Musical Theater Japan

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『ALTAR BOYZ』大音智海&若松渓太インタビュー:“熱狂LIVE”ミュージカルの奥深い魅力

大音智海 千葉県出身。大学卒業後、ミュージカル、ストレートプレイを中心に活躍。近作に『キンキーブーツ』『ムーラン・ルージュ!』『ジャージー・ボーイズ』『マイ・フェア・レディ』『アリージャンス~忠誠~』等がある。 若松渓太 長崎県出身。大学在学中に『レ・ミゼラブル』オーディションに合格。『ジャージー・ボーイズ』『アルジャーノンに花束を』『雲母紙鳶』『ハムレット』等の舞台で活躍している。©Marino Matsushima 禁無断転載


5人組のボーイズ・バンドが、渾身のLIVEを通して、迷える子羊たちの魂を救済する…。 

ライブの臨場感と芝居の見応えが同居するミュージカルとして、2004年にNYで初演、日本でも2009年以来、上演を重ねてきた『ALTAR BOYZ』がこの冬、9演目に突入。華やかな3組のキャストのうち、それぞれチーム「GOLD」、チーム「SPARK」でマーク役を演じるのが大音智海さん、若松渓太さんです。 

今夏には『ジャージー・ボーイズ』で共演し、熱い夏を駆け抜けた二人。『ALTAR BOYZ』では組違いで同じ役を演じ、年末の「合同スペシャル公演」で、再び顔を合わせる予定です。稽古序盤の某日、作品の魅力から今後のビジョンまでを、終始楽しく、たっぷりお話いただきました。 

 

『ALTAR BOYZ』


「ミュージカル史において、様々な意味で
重要な位置にある作品なんです」

 

――読者プレゼント用に色紙に“ポジティブ・フレーズ”を書いていただきましたが、若松さんのメッセージは…? 

 

若松渓太(以下・若松)「“しあわせは みつけるものだよ~”と書きました。僕自身、そう思って日々生きているので。ささいなことにも幸せを感じるようにしています」 

大音智海(以下・大音)「僕は“まだやれることはある”」 

若松「おお~」 

大音「今年やっと『ジャージー・ボーイズ』でフランキー・ヴァリの夢が叶ったのですが、9年がかりだったんです。オーディションを受けさせていただくところにも立てない年月が続いたので、そのために何が出来るだろうと思って、YouTubeで(フランキーばりに)高音で歌ってみたり、(物語の舞台である)ニュージャージーに行って、イタリア移民街のど真ん中で『シェリー』を歌ったり。 

そんな中、たくさんの方々のお力添えのお陰で、あのニュー・ジェネレーション・チームが発案されました。 

どんなに難しい状況でも、常に“まだやれることはある”という気持ちでいることは大事だな、と思っています」 

 

――そうだったのですね。後ほどまた『ジャージー・ボーイズ』のお話をうかがいますが、まずは『ALTAR BOYZ』について。“altar boy”といえば、礼拝儀式で司祭や神父を助ける少年のことなので、もしかしてキリスト教の知識がないとわからない作品かな?と心配される方もいらっしゃるかもしれません。 

 

若松「確かに、キリスト教の教えを広めるような台詞もありますが、設定としてバックストリート・ボーイズのようなボーイズ・バンドのツアーを模しているので、想像以上にポップに楽しんでいただける作品だと思います。 

あまり知らないアーティストのライブに行ってみたら、すっかり没入してしまった!みたいな体験ができる作品じゃないかな」  

大音「僕は前回、合同公演に二日出演して、本格的には今回が初参加なので、皆さんに追いつこうといろいろ調べているところなのですが、この作品って、ミュージカル史において最近多くなってきた、ミュージカルとポップスが組み合わさってる作品…例えば『ムーラン・ルージュ!』『ジャージー・ボーイズ』『キンキーブーツ』…こういう作品群の原点に位置しているんです。 

僕自身、この3作品はじめ、“ポップス・ミュージカル”に出会うことが多かったので、その原点のような作品にしっかり携われるのが、ものすごく嬉しいです。 

宗教とミュージカルという意味では、『ジーザス・クライスト・スーパースター』の系譜を思いっきり継いでいますよね。絶妙に宗教をいじっていて、ちょっと笑いにしているという点では、『ブック・オブ・モルモン』に影響を与えた作品ですし、さらに、全編ライブという意味では、『SIX』に受け継がれるんですよ。  

