、ケンシロウに出会って一緒に旅をする中で、自分の意見を言える芯の強さを持ってゆく女の子だと思っています」

――リンは大人たちが戦っているのを見守る機会が多いお役ですが、見守りながら心が動くお芝居というのは難しいことのようにも想像されます。

「難しいです。目の前で戦いが起こっていたら、自分だったら叫んだり暴れたりしてしまうかもしれませんが、リンちゃんはそれを静かに見守ります。その中でいかに感情を出すか、毎日試行錯誤しています」

――村に侵攻してきた拳王軍は、武器をちらつかせながら「忠誠を誓うか」と人々に問いますが、それに対して“最後の真実”というナンバーを歌うのがリン。人々の心揺さぶる、作品的にもとても重要なナンバーですね。

「ダブルキャストの(近藤)華ちゃんの稽古を見ていて泣いてしまうくらい、感動的なシーンです。自分がやるとなると、民衆の心をひきつけるように“私は嫌だ”と主張しなくちゃと思うので、責任重大で緊張します。リン自身、パワーアップしていく場面でもあるので、大事に演じたいと思っています」

――お稽古は既に全体像が見えてきているそうですが、山﨑さんが一番お好きなシーンは?

「(リンの心の傷に共鳴して)ケンシロウが“心の叫び”というナンバーを歌って、その後リンちゃんに変化が現れるシーンが一番好きです。リンちゃんの感情がうわーっと爆発する場面だし、曲が凄く好きで、一番楽しいです」

――いろいろなキャラクターが出てきますが、お気に入りは?

「(用心棒の)レイという人がいて、アニメ版を観たときから好きです。(女戦士の)マミヤを守り抜く姿がいいなと思っています」

――石丸さち子さんの演出はいかがですか?

「“ここはこうしたほうがいい”と熱心にアドバイスしてくださったり、話も聞いて下さいます。細かくやってくださるので、一つ一つ、そういうことかと理解して、丁寧に稽古出来ています」

――山﨑さんは19年に『アニー』でタイトルロールを演じていますが、オリジナル作品の立ち上げとあって、その時とは違う大変さを感じますか?

「アニーの時は“ここはこう動いて”というのが一つ一つ決まっていて、それを覚えて自分のものにするのが課題でしたが、今回は新作なので、“こうしてみたけど、やっぱり元の形のほうがいい”と試行錯誤して、一つの場面も時間をかけて作っているので大変ですが、“そうか、こう動いたほうがいいのかな”と考えながら稽古できて、新作ならではの楽しさがあります」

――どんな舞台になったらいいなと思われますか?

「今は試行錯誤が続いていますが、本番になったらみんなで一致団結して、オリジナリティ溢れる『フィスト・オブ・ノーススター』を演じられたら、と思っています」

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『フィスト・オブ・ノーススター』©武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111

――プロフィールについても少しうかがわせてください。山﨑さんは愛媛のご出身だそうですが、どのようにミュージカルに出会われたのでしょうか。

「小さいころから、家でよくミュージカル映画を観たり、ディズニーが好きでディズニー・ミュージカルの歌を口ずさんでいるのを母が聴いて、小4の時に“ミュージカル・スクールに行ってみたら”と言われました。はじめは気乗りがしなかったのですが、行ってみたらとても楽しくなりました」

――現在は首都圏にお住まいのようですが、ひょっとして移住はレッスンのためだったのですか?

「はい、こういうことを仕事にしていけたらなと思ったので、本格的に勉強したいと思って移住しました」

――そうしたら『アニー』に合格してしまった、という流れでしょうか。

「いえ、『アニー』は愛媛にいる時に一度受けています。当時は全然練習も出来ていなくて“オーディションってどういうものなのかな”という感じで受けたので、落ちるのは当然だったと思います。それで、落ちたのが悔しくて、(首都圏に移って本格的に)ダンスレッスンを受けて、歌は母に習って、もう一度受けたらアニーになれました」

――お母さまは音楽の先生なのですか?

「ではないのですが、ピアノが上手で、歌も私より上手なんです。私は音程をふにゃっととってしまう癖があるので、それをきれいに直せるよう、一緒に練習してもらいました」

――そして昨年は、次代のミュージカルスターを発掘するホリプロタレントスカウトキャラバンに出場。ライブ配信は観る方もどきどきしながら観ていましたが、山﨑さん的には緊張のひと時でしたか、それとも楽しかったでしょうか?

「課題曲(“You Can’t Stop The Beat”(『ヘアスプレー』)も難しかったですし、始まる前はすごく緊張していて、これじゃできない…と思っていましたが、いざダンスやお芝居の審査が始まると、すごく楽しくやることが出来ました」

――みごとグランプリに輝きましたが、中学生の今、夢は一つに絞られているのでしょうか?

「はい、俳優です。ミュージカルだけでなく、映像でも幅広く活躍できる俳優になりたいです」

――山﨑さんにとって、演じることのどんなところが楽しいですか?

「共演者の方たちと対面して、一緒に場面を作り上げることが楽しいです。目の前にお客様がいて、歌った後に拍手して下さることも嬉しいです。TVドラマでも、スタッフさん含めて大人数の方々と試行錯誤していくのがたまらなく好きで、これからもたくさん演じていきたいです」

――山﨑さんに憧れながら、レッスンを頑張っている小学生もたくさんいると思いますが、何かアドバイスはありますか?

「レッスンをしていると、いろんなことがあると思います。私自身、歌やダンスのレッスンが面倒だな…と思う時期もありましたが(笑)、それも乗り越えて頑張ることが大切なのかな、と思っています」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
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*公演情報『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳』12月8~29日=日生劇場、22年1月8~9日=梅田芸術劇場メインホール、1月15~16日=愛知県芸術劇場大ホール 公式HP
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