Musical Theater Japan

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「心に寄り添うミュージカル」第四回東京ミュージカルフェス・トークショー(3月26日)レポート

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3月26日ミュージカル・スペシャルトークショー登壇の皆さんと、主催Musical Of Japanの角川裕明さん(後列左)

ミュージカル文化振興を目指し、例年3月26日(ミュージカルの日)前後に開催される東京ミュージカルフェス。2019年の第四回フェス「スペシャルトークショー」二日目の26日は「心に寄り添うミュージカル~ミュージカルの社会的意義」をテーマに、愛媛県東温市の「坊っちゃん劇場」、そして新作ミュージカル『いつか~one fine day』の関係者を迎えて行われました。 

坊っちゃん劇場『誓いのコイン』『よろこびのうた』

主催のMusical Of Japan角川裕明さんの挨拶に続いて、一組目のゲスト、坊っちゃん劇場の代表取締役・越智陽一さんと最近の上演作『誓いのコイン』『よろこびのうた』主演の四宮貴久さん、帆風成海さんが登壇。挨拶の後、まずは越智社長から愛媛県東温市(人口3万4千人)の450席の民営劇場「坊っちゃん劇場」創設から今までのお話をうかがいます。 

越智「当初、東京でも常設劇場は難しいのに、と心配の声もありましたが、地域の文化を発信しつつ、次の時代に繋いで行くという思いをもってスタートしたところ、劇場の意義に共感をいただき、この4月1日で13年を迎えます。

ジェームス三木先生にお書き頂いた第一作の『坊っちゃん!』はじめ、作品作りにあたっては毎回、四国と瀬戸内の歴史や文化がテーマ。横内謙介先生や高橋知伽江先生といった東京で活躍している先生に書いていただくことで、一流の舞台芸術を作り、子供たちに残していくということを目指しています」

 この劇場の特色の一つが、1作品を1年間ずつロングランするという公演形態。ブロードウェイの『王様と私』で渡辺謙さんと共演した、国際派のミュージカル俳優の四宮貴久さん、宝塚歌劇団で男役を演じ、退団して4年目という帆風成海さんにとって、坊っちゃん劇場での超・長期出演はどのようなものだったでしょうか。 

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『誓いのコイン』のナンバー2曲を歌う帆風成海さん、四宮貴久さん

帆風「代役もいないのではじめは気を張っていましたが、次第に馴染んできました。東京にいるとオーディションが入ったりと忙しいけれど、現地では他の事を考えず、役と共に生きる事ができます。また役に面白味がないとお客様は飽きてしまうと痛感し、ギャラをいただいて芝居ができることの大切さを初めて感じました。東京で頑張っていく基礎を作らせていただいたのが坊っちゃん劇場。出てみたいと思う方がいたらぜひ体験していただきたいです」

四宮「当初自分は(英語での演技が長く)日本語の台詞が上手く喋れなかったのですが、舞台を重ねる中でどうすればいいか、敏感に感じとれるようになりました。劇場のリハーサル室でも自由に練習できるし、長期だからこそ、実力を蓄えられます。食生活も充実していますよ。海の幸も太平洋と瀬戸内海に面しているので、いろんな種類が楽しめます」

帆風「冬になるとこ~んなに大きな白菜が二つで100円という破格の値段で(笑)。地方のよさを感じながら公演できます」

と現地情報もいただいたところで、演目のお話に。昨年出演した『よろこびのうた』は、国境を越えた愛とともに、親子愛も描かれた作品。40~50代の男性リピーターが多く、帆風さんは終演後のお見送りで、彼らに涙を流しながら“よかったよ”と声をかけられたのが印象的だったそう。「それまで経験のないことで、男性にとってどういうところがツボなのか、発見のあった作品でした」と振り返ります。 


そして11年に初演、今年3か月間再演されたのが『誓いのコイン』。日露戦争末期の俘虜収容所を舞台とした恋物語で、12年のロシア招聘公演では割れんばかりの拍手が起こったそう。この体験は四宮さんの人生観を変えたと言います。

