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『キングアーサー』平間壮一インタビュー:恋心と忠義の狭間で

平間壮一 90年北海道生まれ。07年に『FROGS』で初舞台を踏み、『ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~』『劇団☆新感線 髑髏城の七人 Season月<上弦の月>』『ゴースト』『Indigo Tomato』『RENT』『イン・ザ・ハイツ』『The View Upstairs』『クラウディア』『ヘアスプレー』など数多くの舞台で活躍している。©Marino Matsushima 禁無断転載

間もなく開幕するフレンチ・ロック・ミュージカル『キングアーサー』。中世以来、人々を魅了し、文学やオペラ、映画など様々な形で繰り返し語られてきた「アーサー王伝説」のミュージカル版で、ランスロットを(太田基裕さんとのダブルキャストで)演じるのが、平間壮一さんです。

アーサー王に仕える騎士でありながら、その妻である王妃グィネヴィアと道ならぬ恋に落ち、ヨーロッパでは“色男”の代名詞的存在でもあるランスロットを今回、平間さんはどのようにとらえているでしょうか。22年の振り返り、23年の抱負なども含め、じっくり語っていただきました。

『キングアーサー』

 

――平間さんは、以前からアーサー王伝説に触れていらっしゃいましたか?

「名前を聞いたことがあったくらいで、今回、台本を読んで、動画配信されていた『キングアーサー』という映画を観た段階では、よくわからないところもありました。

それからいろいろ調べてみると、アーサー王伝説にはいろいろなお話があって、それぞれに結末も違うし、そもそもアーサー王という人物が実在したかどうかも確定していないそうで、そうなると(舞台化をするにあたっても)いろいろなやり方があるんだろうなと思いました」

――ランスロットは中世以来、“色男”というイメージでとらえられてきた男性ですが、今回の舞台ではどんなイメージでしょうか?

「当初ランスロットについて抱いていたのは、“人をフラットに見る人物”というイメージでした。グィネヴィアに出会った時も、王妃様扱いしなかったことで、王妃が“自分に対してこんなふうに接してくれる”と心が動いたのかな、と。でも今回のミュージカルでは、ちょっとナルシストというか、“自分かっこいい”みたいな感じかもしれません(笑)」

――カッコよさを自覚している男性、なのですね!

「自覚というか、実際“イケメン”とか“ハンサム”と言われながら登場するんです。そしてそれに対して反応するでも、言い返すわけでもないので…」

――言われ慣れてきた人生…。

「そうなんでしょうね(笑)。なかなかハードルが高いというか、難しいなというのはありますよね(笑)。そこをあまり意識しちゃうとコメディになっちゃうかなと思うので、殺陣でやられる側が大きく吹っ飛んでくれるとこちらが強く見えるのと一緒で、本気で“かっこいい”と言ってくれる人が増えればかっこよく思っていただけるかな…と思っています」

『キングアーサー』ランスロット(平間壮一)

 

――グィネヴィアに対する愛は、いわゆる“ひとめぼれ”だったのでしょうか?

「今、作っている感じではひとめぼれで、何かが起こったからといったことは関係なしに、心臓がどきどきして、これが恋なんだという感じで進んでいます。

ただ、自分の中では、あくまで“自分は陛下に仕えている”ということを第一に置きたいなと思っています。好きになってくれる王妃様に対して、注意するのも失礼なのでできないし、自分も王妃様に対して気持ちはある。でも陛下に誠実な自分でもありたい…。その葛藤を描けたら面白いと思うんです。

というのは、今回の台本ではグィネヴィアの説明があまりなくて、ただただ、アーサーが自分のことで悩んでいて寂しいから他の人に恋してしまった…ということだと、よくある話に見えてしまうかもしれなくて。なので、例えばグィネヴィアが“全て欲しい”タイプの女性だったから(ランスロットに心が傾いた)…ととらえてみたりしたら、面白いじゃないですか。メレアガンの婚約者だったけれどアーサーの妃になって、その上、ランスロットも好きになってしまう。何も欠点が無いグィネヴィアよりも、もしかしたらそういう感じで行くと面白いかもしれないなと勝手に思っています。」

――ではランスロットにとっては、この恋はちょっと災難のような部分も…?

