Musical Theater Japan

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『ドリームガールズ』村川絵梨インタビュー:エフィの強さ、しなやかさを歌声に込めて

村川絵梨 大阪出身。2002年にユニット「BOYSTYLE」として歌手デビュー。2004年に映画『ロード88出会い路、四国へ』に主演。2005~2006年連続テレビ小説『風のハルカ』でヒロインをつとめる。ストレート・プレイの近作に『レオポルトシュタット』等。ミュージカルでは『next to normal』『The Last 5 Years』に出演している。© Marino Matsushima 禁無断転載

1960年代の米国音楽業界を舞台に、歌手を目指す女性たちの成功とその後を描いてトニー賞6部門を受賞、2006年にはビヨンセら出演の映画版も大ヒットした『ドリームガールズ』が、遂に日本人キャストで上演。ディーナ(望海風斗さん)、ローレル(Sara さん)と共にスターを夢見るエフィを、福原みほさんとのダブルキャストで演じるのが村川絵梨さんです。

ヒロインを演じた連続テレビ小説や大河ドラマ、映画などで活躍する一方で、『next to normal』『The Last 5 Years』等、舞台でもさまざまなキャラクターを演じてきた村川さん。本作については“いつか日本版が実現するのでは“と予期していたそうで、本作の魅力やミュージカルに対する思いなど、たっぷりお話いただきました。

【あらすじ】1960年代のNY。歌手を目指してオーディションに挑むディーナ、エフィ、ローレルの3人は、カーティスという野心的な男と出会い、彼のマネジメントでスター歌手ジェームズのバック・コーラスをつとめる。やがて「ザ・ドリームズ」としてデビューが決まるが、カーティスはずば抜けた歌唱力を持つエフィから、最も美しいディーナへとリード・ボーカルを変更。カーティスと恋仲になっていたエフィは衝撃を受け、グループを脱退する。デビューしたザ・ドリームズはスターへの階段を上ってゆくが…。

『ドリームガールズ』

 

――本作が日本版キャストで上演されると聞いて、驚かれた方も多いようです。ソウル・ミュージックにどっぷり浸った世界のお話だけに…。

「分かります(笑)。出来るの⁉︎と思われた方、いらっしゃるだろうなと思います。

でも、私はいつかこの作品は、日本でもやるんじゃないかなと思っていました。映画版を観た後、2011年頃だったと思いますが、韓国で韓国キャスト版が誕生すると聞いて、同じアジアの人が表現したらどうなるんだろう、絶対観たいと思って観に行ったんです。その時、エフィを演じていた方は華奢で小柄だったのですが、すごくパワフルだったのが印象的で。『ドリームガールズ』というのはエネルギーに満ち溢れることで成立する作品なんだな、と思いました。音楽の格好よさも映画版に引けをとらなかったし、韓国語はわからなくても、自然に涙が出てくるほど感動しました。これはきっと日本でもできる、上演されたら観に行きたいな…と思っていたら、まさかエフィを演じるご縁をいただけるとは。本当に夢のようです」

――村川さんは、本作のどんなところに惹かれますか?

「私は14歳から17歳くらいまで、グループで音楽活動をしていたことがあるので、エフィたちに共感できる部分がたくさんあります。誰がセンターになるとか、グループから外れるとか、曲のアレンジが変わる、挫折する、そういった音楽業界ならではのエピソードも一つ一つ、すごくリアルに感じられます」

――本作を観ると、音楽業界は一瞬も気が抜けない世界のようにも見えますね。

「まさに(笑)。ショービジネスですから、一瞬で関係が変わったりというのはありますよね。ましてや60年代のアメリカですから、今以上に熾烈なものがあったかもしれません。そういう部分が生々しく描かれながらも、最後には爽快な結末が待っていて、素敵な作品だなと思います」

――3人のヒロインの中で、エフィははじめからしっかりした女性に見えますね。2幕ではとある秘密をずっと抱えたまま生きてきたことがわかり、その意志の強さにも驚かされます。

「かっこいい女性だなと思います。カーティスに対しても最初からはっきりものを言えていて、相手が男性であっても対等であろうとしています。育ってきた(家庭)環境のためかもしれないし、60年代当時のアフリカ系アメリカ人として、日常的に差別を受けながらも、夢を掴もうと貪欲にもがき続けていたのかもしれません。私も音楽では挫折したり、いろいろな経験をしながらもこうして20年間、ずっと芸能界で頑張ってきて、粘り強さはあると思っているので、彼女のこうした“人生に対する貪欲さ“にはすごく共感できます。

もう一つ、エフィは情が深い女性だな、とも感じます。そのために弟や仲間たち、そして愛するカーティスにも強く出てしまう。(人間に対して)思いが強すぎて突っかかってしまうタイプなのかもしれません。