四宮「日本人のアイデンティティを大切に作った作品だからこそ、ロシアの方々にも感動していただけたと感じました。ブロードウェイがナンバーワンという発想ではなく、日本人として“オンリーワン”を作っていくべきなのだと思いました」

 

ここでサプライズ・ゲストが登場! 『誓いのコイン』脚本家の高橋知伽江さん、作曲家の深沢桂子さんです。坊っちゃん劇場について、高橋さんは「劇団四季出身の私はロングランの大変さを知っているので、1年間上演と聞いた時は驚きました。行ってみると地元の方々の愛情に包まれて育てられている、すごく素敵な劇場です」、深沢さんも「6、7作品書かせていただきましたが、先日、私の書いた曲をのべ40万人の方が聴いていらっしゃると聞き、本当に関わらせていただいてよかったと思っています」と語ります。 

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『誓いのコイン』のエピソードを語る高橋知伽江さん

また『誓いのコイン』は「ロシア人捕虜と日本人看護婦の名前が刻まれた金貨が100年たって見つかったという実話がもとで、単に悲恋ではなく、この恋が市民レベルの交流にもつながり、心の国境を越える話に繋がっていくよう書き上げました」と高橋さん。 

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『誓いのコイン』楽曲披露でピアノ伴奏中の深沢桂子さん

作品への興味が高まったところで、深沢さんのピアノ伴奏にて楽曲披露。俘虜ニコライの頑なな心が、日本の人々の優しさに触れて打ち解けて行く“春の雨のように”、そして本作のテーマともいえる“心の国境を越えて”が、四宮さん、帆風さんによってハートフルに歌い上げられます。4月には新作が開幕越智社長から「劇場は松山から30分ほど。歩いてすぐの場所に地下1000メートルから湧き出る温泉もありますので、観光を兼ねてぜひお立ち寄りを」と呼びかけられ、第一部は終了しました。 

『いつか~one fine day』

 続いての登場は新作ミュージカル『いつか~one fine day~』より、藤岡正明さん、小林タカ鹿さん、和田清香さん、そして脚本・演出の板垣恭一さん。韓国映画が原作である本作ですが、どういった経緯でミュージカル化されたのかというと…。 

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稽古場の空気感そのままの『いつか~one fine day』和やかトーク

板垣「プロデューサーの宋さんから、この映画はどうかと言われて観に行ったんですが、台詞も全然ないし、はじめは“無理!”と言っていたんです(笑)。でも話しているうち“変えてもいい”と言われて、それなら、と(脚本を)書くことになりました」

 

藤岡さん演じる主人公は、保険会社に勤めるサラリーマン。妻を亡くし、しばらく休んでいた彼が仕事に復帰すると、新たな上司(小林タカ鹿さん)から、交通事故で寝たきり状態になった女性エミ(皆本麻帆さん)の示談をまとめるよう命じられ、病院に向かう…という物語です。

 

藤岡「お話をいただいて、原作映画を観た時には、“感動させようとしてるなぁ”と思えて、申し訳ないけどお断りしようと思って観ていたんです。それが1時間半ぐらいして急に“えっ”となる展開になって、これ舞台でどう表現するんだろう、と全く想像できなくて。最近、石橋を叩いて渡るようなミュージカルが多い中で、これはまさしく“可能性を見出していく作品”だと思い、出演を決めました」

 

小林「僕はストレートプレイを中心にやってきて、最近縁があってミュージカルに出演するようになりましたが、ミュージカルの台本ってストプレより薄いじゃないですか。描ける情報量が限られるイメージがあったのですが、この作品は情報がすごく詰め込まれてるなと思って、興味を持ちました。実際、稽古もやっていて楽しいです」

 

和田「板垣さんの脚本には映画では描かれてない部分が書き込まれていて、贅沢な作品だなと感じました」

 

お三方以外にもそれぞれ個性を異にする方々が並ぶ今回のキャストですが、キャスティングのポイントは?

