Musical Theater Japan

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『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』彩風咲奈インタビュー:豪快さの中に繊細さを秘めた“海賊の頭領”を演じて

彩風咲奈 愛媛県出身。2007年宝塚歌劇団入団。星組公演『さくら』『シークレット・ハンター』で初舞台の後雪組に配属。21年雪組トップスターに就任し、『CITY HUNTER』『蒼穹の昴』など多彩な作品で活躍。24年『ベルサイユのばら』-フェルゼン編-で宝塚歌劇団を退団し、26年ミュージカル『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』に主演。ヘアメイク=栗原里美 ©Marino Matsushima 禁無断転載


TVドラマに始まり、多方面で展開されている『HiGH&LOW』シリーズ。その新作舞台が、間もなく開幕します。

舞台は戦国時代。龍の秘宝を求めて盗賊・海賊・山賊たちと、謎の宗教集団が死闘を繰り広げるさまが、アクションはもちろん、歌やダンスもふんだんに織り交ぜて描かれます。

その中で海賊の頭領・謝羽良彩音(じゃばら・あやね)を演じるのが、彩風咲奈さん。                                                                        宝塚歌劇団雪組トップスターとして活躍し、2024年に退団した彼女にとって、本作は退団後二作目の演劇作品となります。

シリーズは過去に宝塚歌劇団によって舞台化されたこともありますが(宙組『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』)、今回は男女共演の舞台で、物語も全く異なるもの。
華やかな要素ばかりでなく、暗い過去を背負った彩音と彼女を慕う海賊との人間ドラマも注目される舞台に、彩風さんはどう取り組んでいるでしょうか。

稽古たけなわの某日、最近のご活躍も振り返りつつ、じっくり語っていただきました。(前半は合同、後半は個別インタビュー)

 

『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』

【合同インタビュー】

――台本を読んでのご感想、本作の見どころについてお教えください。

「昨今、複雑なストーリーの作品も少なくない中で、拳と拳の闘いや、仲間の絆を描いた、どなたでもわかりやすい作品だと思います。でもその中で、胸が熱くなる瞬間、心を動かされる瞬間もしっかり描かれた作品だなと感じています。

見どころとしては、『HiGH&LOW』ならではのアクションだと思いますが、今回は戦国時代なので、ド派手な演出の立ち回りをご期待いただけると思います。また作品全体の主題歌もありますし、キャラクターそれぞれにもテーマ曲があり、音楽ジャンルは様々です。さらにはいろんな場面でそれぞれの色のダンスも展開されるので、とても面白いエンターテインメント作品になっているかなと思います」 

 

――彩風さんが演じる謝羽良彩音について教えてください。

「海賊の頭ということで、豪快で、言葉遣いも結構荒々しい、男勝りな女性ですが、ストーリーが進んでいく中で、それまで秘めてきた心の内面が引き出されて行いくという展開になっていくので、その部分は繊細に演じたいなと思っています。

ですが基本的には、自分が宝塚で、男役として経験したことがかなり活かせるお役かなと思いますので、あまり女優としてというよりは…といっても変に宝塚のエッセンスを入れすぎるつもりもありませんが…、自然と既に身についたものは、そのまま出していこうかなと思っています。

今回(のカンパニー)は本当にいろんな畑で育ったキャストの皆さんがいらっしゃるので、私としてはやはり宝塚のエッセンスを、ちらちらと入れつつ演じていきたいなと思っております」 

 

――『HiGH&LOW』シリーズについて、どのような印象をお持ちでしょうか。

「映像版の方はそれこそ“拳と拳でケリをつけようぜ”みたいな熱いイメージですが、宝塚版にはちょっとラブストーリーが含まれていますね。

前回の舞台版はやはり戦国時代が舞台で、宝塚から現役の二人が出演していましたが、男役としての出演でしたので、男性同士の物語でした。今回は私も含め、女性キャストが出演していますので、恋愛含め、女性を絡めたストーリーが織り込まれていて、(これまでとは)また違ったものになるのではないかなと思っています」 

 

――今回、楽しみなことがあれば教えてください。

「男性との殺陣が初めてなのですが、自分がちょっと斬っただけで、(相手役の)皆さんが派手にアクションしてくださったりして、気持ちいいですね(笑)。すごく自分(の殺陣)が上手になった気がします。アクション部の方ですとか、経験が豊富な方々との殺陣が楽しいですし、お客様にも楽しんでいただけるのではないかなと思っています」 

 

――キャラクターそれぞれにテーマ曲があるとのことですが、彩風さんのテーマ曲の印象はいかがでしょうか?