「彼女の美しさに惹かれながらも、なんで俺はこんなことで迷っているんだという葛藤はあります。断り切れなかったんでしょうね」

――昨年の『The Last 5 Years』でも平間さんはロマンチックなラブストーリーを演じていて、恋愛を掘り下げる作品には慣れていらっしゃいますね。

「(近作の)『ヘアスプレー』でも恋愛要素があったので、最近はそういう作品が多いですね。ただ、はっきりとした理由があって好きになってきた作品が多かったので、(俳優として)台本にある以上のことを伝える仕事をしている以上、今回、ただの“ひとめぼれ”とするのは少し分かりにくいしもったいないなという感じがしています。それ以上のことは書かれていなくても、面白みを出すことができたらなと」

――『ウェストサイド・ストーリー』のトニーとマリアは、“ひとめぼれ”がよくわかる例でした。

「(『ウェストサイド・ストーリー』では)その二人の関係が(丹念に)描かれていくじゃないですか。でも本作のランスロットは、道ならぬ恋ということもあって、あまりグィネヴィアと一緒のシーンがないんです。そこが難しいんですよね」

『キングアーサー』製作発表にて。前列左が演出のオ・ルピナさん。©Marino Matsushima 禁無断転載

――アーサー王伝説のもとになっているケルト神話ではこうした三角関係の物語はいろいろあって、若い二人が“ゲッシュ”という宿命的なものによって意図せず恋に落ちるという解釈もありますが、今回の場合は…。

「アーサー王伝説を好きな方のためにはそういった部分も大事にしないといけませんが、何を大事にするのか。どこをとるかによって(自分の演技も)すごく変わるなと思っていて、(演出のオ・)ルピナさんと話しながら、最終的に何を伝えたいかが明確になってくるともう少し選びやすくなってくると思っています」

――二人の恋の結末についても様々なバージョンがあり、アーサー王伝説ファンにとっては注目の的かと思われます。

「(今回は)ランスロットにとっては意外と、落ち着く形かもしれません。彼は平常心を保とうとしている人物なので…。イメージとしては、ランスロットは(恋に)燃えて、周囲から“そんなことしちゃだめだ”と思われるような人だったけど、実際は全く逆で、周りの人たちの感情が激しい中で、ランスロットは自分もそうなりたいけどなってはいけない、と自制する感じかな」

――新たなランスロット像が誕生するのかもしれませんね。さて、先日、稽古を少し拝見しましたが、アンサンブルとメインキャストが一体化して表現しているような、エキサイティングなナンバーがありました。個人的には地球ゴージャスの『Love Bugs』のオープニングを思い出しましたが…。

「確かに! それくらい、みんなのエネルギーが出ていますよね。アンサンブルの方々もすごくパワーを出し切っていて、現場はすごい熱気です。あの表現は新しいジャンルといいますか、メインキャストの思いを皆で描いているわけではなくて、時代感というか、その時代に生きた人たちの心情、背景みたいなところのイメージを表現しているのかなと思います」

――公開稽古には登場しませんでしたが、ランスロットには“Wake Up”というビッグ・ナンバーがあり、これがどう描かれるのかも楽しみです。

「“Wake Up”は(曲調はキャッチ―でも)、実は僕的には苦しいナンバーです。陛下から聖杯探求を命じられて、もともと騎士になるためにここに来た自分としては何よりもそれを遂行したいけど、グィネヴィアが落としたハンカチーフを見つけて、(おそらくは誘拐され)危険な状態にあることを知る。聖杯を探し続けるのか、王妃を救いに行くのか、今回は迷いの歌として歌っています。自分自身に“目を覚ませ!”と言っているけれど、どちらをとったらいいのか…と。個人的には、心の底から王妃への愛に溺れていて、陛下のことなんてどうでもいいや…という感じでやりたいんですけれど(笑)、そうもいかないのが難しいところです」

――ルピナさんの演出はいかがですか?

「すごく繊細だなというイメージがあります。例えば、ランスロットは王妃と目を合わせる芝居があまりないんですよ。ずっと背中を向けていたり、言葉もあまり交わしていなくて、指先に触れるのが精いっぱいなんです」

――韓流ドラマの『冬のソナタ』を思い出しました。スキンシップはなくてもそこには愛が溢れている、という…。

「そういうふうに見えればと思います。二人でいる時間が多ければいいのだけど、そこには王様がいらっしゃることが多いので、ランスロットは“騎士”としていなければいけない。彼女への愛がどこまで伝わるだろうという不安もまだ少しありますが、きっとルピナさんの作戦ではそこが見えていらっしゃると思います」

――本作の音楽はいかがですか?

「ロックやポップスの曲調に言葉を乗せるのが難しいです。というのは、思い悩んでいるナンバーが多いから力は入りやすいのですが、書いてある音は高くて、曲調も軽やかだったりするんです」

――平間さん的には、様々な課題にチャレンジ中なのですね。

「そうですね。自分がこれまでやってきたことに寄り添いたくなってしまう自分をはねのけながら、全然違うベクトルに持っていこうと、いろいろトライしています」

――今回の『キングアーサー』、どんな舞台になったらいいなと思われますか?