 

板垣「主人公はきりっとした二枚目がやってもいけるし…」

藤岡「だから僕なんだな」

板垣「あるいは藤岡君みたいな人がやっても行ける、いかようにも出来る役で」(←場内、爆笑)

藤岡「そこでみんな笑うなや(笑)」

板垣「藤岡君みたいな荒くれ者でも行けると。そして人の生き死にを扱う作品でどうしても重くなるので、彼のような明るさがあると嬉しいなと思ったんです。小林さんは無駄に二枚目なわけですが(笑)、映画版でのこの役はいわゆる悪役。僕は“悪役なだけな人”というのは嫌いなので、今回の舞台版では観てのお楽しみというキャラクターになっています。和田さんは“過剰に歌のうまい人”と思っていたんですが(笑)、今回エミの母親役を考えていて、ぱっと顔が浮かんだんですよ」 

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『いつか』テーマ曲ともいえる“うつしおみ~現人”を歌う藤岡正明さん

打ち解けた空気感の中、稽古はかなりのハイスピードの中、楽しく進んでいる模様。どんな舞台に仕上がりそうでしょうか。

 

藤岡「お客様が100人いらして下さったら、100通りの“絵”であったり思いを持ち帰っていただける作品になったらいいなと思います。皆さんお若いから当てはまらないかもしれないけど…って嫌みかもしれないけど(笑)、生きていれば身近な人を失ったりとか、いろいろあるじゃないですか。特にそういう方に観て頂いて、大切な人と繋がっていただけるといいなと思います」

小林「この作品から何を感じられるかは人それぞれだと思うんです。自分が何を感じられるか、そこを楽しみに来ていただきたいですね」

和田「いろいろな作品をやってきていますが、この作品は“3.5メートルミュージカル”(身近さを感じられる作品)だと思っています。人が一歩を踏み出すための瞬間のようなものがちりばめられていて、明日をどう切り開くか、それぞれに感じ取れるミュージカルなんじゃないかなと思っています」

板垣「なぜお客様は劇場にいらっしゃるのかということを考えた時、結局(観劇は)鎮魂みたいなことではないかと思うんです。作品の中にご自分を見つける人がいるかもしれないし、お母さんや親友はあの時、こういう気持ちだったと気付くことがあるかもしれない。そのくらいには舞台は役に立つのかなという気がします。最終的にお客様が何を感じたか、どう解釈したか、ぜひ聞いてみたいです」

 

期待が高まったところで、楽曲披露。ピアノと弦楽器の優しくも心抉るような音色とともに、この世の生きにくさをそれぞれにつぶやき、嘆き、そして微かな希望にたどり着く楽曲“うつしおみ=現人”を藤岡さん、小林さん、和田さんが丁寧に歌い上げ、場内が作品世界に染め上げられました。(公演は4月11~21日迄シアタートラムにて。)

座談会「心に寄り添うミュージカル」

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俳優・演出家・劇場経営者と様々な立場から意見が交わされた座談会

さて、再び坊っちゃん劇場チームにもご登壇いただき、座談会のスタートです。まずは皆さん、これまでご覧になった中で、ご自身の心の支えになったり、生き方に影響を与えたと思える作品はありますでしょうか?

 

板垣「『レ・ミゼラブル』ですね。僕はストレートプレイ出身なのだけど、初めて『レミゼ』を観てびっくりして。赤盤・青盤のCDを買ってもう一度見に行って、凄いんだミュージカルは!と観まくるようになりました」

 

帆風「私は『ベルサイユのばら』ですね。観た後で、全員女性が演じていることを知り、人間って何にでもなれるんだと思って宝塚を目指したんです。あと、演目ではないのですが、この方凄いと思っている女優さんがいまして、『Trails』で藤岡さんとも共演されていた岡村さやかさん。歌もお芝居もお上手で、役に入ると影があるというか、人間の黒い部分を表現されていて鳥肌が立ちます。私もこうなりたいと衝撃を受けて、彼女の出る舞台は観に行っていますね」

 

四宮「僕はオペラをやりたくて東京の音大に入ったのですが、東京で初めて観たミュージカルが来日版の『ウェストサイド・ストーリー』。音楽も脚本もダンスも素晴らしく、これをやりたいと思って渡米しました。オーディションを受けて合格することが出来、この作品は僕のミュージカルの基盤になっています」

 

