Musical Theater Japan

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『AGATHA(アガサ)』黒羽麻璃央インタビュー:考察も楽しんでいただける、“謎の紳士”役への挑戦

黒羽麻璃央 宮城県出身。2012年にミュージカル『テニスの王子様』で俳優デビュー。以来、舞台、TVドラマ、映画と多彩に活躍。近年の主なミュージカル出演作に『ロミオ&ジュリエット』『るろうに剣心 京都編』『昭和元禄落語心中』『LUPIN』『エリザベート』等がある。©Marino Matsushima 禁無断転載


1926年。英国のミステリー作家アガサ・クリスティが、忽然と姿を消した。
多くの報道陣が現地に詰めかけるなか、11日後、彼女はホテルの一室で発見される。
アガサはこの間の記憶を失っており、世間では様々な説が飛び交うが、真相が明かされることはなかった…。

この実話をもとにしたミュージカルが、2013年に韓国で誕生。ミステリー仕立ての舞台は好評を博し、再演を重ねてきましたが、この夏、日本人キャストによって初めて日本で上演されます。

この舞台で、花總まりさん演じるアガサにそっと寄り添う謎の人物ロイを演じるのが、黒羽麻璃央さん。『ロミオ&ジュリエット』ロミオのような王道二枚目から、『エリザベート』ルキーニのような“曲者”キャラクターまで幅広く演じてきた若手演技派ですが、今回演じるロイは彼のキャリアの中でも、最大級に謎めいた人物。お話いただける範囲で、作品やロイ役の面白さ、魅力についてなど、様々に語っていただきました。

 

ミュージカル『AGATHA(アガサ)』



――今回の『AGATHA』は韓国発の作品ですが、黒羽さんは以前から韓国ミュージカルをご覧になっていたのでしょうか?

「日本でも上演されている海外ミュージカルの韓国版などは観ていますが、韓国発の作品となると、今回が初めてです」 

 

――アガサ・クリスティはミステリーの女王と呼ばれていますが、ミステリーはいかがでしょうか?

「僕は普段、特定のジャンルを観るタイプではなくて、作品として面白そうなものはなんでも観るようにしています。ミステリー的なもので言うと、古畑任三郎シリーズだったりドラマの『トリック』だったり、アニメであればコナン君(『名探偵コナン』)であったり…。結果的に、刑事物やアクションものを含めて、色々なタイプの作品に触れています」

 

――情報収集法としては、お友達のネットワークでの口コミでしょうか?

「それもありますし、SNSも参考になりますし、最近便利だなと思うのが、Netflixなどでは、「あなたが好きそうな作品」が表示されますよね。そういうものも参考にしています」

 

――アガサ・クリスティの作品については、どんなイメージがありますか? 

「学生時代に(学校で)読書の時間に読んだことがありますが、人間模様の描写がすごく面白いな…と思った記憶があります。

アガサ・クリスティに限らず、ミステリーを書いている方たちって、どれだけ脳みそが柔らかいんだろう、とも思います。柔軟な発想も必要だろうし、こことここを紐付けて…と、いろいろ考えておかないといけないじゃないですか。 殺人に至るまでのいきさつとか、内面的なものも蓄積して作り上げていくのだから、普通の小説とはまたちょっと違う思考回路を持っていらっしゃるのだなと感じます」

 

『AGATHA』製作発表にて。©Marino Matsushima 禁無断転載


――そんな中で今回の台本を読み、どんな感想を持たれましたか?

「本当に推理小説を読んでいるかのような感覚がありました。(モニター等ではなく)紙で読んでいるので、そういう感覚が強まるのかもしれませんが、まるでアガサ・クリスティ自身が書いた『アガサ』というミステリー小説を読んでいるような気分になりましたし、僕がやらせていただくロイという役について、とってもやりがいがあるなと感じました。難解な部分もあって、いったいこれをどう表現したらいいだろうと悩みました。

その悩みは実際、まだ続いているのですが(笑)、演出の末さん(末永陽一さん)や音楽監督の甲斐正人先生、歌唱指導のやまぐちあきこ先生にいろいろアドバイスをいただきながら、うまく流れるようにできたらいいなと思っているところです」

 

――ミステリーには、読みながら結末を推測する楽しみもありますね。

「僕は先に韓国版の舞台の映像を観てしまっていたので、結末は分かっていたんです。ただ、(字幕などはついていなかったので)細かいところは把握できていなかったので、改めて台本を読むことで、アガサの失踪した11日間をこういうふうに緻密に描いているんだなと、感動を覚えました」

 

――ジャンルとしてはミステリーですが、人間関係の機微を描いた作品でもありますね。

「そうですよね。アガサを取り巻く環境も大きなテーマだし、僕の役どころ自体、一種の謎になっていて…って、難しいな。この役、お話できないことが多いんですよ(笑)」

 

黒羽麻璃央さん。©Marino Matsushima 禁無断転載


――こういうお役、これまでにも演じたことはありますか?

「少しだけ近い役はやったことがありますが…、今回の方が、より(概念は)はっきりしている感じはありますが、だからといってそこを強調して演じようとは思っていません。

最初に演出の末(永)さんとお話した時には、ヴィジュアル含めて、例えばこの世ならざる感じでもいいかもしれないとおっしゃっていたのですが、今はこういう(英国紳士然とした)感じに落ち着いているので、逆にお客様に、“いったいどういうキャラクターなんだろう”と思っていただけるのではないでしょうか。

“見るからに(他の人たちと)違うじゃん”みたいな感じではなく、アガサがいなくなって不意に現れたけれど、この男は一体何なん? 彼女の過去含め、この男なんでこんなにアガサのことに詳しいんだろう、それに彼女といろんな話を初めて、どういう方向に向かっていくんだろう…と、観て下さっている人も一緒に考察したり、推測しながら観ていただけたらと思います」 

 

――このキャラクターが男性であることには、何か意味があると思われますか?