「おそらく、お客様的にはすごく忙しい作品だと思います。この人の気持ちはわかるけれどこちらの気持ちもわかる、ということがたくさんあって、目まぐるしいんじゃないかな。単純に“楽しい”というより、ちょっと疲れちゃうくらい“人間の感情って忙しい”と感じられるような舞台になったらいいなと思います」

平間壮一さん。©Marino Matsushima 禁無断転載

――最近のご活躍についても少しうかがえればと思います。一つ印象的だったのが、昨年4月に(平間さんが)開催されたイベント『S×? vol.2 RADIO BOX』で、ゲストの方々と踊るとき、全員横並びで踊っていらっしゃいましたよね。こうしたイベントでは若手の方は後列にまわることが多いのに、みんなでガチで自分のダンスを踊るというのが平間さんらしく感じられました。

「(若手の人たちに対して)教えられることはあまりないし、逆に助けてもらってるので、出てくれるみんなに有難うの気持ちでしかないです。それはどの舞台をやっていても、いつもそうです」

――22年の振り返りも少しお願いできますでしょうか。まず、独特の世界観が話題を呼んだ『The View Upstairs』はいかがでしたか?

「終わってから反省点がいっぱい出てきて、またやりたいなと思っている作品です。重い作品をやる度に“人間って愚かだな”といったことを思いますが、あの作品もそうでした。新しい作品に出会う度に、人間を勉強させていただけているなと思います」

――すべてが主人公ウェスの脳内の出来事だった、という見方もできる作品ですが、ご自身はどうとらえていましたか?

「“あれは何だったんだろう”という感じで、薬で幻覚を見ていたのかもしれません。でも、何が起きたかが問題ではなくて、実際に感じたことがすべて。あれってどうだったんだろうということはそれ以上探らないで、今その感情があるということをこれから先、どうしていくのかというのが問われているのかなと思いました」

――同じことが観客にも突き付けられていたのかも…。

「そうですね。人間って、“あれってどういうことなんだろう”と振り返ることが多いと思いますが、その感覚があるなら先に、未来をどうにかしていかなくてはいけない。そんなことも感じさせる作品でしたね」

――『クラウディア』では龍の子を演じました。動きが注目されがちな役ですが、平間さんの龍の子は魂の叫びのような終盤の台詞が鮮烈でした。

「(それまで台詞がほとんどなく)“やっと喋れる~”という感じでした(笑)。
龍の子はずっと自分の意志でないところで生きてきて、神親殿(カシンデン)の考えることがすべて正しいと思ってきたのが、そうじゃなかったと知る役でした。最近、人間っておっかないな、と思うんです。人間は“これは悪い”とされていることはしないけれど、もしそれが“良い”とされていたら、普通にやっているかもしれない。
そういう意味では、22年は人間について知る作品が多かったですね。ミュージカルだって、今はこういう形式がミュージカルだと思いながら歌ったり踊ったりしているけれど、全然違うやり方があるかもしれないと思うこともあって、そういう考え方を神親殿に教わりました」

――『ヘアスプレー』ではアフリカ系アメリカ人のシーウィード役。人種差別というテーマに関わる、重要な役柄でした。

「人種差別のテーマをあえて重く問題提起するより、踊る楽しさを描いたり、いじめや、ひどい言葉を何気なく言うのはやめよう、ということを描こう、というところから(今回は)お芝居が作られていきました。そういう方向性が見えてからは、見た目を寄せるということはせず、ただただ偏見を持たずにダンスの楽しさを追求する少年として気持ちよく演じることができました。

でも(母親役の)エリアンナさんは実際に経験されてきたこともあるので、人種差別のテーマはどうしても大事にしたいとおっしゃっていて、親子がその問題にどう向き合っているのかについては、二人でめちゃくちゃ話し合いました。最終的に、僕としてはアフリカ系アメリカ人がというより、人間としてどう存在するかという感じで行きました」

――23年はどんな年にされたいですか?

「今年もミュージカルにたくさん出させていただく予定ですが、もっと歌を高めていきたいです。今、歌い方を変えようとしていて、例えば高音を出すにはこう、といったところは理解して、歌稽古でも出るようになってきたのですが、そこにお芝居が加わると、体勢だったりというのが今までやってきたものとは違うので、立ち稽古で“ああやばい、いつものやつに戻ってる”という瞬間があったりして。今まではそれすら見えなかったけれど、今は課題がわかるので、どうにかこなせるよう頑張っていきたいです。…なんて、舞台に立っていながらお話するのは変かもしれないけれど(笑)」

――皆さん、経験を積まれるなかで変化されたり、より豊かなものを掴んでいらっしゃるので、その過程を見るのも観客の楽しみだと思います。

「そうなるよう、頑張ります!」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報『キング・アーサー』2023年1月12日~2月5日=新国立劇場中劇場、2月11~12日=高崎芸術劇場 大劇場、2月24~26日=兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール、3月4~5日=刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール 公式HP

*1月12~15日の公演は中止となりました。詳しくは上記公式HPをご覧下さい。
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