越智「今までにすごいなと思ったのは、四宮さんも出ていたブロードウェイの『王様と私』の、ケリー・オハラ。こういうのを素晴らしい演技というんだ、と引き込まれました。もう一つ印象に残っているのは、『誓いのコイン』をロシアに持って行ったとき、最初お客さんたちがみんな字幕を読んでいたのが、そのうちそちらは見ずに役者たちを見て涙を流していらっしゃる。ミュージカルの力ってすごいと感じました」

 

和田「自分が出演した作品では『いつか』ですが、観た中でというと、そもそも観るよりやるほうが好きで、あまりミュージカルを観に行くことがないので…」

 

小林「僕も(観た作品ではなく)自分が出演した、音楽座の『リトルプリンス』が印象に残っています。初ミュージカルだったので、苦労も含めいろいろな思い出があって…」

 

藤岡「僕も観た中ではないんですよ。職業柄、舞台を観ていると、自分がここにいたらどうやるかとか考えてしまうんですよね。自分が出た作品であれば、『ブラッド・ブラザーズ』。それまで『ミス・サイゴン』のような歌だけの作品をやっていて、お芝居に苦手意識があったんですが、『ブラッド・ブラザーズ』で出会ったグレン・ウォルフォードという演出家が演劇の楽しさを教えてくれて。あの体験があって今の自分があると思っています」

 

では、ご覧になった方から“生きる糧になった”等のリアクションを得たことはありますか?

 

板垣「あります。昨年演出した『In This House』とか、ご覧になった方からそういう声をいただいたことはありますが、どうしてもプライベートな話になってしまうので、詳しくは言えないんですよね」

 

藤岡「例えば100人お客様がいたとして、100人が100人とも感動するって、人間は一人一人感覚が違うから難しいことだと思うんです。100人にとっての80点を目指すのではなくて、たった一人でいい、その一人にとってのBest of bestを目指したいと思っています」

 

四宮「『誓いのコイン』が初演された2011年は大震災があった年で、被災地の子供たちが2000人、愛媛県に招待され、僕らの劇場にも観に来てくれました。その中で、ある生徒が帰り際に“僕は生きててよかったんだ”と言っていたと演出家から聞いて、自分たちの舞台を観て希望を持ってくれた、と思えた。忘れられない出来事です」

 

越智「震災でつらい経験をした子供たちは、芝居を観ていろいろなことを思い出して泣いていました。でも後で“勇気がわいた”“もう死ぬことは考えないようにしようと思う”という手紙をたくさんいただいて、少しでも元気になって帰ってくれたんだなと思いましたね」

 

坊っちゃん劇場は何もミュージカルの土壌のないところに誕生した劇場ですが、現地の人々のミュージカルに対する感覚は変わってきたでしょうか。

 

越智「第一作をジェームス三木さんと考えていた時、ここのお客さんは99パーセントが生の舞台を観たことが無いので、最初は誰が見ても楽しい舞台を創ろう、と笑いも涙もある楽しい内容にしたんです。今、年間8万人のお客様の中で、年100回以上ご覧になるリピーターが100人以上いるんですね。“今日はすることがないから”“暑いから来た”とか言って下さって。私たちの目標としては、20年頑張りたい。子供の頃ファンになってくれた方が、自分の子供の手を引いてきてくれるようになって初めて“ミュージカルが根付いた”と言えるのではないかと思ってやっています」

 

歌や踊りという要素が加わることで、ミュージカルという表現形態が観客により“届けやすい”と感じたことはあるでしょうか?

 

板垣「ミュージカルって、モノローグを歌い放題なんですよ。ストレートプレイの世界では、シェイクスピアの時代はモノローグがあったけれど、近代演劇は会話の中で想像してもらう。“私は今こういう気持ちだ”と歌で表現できるミュージカルは便利である一方で、お客様の想像力を奪ってしまう危険性もあるので、気をつけています」

 

小林「ストレートプレイって“間”が大切ですが、それは要するにお客様と呼吸が合ってくるかどうか。ミュージカルの場合、音楽が鳴った瞬間に空気を楽にしてくれるという作用はあると感じます」

 

四宮さんはアメリカでも活躍されていますが、現地の観客にとってミュージカルはどんな存在だと感じますか?

