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『ウエスト・サイド・ストーリー』廣瀬友祐インタビュー:愛する者を守るために

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廣瀬友祐 俳優、歌手。東京都出身。近年の出演作に『ファントム』『ロミオ&ジュリエット』『1789~バスティーユの恋人たち』『るろうに剣心』『グレート・ギャツビー』等。歌手としても19年にアルバムをリリースし、ツアーを行うなど、精力的に活動している。公式HP https://hiroseyusuke.info/ 撮影©Marino Matsushima
対立する移民たちの愛の悲劇を描き、1957年にブロードウェイで初演された『ウエスト・サイド・ストーリー』。以来、世界各地で上演されてきた“名作中の名作”が、360度回転するIHIステージアラウンド東京で上演中です。
 
その3月10日までのバージョン“Season2”で、ベルナルド役を(wキャストで)演じているのが廣瀬友祐さん。プエルトリコ系グループ、Sharksのリーダーとして存在感を放つ彼に、現時点の応えや役柄、今回の演出について等、お話いただきました。
 
【あらすじ】移民たちがそれぞれにグループを作り、対立しているNYウェストサイド。ポーランド系移民のトニーと、アニータのブライダル・ショップで働くプエルトリコ系移民のマリアは、体育館でのダンス・パーティーで偶然出会い、恋に落ちる。トニーがかつて参加し、今は親友リフがリーダーを務めるジェット団はマリアの兄ベルナルドが率いるシャーク団と決闘することになり、マリアはそれを止めるようトニーに頼むが、思いがけない事件が起きる…。
緊張と戦いながら、とてつもなく高い壁に挑戦しています 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――今回、この役に挑戦しようと思ったきっかけは?
「自分が最終的に首を縦に振ったという意味では、ダンスへの挑戦ですね。自分の役者人生にとって本当に大きな挑戦です。『パジャマ・ゲーム』というダンス・ミュージカルに出演した時、プログラムのアンケートで“あなたにとってダンスとは?”という問いに対して“観るもの”と書いた記憶がありますが、そんな自分が名作中の名作のベルナルドという、映画版のジョージ・チャキリスを知っている人にとってはとてつもなくハードルが高い役に、敬意を払いながらもいい意味で“そんなの関係ない!”精神で取り組んでいます」
 
――ということは、本格的なダンスは…。
「今回、この作品に入ってからですね。これまでも現場でちょっとしたステップを踏んだりダンサーの方に教えていただいたりといったことはありましたが、これほど踊る作品はやったことがなかったので、本当に一からやらせていただいています」
 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――以前からダンスとの相性がよかったとか、勝算があったのでしょうか。
「最終的に自分を信じるしかないですよね。ベルナルドという役を生きるにあたってはいろいろな要素が必要ですが、その第一がこの高い高い壁であるダンス。これまで、ダンス=お芝居と聞いていたにも関わらず、別物というイメージがありましたが、今回、踊りこんでみて、やはりダンス=お芝居なんだと感じられるようになりました。シャークスの有名な(片足を上げる)振りにしても、ここは自分たちの生きていく場所だ、と地面に突き刺す軸足のほうが(もう片方を上げていることより)大事なんだと聞いて、そういう結び付け方でアプローチしていくと、自分なりのベルナルドの表現を見つけることはできなくはないなと思えるようになりました。でも稽古初日は第一線でダンスをやってきた共演者の皆さんが“この振付はしんどい”と言っていて、その時の恐怖と不安は半端なかったですね(笑)。今はだいぶ減りましたけれど」
 
――お稽古は長期間だったのですか?
「自分は『ファントム』という作品に出演していたので短めだったのですが、最初に役柄に関わらず皆で『ウエスト・サイド・ストーリー』の振付を共有するという時間があったんです。『Cool』だとか、たくさん踊って、さすがについていけない時間もありました。とにかくあっという間でしたね。
今回、振付リステージングのフリオ・モンヘが(ベルナルドたちと同じ)プエルトリカンで、シャークスはこういう心情なんだとか、この時代はこうでということを話してくれて、皆で理解できました。例えばジェッツとシャークスの違いとして、“愛を知っているかどうか”ということがある。シャークスは家族がいて守るものがあるのに対して、ジェッツは生まれた時からめちゃくちゃな環境で生きてきたわけです」 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――不良グループの対立、と言っても、実は質の違う不良なのですね。シャークスの目標とすることは何なのでしょうか。
「それは僕自身もいまだに問いかけているんですが、売られる喧嘩は買うけど自分からは仕掛けない、ということははじめに言われました。前提として、移民というだけで(仕事をしても)賃金が安いだとかいろいろな差別をされていて、愛する者を守ろうとしているだけなのに(ジェッツが)邪魔をしてくるなら力でねじ伏せるしかない。それほど追い込まれている、という解釈ですね」
 