「私の曲はブルージーな感じといいますか、ちょっとフェイクがあったりして、ブルースっぽい曲調です。これまではミュージカル・テイストの曲が多かったので、新たなテイストへの挑戦です。

みんなで謝羽良一家の流儀を伝えるような、明るめのテイストの曲なので、そこはポップに、楽しく歌いたいなと思いますし、一家の関係性みたいなものが、ナンバーの中に見え隠れする部分もあるので、そういった面も届けていけたらなと思っています」 

 

――謝羽良一家の頭を演じていらっしゃいますが、一家のメンバー、霧生 楓役の山田健登さんや、風見鳥 拓ノ新役の川久保拓司さんの印象を教えていただけますか?

「山田健登君にはヴィジュアル撮影の時に初めて会ったのですが、まぁ可愛らしい!というのが第一印象でした。稽古に入ってからは、チームごとに席が分かれているので、よく二人で話したりもしていますが、本当に気さくに話してくれますし、これまでの健登君とは違う、海賊の楓としての荒々しさがどんどん出てきて、一緒にやっていてもすごく楽しいです。

川久保拓司さん演じる拓ノ新は謝羽良一家の中で、肩の力が抜ける担当といいますか、ちょっとコミカルな部分のある役ですが、本当にぴったりで、それが本当に拓さんなのか、拓ノ新なのか、どっちなの⁈という時があって(笑)、役者さんとして本当に素敵だなと思います。私自身、拓さんのおかげであまり力を入れずに頭として立っていられますし、助けていただいているなと感じています」 

 

――皆さんで休憩中に一緒に話したり、何か召し上がったりされているのですか?

「皆でいろいろおやつを持ってきていますが、バナナチップスを食べていたら、皆さんに突っ込まれました(笑)。意外だったみたいです」

 

――彩風さん率いる海賊チームは、小野塚勇人さん率いる盗賊チーム、笹森裕貴さん率いる山賊チームと相まみえますが、異種格闘技といいますか、畑の違う方々率いるチームとの共演はいかがですか?

「初めて立ち稽古に入った時、芝居のテイストの違いが本当に異文化交流のように感じられてびっくりしました。TVドラマも経験されている小野塚さんの自然なお芝居に対して、2.5次元を経験されている笹森さんは、見せ方の美しいお芝居をされていて、全然違って面白いなと思いました。

今後、稽古が進んでいく中で擦り合わせはあるかもしれませんが、今の段階で演出の平沼(紀久)さんからは“こういうふうにやってほしい”といったことは無いので、私もまずは自分が思うようにやってみようかなと思いながら稽古しています」 

 

――開幕に向けた意気込みをお願いいたします。

「(本作の準備が始まって以来)いろいろなところで“熱い夏になりそうです”と言ってきましたが、お稽古が始まってみて、熱いどころじゃないぞと感じています。お客様にもTシャツを着て首にタオルを巻いてきていただきたいくらいですが(笑)、本当に新しい演劇の世界を観て頂けると思います。立ち回り、歌、ダンス、お芝居と盛りだくさんで、もうどこを切り取っても…稽古場で自分が出ていないシーンを観ていても本当に面白いです。

セットも盆が回ったりして、いろいろな角度から楽しんでいただけますし、舞台上では次々にそれぞれのストーリーが展開していきますので、一回では見切れないかもしれません。ぜひいろんなサイドからのストーリーも見ていただきたいですし、シンプルにダンスや殺陣を楽しみに来ていただいても結構ですし、本当にいろんな楽しみ方ができる作品なので、一緒に熱い夏を楽しんでいただけたらと思います」 

 

『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』謝羽良彩音(彩風咲奈)


【個別インタビュー】

――今、読者プレゼント用の色紙に「try」というお言葉を書いて下さいましたが、座右の銘でしょうか?