「それは考えたことが無かったけれど…確かにそこは一つのポイントですね。皆さんにも考察していただけたらと思います。僕が今の時点で思うのは、男性のほうが、このストーリーで浮かび上がるテーマを表現しやすかったりするのかな、ということです。

あと、終盤の曲を聴いていると、ロイの真意が見えてくるような気がして、見え方が変わってくるんですよね。イメージとしては…(←注・ネタバレを含むため、劇場でのお楽しみとなります)」

 

――もしそれが今回の舞台にも反映されたら、とても興味深い新解釈だと思います。

「今の僕の解釈なので、実際どうなるかはわかりません。でもすごく面白いポイントですよね。
あと、今回の作品にはいわゆる“黒い感情”が出てくるのですが、それって決して特別なものではなくて、誰の心の中にも潜んでいるものかもしれません。だからお客様にとっても、どこかで共感できる瞬間があるような気がします」

 

――起伏にとんだドラマですが、ロイ的に“特に山場だな”と感じられる箇所はありますか?

「2幕の途中から、物語がぐわっと展開していって、アガサが何か異変を感じ始めるのですが、その時、ロイはどうしているのか。役者としてもやりがいがある瞬間だと思うので、ぜひ見守っていただきたいです」

 

『AGATHA』製作発表での楽曲披露。©Marino Matsushima 禁無断転載


――製作発表では楽曲披露もされましたが、これまで出演されたフレンチ・ミュージカルやウィーン・ミュージカルとは異なる曲調ですね。

「低い音から急にカツんと上に行ったりしてレンジが広く、めちゃくちゃ難しいです。それにロイはキーが低い曲が多いので、自分の中で一つの挑戦になるかなと思っています。有難いことに甲斐先生ややまぐち先生がいろいろ教えてくださるので、目下修行しているところです」 

 

――現時点で、どんな舞台になったらいいなと思われますか。

「まだ本読み段階なのですが、きっとすごくエネルギーを使う舞台になると思います。その分、お客様には観終わった時、本当に一本のミステリー小説を読み終わったような満足を感じていただけるんじゃないかな。アガサが(ミステリアスな状況の中で)立ち向かっていく姿に勇気づけられる方も、きっといらっしゃると思います。観終わった時にぐいっと、気持ちが入るような気がします」

 

黒羽麻璃央さん。©Marino Matsushima 禁無断転載


――ご自身についても少し伺えればと思います。まず、黒羽さんはジュノン・スーパーボーイコンテストに参加され、芸能界に入られましたが、当初はどんな夢をお持ちだったのでしょうか。

「芸能界に入ったばかりの頃は、仮面ライダーをやって“月9”に出て…みたいな、ざっくりした夢を持っていました」

 

――映像でのご活躍を目指していらっしゃったのですね。

「僕は宮城県出身なのですが、地元では演劇に触れる機会があまりなくて、やっぱり役者=TVの人というイメージがありました。そして、ジュノン・スーパーボーイコンテストは出身者が仮面ライダーに出ることが多かったので、はじめは目標にしていたんです。

でも、『テニスの王子様』というミュージカルのオーディションを受けたことがきっかけでたくさん舞台をやらせていただくようになって、生の舞台の面白さに引き込まれて行きました」

 

――ご自身としては、ミュージカルとの出会いは運命だったと思われますか?

「そうですね。やればやるほどそう思いますし、自分の中でも“やっぱり舞台が好き”という思いが強いです。映像も楽しいのですが、舞台には舞台でしか得られない満足感や達成感があって、ほとんど中毒ですね。“その瞬間に完成するもの”や、大千穐楽の最後のカーテンコールの空気感って、何にも代えがたいんですよね」 

 

――黒羽さんは『るろうに剣心』『LUPIN』『エリザベート』と、3作品連続して、ダークなサイドの役をなさいました。演出の小池修一郎さんの大きな期待もあってのことだと思いますが、ご自身の中では、大きなものを得たという実感はありましたか?

「確かにヒール的なポジションは、それまであまり演じたことが無かったけれど、自分の中ではどこかで望んでいたと思います。だって人間って、お芝居の中でしか悪いことができないじゃないですか(笑)。 この仕事に限らず、人間って生きていると、人としてのモラルだとか、いろんなものに制限されて、我慢することが多いと思うんですよ。

だけどお芝居をするときは、作品の世界観の中であれば何をやってもよくて、そういう空間に放たれることの楽しさ、解放感がすごく大きいんです。なのであの3作品に関しても役を演じられる時間が、とても楽しかった記憶があります」

 

――どんな表現者を目指していらっしゃいますか?

「お芝居をやるからには、皆さんが観終わった時に、何かの感情を得ていただけるような俳優でいたいなと思います。でも、“俺は唯一無二の役者になるんだ”というような欲は正直、持っていません。結果的にそのように映るのであればいいけれど、自分からはそういうものを持たないようにしています。

その役自体をいかに魅力的で、説得力のある人物にするかということしか考えていないので、いただいた役柄一つ一つに、これからも正面から取り組んでいきたいです」

 

――今後開拓してみたいジャンルや役柄はありますか?

「(悪事を)“暴く側”に立ちたいですね。頭脳キレッキレで(笑)、シャーロック・ホームズみたいに難事件を解決する役をやってみたいです」

 

(取材・文・撮影=松島まり乃)

*無断転載を禁じます
*公演情報 ミュージカル『AGATHA』7月18日~8月2日=よみうり大手町ホール、8月15~16日=名古屋文理大学文化フォーラム、8月27~31日=森ノ宮ピロティホール、9月4~6日=キャナルシティ劇場 公式HP

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