 

四宮「ブロードウェイも大きな産業ですが、NY以外の各地の地方劇場でも様々なミュージカルが上演されています。例えば、僕は2年前にフロリダの劇場で「Gypsy」に出演したのですが、そこでは劇場併設の若い世代を育てる養成所の公演も含め、年間約10作品を上演していました。どの公演もチケットはほぼ完売ということからも、劇場というものがたくさんの人に親しまれているということを感じます。

 

しかし日本ではなかなか地方でミュージカルということが難しい。(一極集中ではなく)全国の人にミュージカルを楽しみたいと思っていただける環境を創る。そして地方の良さを首都圏に紹介する。そういったことによってミュージカル界の活性化に繋がっていくのではないかと思っています」 

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会場エントランスのポスター

皆さんご存知のように日本は少子高齢化社会に向かっており、様々な産業が縮小してゆくことが避けられないわけですが、そんな中でもミュージカルの灯を消さず、逆に盛り上げてゆくため、どんなことが必要だと感じているでしょうか。

 

板垣「これまでミュージカルというと輸入ものが多かったけれど、それを観て感動し、僕らみたいに関わる人も増えてきて、そろそろ自分たちで作ってもいいんじゃないかという動きが生まれてきていると思います。そのいっぽうで、地方で坊っちゃん劇場のような取り組みをされている劇場もある。今回、いろいろとお話をうかがってとても嬉しく感じています」

 

和田「私も外国人を演じるばかりでなく、日本人として日本人を演じたいという思いがあるのと、チケットがもっと安くなったらいいなと思います。高いですよね。ストレートプレイだといい作品が3000円くらいで観に行けたりするので、ミュージカルももう少し行きやすくなるといいな、と」

 

藤岡「僕は自分でミュージカルを作・演出・作曲したことがあるんですが、ミュージカルって音楽が入ることでマイクが必要になったりと、お金がかかるんですよ。それでどうしてもチケット代に跳ね返ってしまう。ミュージカルとしてはめちゃくちゃ安い5500円だったんですが、共演者に“高くて売れないよ”と言われたり。でも、そこで止まるのでなく、いい作品を作り続けることでお客さんが入るようになる。それによって助成がおりたり、単価が下がることもあるかもしれない、と思うんですよね」

 

小林「坊ちゃん劇場のお話を聞いていて、長いスパンで地方にミュージカルを根付かせてゆく取り組みの素晴らしさを感じました。高齢化社会になってゆく中で、日本の各地域が元気になっていくことって絶対必要ですが、僕らのやっている芸術文化が何かの形でその力になれたらいいなとすごく思う。今はデジタル(仮想現実)全盛の時代だけど、人々がそのうち、やっぱりライブのほうが面白いと感じる時が来るんじゃないか。そうなった時に、ここにこんなにいいものがあるんだぜと言えるような場所でありたいと思います」

 

帆風「一つの作品を上演するとき、(ロングランは東京だけで)地方は数日ずつの巡業というのではなく、地方でも数か月上演する、というのもいいのではないでしょうか。東京では得られない、その土地ならではのものが生まれると思います」

 

四宮「いい作品はブロードウェイに限らないと思っています。2年前に藤岡君主演で、東京で『Trails』という作品をプロデュースしたのですが、これはブロードウェイに上がっていない作品なんですよ。でもデモテープを聴いて素晴らしい作品だと思い、コンサート版、続いてフルステージ版を上演しました。また機会があれば再演していきたいです」

 

越智「坊ちゃん劇場への出演がきっかけで、愛媛に移住してこられた俳優さんが今、7人います。彼らがずっと仕事を続けていけるよう、私どもでは上演作品の制作に加えて“アウトリーチ事業”も始めました。小作品で学校をまわったり、市民ミュージカルを年間数本作る。愛媛で舞台を産業化するということに取り組んでいるところです」

 

様々なエピソードやアイディアが飛び出したトークは、この日も予定時刻を大幅に超過。日本の各地でミュージカルが根付いてゆくこと、そして登壇者のさらなる活躍を祈りつつ、長時間お付き合い下さった観客の温かな拍手に包まれ、会は終了となりました。

 

(取材・文=松島まり乃)

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