「あんまり(座右の銘は)これ、という言葉は決めていないんです。ただ前作、今作と(宝塚を退団して)新しい環境で挑戦してきて、“とりあえずやってみよう”という気持ちなので、こう書かせていただきました」

 

――先程、笹森裕貴さんも「とりあえずやってみる」と書いて下さいました。何というカンパニーの以心伝心でしょうか…。

「すごい!まさかの…、ですね(笑)」

 

――では本題に入りますが、『HiGH&LOW』はTVドラマ、映画、宝塚など、いろんなバージョンがありますが、実際ご自身が体験されてみて、このシリーズはこういう世界観なのだなと、通底するテーマをお感じになりますか?

「誰もが心の奥底に持っている熱さみたいな感じが、共通していますよね。

もちろん時代が移り変わるうちに、世の中ではハードな暴力(描写)がどんどん制限されてきていますが、そういう表面的な部分ではなくて、心の内面の熱さとか、戦う動機といったものを、誰もがきっと意識の中に持っているというのが、共通しているのかなと私は思っています」
 
――今回、彩風さんは海賊役ですが、海賊の役を演じられたことは…?

「お芝居の中では無いです。でも宝塚のショー作品で、ちょっとストーリー仕立てになっている作品がありまして(2022年『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』)、海賊船の船長の設定で出演していたので、完全に初めてというわけではないです」

 

――おそらく海賊の立ち回りは、山賊や盗賊の立ち回りとも違うのかと思われますが、なさってみていかがでしょうか?

「殺陣をつけていただく時に、“海賊斬り”を教えていただいたのですが、足を上げて、派手に斬るんです。今までやったことのない斬り方で、すごく難しいです。

そして海賊は持っている武器が多くてですね(笑)、もちろん刀も使いますし、銃も持っています。ある種二刀流みたいな感じで、両方をいっぺんに使うのは初めてなので、結構ハードです(笑)」

 

――“賊”にも山賊、盗賊、海賊といろいろありますが、本作の謝羽良彩音はなぜ、海賊の道を選んだと思われますか?

「“何かやるならド派手に”という精神なので、海賊だったのではないでしょうか。海を旅しながら宝を奪うって、一番派手なイメージじゃないですか(笑)。 広い世界を旅するには、やっぱり海を行くのがいいし、全てを手に入れるにはやっぱり海賊だろう!という感じだったのかな」

 

(注・以降、謝羽良彩音のキャラクターの内面に触れたQ&Aが3問続きます。あまり情報を入れずに御覧になりたい方は、***で囲った段落を飛ばしてお読みいただき、観劇後にお読みください)

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――ド派手志向の彩音さんには、人間不信を自負する一面もあるようです。そのきっかけには、親による裏切りがあるようですね。

「子供時代に家族から愛されたという記憶が無いのでしょうね。愛されたいのに愛されなかったのだと思います」

 

――そういった背景があるためか、彩音は自身の右腕である楓に対して、厳しい言葉ばかり投げかけています。それは彼女の本心なのか、あるいは実は言外に“情”があるのか、興味深いポイントになりそうです。

「彩音は、楓の(彩音を慕う)気持ちに気づいてはいると思います。ですがやっぱり、(子供時代に)愛された経験が無いので、人を愛するのが怖いんだろうなと。だから楓のまっすぐな気持ちが怖くて、敢えて厳しい言葉であしらってしまうのかなと思っています」 

 

――終盤、楓と彩音が繰り広げる対話は大きなクライマックスとなりそうです。

「あそこは私も台本をいただいて読んだ時点で、涙が出そうなくらい、胸熱くなったシーンでもありますが、それを頑張って表現しようとするのではなく、あくまでその状況の中で、楓が示してくれる態度に対して心が動くということを大切にしたいと思っています。あまり自分で準備しすぎず、(ここがクライマックスと)意識せずに演じたいです」 

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――現時点で、どんな舞台になったらいいなと思われますか?