ミュージカル・ファンからしたら、キリスト教の設定以前に、大好きなミュージカルの橋渡し的な、革命期の作品なので、そういう目線で見るとものすごく面白いんじゃないかなと思うし、僕らにとっても演じ甲斐のある作品です」 

 

――ミュージカル・ファンであれば“おさえておくべき作品”なのですね。 

 

大音「そう思います。 アイドル推しミュージカルみたいに聞こえるかもしれないけれど、実際に観てみると、ミュージカル・ファンにはたまらない作品だと思います」 

 

大音智海さん、若松渓太さん。©Marino Matsushima 禁無断転載


――日本版の演出は玉野和紀さん。『CLUB SEVEN』シリーズでも知られる屈指のエンターテイナーの演出はいかがですか? 

 

若松「オフ・ブロードウェイ版との大きな違いが、ダンスの多さ。玉野さんがこの作品を現地で観た時、この音楽で踊らないなんて!と思って、振りがたくさんついたそうです」 

大音「オフ・ブロードウェイ版って、あまり踊ってないよね」 

若松「踊らないんですよ。バックストリート・ボーイズとかのライブでも、僕らのように踊り狂ったりしてないですから」 

大音「そうなんだ」 

若松「ボーカル・グループ的な側面が強くて、ここまで全曲を踊り狂っているってことはないんですよ。そこに大きな違いを感じますし、踊りが入ることによって、より立体的に見える部分もあります。  

でも今回の出演にあたって、ボーイ・バンドの歴史のドキュメンタリーとかを見てみたら、そこに出てくるボーイズ・グループ的な振付って、日本版の振付にも取り入れられているんです。今まで、これはどういう意味の振付なんだろうと思っていたところが、歴史を知ることで腑に落ちたりもしたので、ミュージカルが好きな人はもちろん、バックストリート・ボーイズの頃の音楽が好きな方にはたまらないんじゃないかな。 楽譜にも“バックストリート・ボーイズ・テンポ“と書いてあったりするんですよ」 

 

――振付はかなり細かく、フォーメーションもよく変わっていますが、もしかして覚えるのは大変でしょうか? 

 

大音「大変です!しかも僕は、既に何度も出演しているメンバーの中に混ざるので、とにかくついていかなきゃと必死です(笑)」 

若松「僕も初めてGOLDチームでアブラハムをやった時は、僕一人だけ新人だったのに、稽古はそこそこのスピードで進んでいて…」 

大音「速いよね、この作品(笑)」 

若松「振りも多ければセリフも多い作品で、本当にやることがいっぱいでした。あと、2023年公演の時には、GOLDとSPARK、どちらにも出させていただいて、頭の中の記憶がごちゃごちゃしていた部分があったので、一人で記憶を整理しながら練習した上で今回、のぞんでいます。チームによって振付も立ち位置も違うので…」 

 

――それはなにゆえに? 

 

若松「お客様が複数のチームを観る時、いろいろな楽しみ方が出来るからだと思います」 

大音「彼は2023年公演では2チームを行き来して、違う振付と立ち位置を、昼公演ではAバージョン、夜公演ではBバージョン…と、すごいことになってました」 

若松「頭って本当にぐちゃぐちゃになるもので(笑)。どうやって出来たのか、今となっては思い出せないです」 

 

――間違えたりは? 

 

若松「一度大きいのがありました。本編の最後にメドレーのコーナーがあるのですが、ある時、なんでみんな歌わないんだろうと思ってたら自分の曲だった…ということがあって、なんでみんなこっち見てるんだろう…僕の曲だ‼となって、途中から歌いました(笑)。 

でも前回は本当にそれぞれのチームの皆さんに支えていただいたので、今年は僕もチームに貢献できるよう、落ち着きながらやっていけたらいいなと思っています」  

 

――本作ではアドリブもお楽しみの一つです。 

 

大音「前回、僕は皆さん初めましての方ばかり。アドリブとかおふざけって、仲良くないと出来ないものなので、まず実践したのが、誰よりも早く現場に入って、全員と雑談することでした。とにかく仲良くなろうと、みんなの顔と名前を覚えて話しかけました。 

その時、僕は『ムーラン・ルージュ!』が終わったばかりで、前代未聞の“丸坊主”のアブラハムで。『ALTAR BOYZ』はアイドルなので、みんな髪の毛を遊ばせているんだけど、僕は遊ばせる毛が 1本もなく(笑)。それをSPARKのみんながいじってくれて、お客さんも爆笑してくれたんです。で、次に登場する時は誰かに訳の分からない鬘をかぶらされて、そのまま出て会場がどよめいて。なんか面白いやついる、みたいな感じで受け入れてくれたのが嬉しかったです」 

 

――今回、お二人が演じるマークはどんなキャラクターでしょうか?  