そんなエフィが、カーティスに対して(裏切られても)深い愛を叫ぶのが“And I’m telling you I’m not going”というナンバー。これがとにかく圧巻で、涙腺が崩壊するほど琴線に触れる曲なので、今回、これを私がどう歌えるかというのが、一つの課題だと思っています。心は傷ついているけれど、決してヒステリックにならず、もっと奥深い心の叫びとして歌うナンバーで、これまで舞台で演じてきたキャラクターとはちょっと違う、どっしりとしたものが必要なのかな。初めて歌稽古をした時は、“Heavy Heavy”というナンバーを歌ってから4人で喧嘩をして、さらにこの大曲を歌うという流れの大変さを痛感しました。だいぶ歌い込んできて、あとはどう、ソウルフルなものを込められるかというところまではこられたかなと思っています。2幕は2幕で、エフィが大きく変化しているので、彼女の女性としての柔らかさ、深みを歌声に込めるという課題があります。

稽古すればするほど高い壁が見えて来て、正直怖くなる瞬間もありますが(笑)、彼女の根っこにあるパッションを表現する自信はあるので、“日本人が演じるこういうエフィもありだね“と皆さんに思っていただけるよう、頑張りたいです」

――映像を含めてさまざまな経験を積まれてきた、村川さんならではの表現が期待されていると思います。

「そう思っていただけると嬉しいです。しっかり作品を伝えるという役目を背負って、お客さまに感動を届けられたらと思います」

――どんな舞台になったらいいなと思われますか?

「お客様が自然に拍手をしたくなったり、観てよかった、自分も頑張ろうと思っていただけるような舞台になるといいなと思います。いろいろなミュージカルがある中で、『ドリームガールズ』は心からそう思える、最高のエンタメだと思うので、私もこの作品が大好きという気持ちを大切に、楽しみながら取り組んでいきたいです」

『ドリームガールズ』製作発表で歌唱披露する村川さん。©Marino Matsushima 禁無断転載

 

――プロフィールのお話も少しだけ伺わせてください。村川さんは映像、舞台とさまざまなフィールドで活躍されていますが、その中でミュージカルというのは、ご自身にとってどんな場でしょうか?

「特別すぎる場ですね。観るのも好きですし、憧れが強すぎるのか、俳優としてたくさんチャレンジしたいけれど、これまでは“自分でいいのかな?”と躊躇したりすることもありました。でも、これまで出演させていただいた舞台は、幸せな思い出ばかりです。今回の『ドリームガールズ』はとりわけ大きなチャレンジになりますが、今まで見てきた夢を思い出しながら、勇気を振り絞って取り組んでいます」

――ミュージカルのどんな部分がお好きですか?

「音楽が好きなのでしょうね。日々の生活の中でもふと流れてきた音楽を耳にしただけで元気になりますし、ストレート・プレイを演じている時に、ずっとセリフが続いていてしんどさを感じていても、そこにすっと音楽が流れてくることで励まされます。音の持つ豊かさに惹かれます」

――『next to normal』日本初演では均衡を失いかけた一家の中で必死に生きる少女ナタリーを好演されました。

「大好きな作品です。難曲揃いでしたが、一つ一つがパワフルなんですよね。私自身、思春期の頃は反抗期があって自分に近い役だったので、ナタリーはすごくやりやすい役でした。
昨年の公演は客席から観ましたが、客観的にみても素晴らしい作品で、心を揺さぶられるってこういうことだな、と改めて思えました」

――昨年は代表作でもある『The Last 5 Years』再演に出演されました。一組の男女の5年間を逆の時間軸で描くため、一人芝居が並列しているような、独特の作品だったかと思います。

「ほとんどが歌で進行していく作品ですが、ただうまく歌うだけではお客様に伝わらない。ミュージカルは“伝える“ということが本当に大事だな、と改めて学ばせていただいた作品です」

――キャシーとジェイミーの5年間は別離という結末を迎えますが、それについて村川さんはどんな心持ちでしたか?

「いろいろ浮き沈みがあって、キャリア的に一番揺らぐ20代に出会って別れる男女の話なのですが、11年前に山本耕史さんと初演で共演させていただいた時は、私自身がまだ幼かったのか、ただただ、悲しさが残りました。でも昨年の公演では、ちょっと大人になったのでしょうね(笑)。この5年間について、ちゃんと自分の中で“過去“に出来そうな心持ちで終わることができました。“こんなこともあったな…“、と」

――どんな表現者を目指したいと思っていらっしゃいますか?

「彼女が出ていたら(作品が)面白くなるんじゃないかとお客さんが期待してくださるような、いろいろな顔をお見せできる役者になって行けたらいいなと思っています。これからも貪欲にチャレンジしていくつもりですが、特に舞台は振り幅がすごく大きいので、今回は全然違う!と、その都度お客様に驚いて、楽しんでいただけるような役者を目指しています」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報『ドリームガールズ』2月5~14日=東京国際フォーラム ホールC 2月20~3月5日=梅田芸術劇場メインホール 3月11日~15日=博多座 3月22日~26日=御園座  公式HP
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