「今回はいろんなジャンルをご覧のお客様がいらしてくださると思いますが、どんな舞台を観てこられた方でも、新鮮に楽しんでいただける舞台かなと思いますので、“異文化交流”のような体験を楽しんでいただけたら嬉しいです」

 

彩風咲奈さん。©Marino Matsushima 禁無断転載

――ご自身についても少しうかがえましたら有難く存じます。宝塚を退団されて 1作目の『天使にラブ・ソングを』では、見習いのシスターが憧れるのも頷ける、芯のあるデロリス像が魅力的でしたが、ご自身の手応えはいかがでしたか?

「手応えと言えるかどうかはわかりませんが、デロリスという役を演じたことによって、自分の中で、宝塚時代には破れなかった殻が破れたような気はしています。

稽古が始まった時は私自身、デロリスを完成された人物に持っていこうとしすぎていたと思います。でも彼女は最初は、ただの売れないシンガーとして登場していて、シスターのみんなと出会って輪の中の一人になることで、人間的に成長を遂げていくという役なんですね。なので、まずは“最初からブロードウェイの舞台に立っていそう”な空気を取っ払うことから始まりました。

そしてシスター役の皆さんと心と心でお芝居をしていくうち、“自分ってこんなに、ものすごく装備をつけていたんだ”ということに気づくことができました。心の装備もそうですし、こう見えたい、こうしていなければいけない、宝塚のトップスターとしてかっこよくあらなければいけない…と勝手につけていた鎧みたいなものを、デロリスがシスターたちに打ち解けて心の殻を破れたように、取り払うことが出来たような気がしています」 

 

――宝塚では男役として様々な役柄を経験されたと思いますが、様々な男心を描いてきたことが、今後女性を演じていくにあたっても役立ちそうな予感はおありでしょうか。

「男役を演じることによって、逆に、女心をよく知ることが出来たように感じます。

なぜなら、例えば“かっこよさ”を表現するにしても、そこには“男性にはこういうふうにしてほしい”という女性の側の思いが反映されているので、女性がどう見たいのかをすごく研究していたんです。(一挙手一投足に対して)女性がどう心が動くのかを学んできたので、女優として舞台に立った時に、それが役立っているなと感じています」

 

――どんな表現者を目指していらっしゃいますか?

「役者としては本当にいろんな役をやってみたいです。例えば、これまではあまり悪い人の役をやったことがなくて、宝塚の時も、根はいい人みたいな役が多かったので、思いっきり悪い役とか、やってみたいですね(笑)」

 

――“悪人”と言えば、彩風さんは宝塚時代の『BONNIE& CLYDE』で、実在の銀行強盗を演じました。短絡的に恋人のボニーと犯罪を繰り返したクライドは、本来は共感しにくい人物ですが、彩風さんのクライドには不思議な魅力がありました。

「あらすじだけを追うと、『BONNIE& CLYDE』は単にアメリカの犯罪者を描いた話と受け止めることもできますが、私が演じる時に思っていたのは、ボニーとクライドとしては、シンプルに“青春をしていた”のかもしれなくて。出会った女の子と恋に落ち、一緒に逃げ、銀行強盗をしていくことには怖さもあるけれど、それすらもスリルだったのではないか…ということです。彼らは実際に(クライドは25歳、ボニーは23歳で没)若かったし、その若さゆえのギリギリな線で生きている感覚、お互いを激しく愛する中で生まれる感覚があったと思います。

事実だけを見ていくと衝撃的なお話ですが、演じている時は、毎日幕が降りると、すごく爽やかな気持ちになっていました。実際のボニーとクライドも、“青春している”という感覚の中にいたのかなと想像していました」

 

――そうだったのですね。
いつかなさるかもしれない、極め付きの“ラスボス”含め(笑)、これから様々な彩風さんに出会えそうですね。

「これまでは“男役”というものを通して役を演じてきましたが、今はそこを通らず、いきなり役に飛び込んでいけるので、この自由な道がすごく楽しいです。

前回のデロリスと今回の彩音は全然違う役ですし、次の作品も全然違うものになると思いますので、自分がやってみたいと思うものに出会えたら、とにかく飛び込んでいきたいなと思います。自分のやったことのないものに挑戦する楽しさをすごく感じているので、これからもいろいろチャレンジしていきたいです」

 

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報 『HiGH&LOW THE 戦国 外伝』7月15~30日=東京建物Brillia HALL、8月7~9日=梅田芸術劇場メインホール、8月14~16日=御園座 公式HP

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