――冒頭の“小競り合い”は、ダンスという感覚でしょうか、立ち回りでしょうか?
「僕の感覚ではダンス要素のある立ち回りですね。曲としてきっかけが多い立ち回りではあるけれど、曲がバックにあるということを考えるとダンス要素もある立ち回り、という認識です」
 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――その中で、ベルナルドはジェッツの一人の耳を切りますよね。あれはどういう意味なのでしょうか?
「“印をつける”という意味合いだそうです。犬がマーキングするような。お前は俺に一度負けた、という“勝ち印”で、その時代のルールだったようです。だからその後の決闘でナイフを出すのも、印をつけるための傷つけあいであって、殺そうとはしていない。そういうギャングのルールなのだと思います」
 
――本当に殺そうと思ってナイフを出すのではない…それはとても大きいですね。
「大きいです」
 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――リフを刺してしまうくだりはかなり“偶然”に見えます。
「偶然という解釈です。トニーが止めに入った際にお互いを見失ってしまった隙間が生んだ悲劇。ベルナルドが傷を負いながらも立ち上がったとき、目の前へ突っ込んできたリフに反射的にナイフを持った手が出てしまった…。こうするしかなかった世界で、どうしょうもない若者たちを生んでしまった時代の歪みが積み重なった、偶然の悲劇です。」
 
――ベルナルド自身、あそこで自分があんなことになるとは思っていなかったと思うと、儚いお役ですね…。
「死ぬ役は慣れていますけれど(笑)。僕は死ぬ役も演じがいがあると思っていて、もし(死なずに)生きていたらその後どうなっただろうと想像してもらえるように演じたいと思っています。人生の幕が下りる人物をどう作れるのか、という楽しみはあります」
 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――死の間際を凝縮して見せる醍醐味でしょうか。
「本作自体、台本が凝縮されて、そぎ落とされてそぎ落とされて無駄なものが一切ないという印象です。エンタテインメントとしての歌、ダンス、お芝居のトライアングルが高度な技術を要する。じゃなければぬるいエンタメになってしまうという恐怖を感じながらやっています」
 
――今回は現代とリンクさせるエンディングになっていたりと、新しさを感じさせる演出ですね。
「初演で投げかけられたメッセージが今も訴えられているというのは、それだけ(差別や暴力が)なくなっていない実態がある。普遍的なテーマですよね。それを描くにあたって、ただ昔話として描くのでは、今を生きる人の人生には反映してこない。そういう意味で、現代的な要素を入れて観た人が現代と通じたモノを持って帰るというのはいいことなんじゃないかと思います。
ラストで皆が舞台前面に出ていくときは、役ではなく、自分自身として出ています。僕もベルナルドではなく、廣瀬友祐として、こうなってしまった背景をあなたはどう思いますか、と。ウエスト・サイド・ストーリーの世界観をなぞるだけではダメで、今を生きる僕らがそれを通してプラスアルファのメッセージを現代の人に送るところに意味があるのではないかな」 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――これまで本作は卓越したダンサーであったり歌い手でないと出演できないといったイメージがありましたが、今回はフレッシュな顔ぶれで作品の新たな時代を作り出そうとする意図を感じます。演じ手としてはその思いを受け止めていらっしゃいますか?
「ただただ大変です(笑)。でもそういう意味での挑戦だったり、面白さって絶対あると思うんですよ。(ダンスや歌に関して)フレッシュなメンバーもいて、その中でどんな化学反応が起こるか。やる側としてはただただ大変だけど、面白い仕上がりになっていると思います。自分としてはもちろんより高いレベルを目指して日々、やっています。僕がベルナルドをやる意味、皆がそれぞれの役を演じる意味。それはすごく大きいと思います」
 
――今回、廣瀬さんはダンスという大きな壁を越えられて、役者としての幅もぐっと広がったと思います。
「まだまだ壁は高いです。この作品を大好きな人たちの熱量というものを自分が携わるようになって知って、千穐楽まで挑戦あるのみです。ベルナルドとしてステージに立つことに集中しないと緊張が勝ってしまうので、日々、その緊張とも葛藤しています」
 

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『ウエスト・サイド・ストーリー』©WSS製作委員会/撮影:田中亜紀
――千穐楽まで、どんどん進化していくイメージですね。
「いい意味で進化していきたいなと思います。ハードな舞台なので、ケガに気をつけながら、最後にやってよかったなと感じられたらいいなと思っています」
 
――この大きな経験を通して、どんな表現者になっていきたいと思っていらっしゃいますか?
「最終目標はわからないけど、たった一人でも、人の心を動かせる表現をしたいです。その積み重ねかなと思います」
 
(取材・文・撮影=松島まり乃)
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