 

大音「僕のマークのイメージは、まさに彼(若松さん)です。可愛くて、みんなから愛されてて、ちょっとギャル味もあって…みたいな。すごく楽しい役としてイメージしていたんですが、改めて台本を読んでみると、やっぱりこの作品、それだけじゃないよなと。 オフ・ブロードウェイ上演記録を持っているとてつもないミュージカルなので、ちゃんと読み込むと、マイノリティが持つ痛み、苦しみも描かれていて、それを最初に担う役がマークだと思っています。前回演じたアブラハムはユダヤ人で、キリスト教グループの中で唯一のユダヤ人という分かりやすいマイノリティだったけれど、マークはジェンダー的なマイノリティです。  

あともう一つ、見過ごしちゃいけないなと思っているのが、彼だけカトリックであるという点。アメリカではプロテスタントの方がマジョリティということで、マークはカトリック教徒の方の寂しさや悩みも体現する役だと思っています。 

それこそ僕は今回、初参加の転校生。ちょっと異質な人間として参加するので、自分の中にある“みんなと馴染めるかな”という不安さえ、役として昇華していけたら、僕にしかできないマークが演じられるんじゃないかなと思っています」  

若松「あー、全部喋られちゃった(笑)。 

僕は今、ツアーをしてきたグループの中で、マイノリティの人間がどういうふうな生活をして、どう思っていたんだろうということを考えています。 

どの宗教であっても、どういう性的指向であっても、一人だけ何かが違うと、そのグループの中でちょっとした肩身の狭さがあるんじゃないかな。そういう日々を想像しながら役を作っていきたいなと思っています。 

『ALTAR BOYZ』は、ツアーをしてきてこの日が最終公演という設定なので、そこまで辿ってきた道のりの中で、互いをどう思ってきたのかを思い描きながら稽古していますが、僕はマークを“被害者”にはしない、ということを、前回公演から大切にしているつもりです。 

マークの見せ場は、涙してくださる方もいるほど素敵なシーンですが、“かわいそう”とか“健気だな”というところに落ち着かせるのではなく、皆さんに自分事としてとらえていただいたり、皆さんの心の隙間に入っていって、一緒に持ち上がっていけるようなシーンにできたら。ワールドツアーができる耐久度のある、強くてかわいい人物像にしたいです」  

 

――ちなみに、前回演じたアブラハムはどんなキャラクターでしたか? 

 

若松「アブラハムはグループの作詞をしているという役割があったので、自分が全曲の作詞をしているつもりで演じました。マークが歌う『EPIPHANY』という曲も、おそらくアブラハムが歌詞を書いています。彼がそれぞれのメンバーをどう見ているかが歌詞に反映されていると思うので、自分が彼らをどう見ているか、考えながら演じました」 

 

大音智海さん、若松渓太さん。©Marino Matsushima 禁無断転載


――キリスト教関連の豆知識で、知っているとより楽しめることはありますか? 

 

大音「カトリックとプロテスタントについて調べてみたら、カトリックって元々本流で、伝統美や儀式、儀礼を大切にしているのに対して、プロテスタントでは"儀式より内面的思考が大事" という考え方で、形式とか儀礼とかを省くことができるそうなんです。 

ですが『ALTAR BOYZ』は、メンバーにプロテスタントが多いにも関わらず、ミサやお祈りなどの他に、伝統的な要素がいろいろ出てくるんですよ。 

なぜそうなのかを考えてみると、マークって、このバンドの振付師なんですよね。カトリックの彼がバンドの“形”を司っているので、儀礼的な要素が少なからず出てくるのではないかと考えています。 

一方で、マークはこのライブを通して、“他人からどう見えるかではなく、どう自分を愛せるかが大事だ”という考えに行きつきます。この、他人からの見え方ではなく、神と自分との関係性を重視するのは、プロテスタント的な考え方だった気がします。ということは、カトリックのマークが、プロテスタント的な考え方を自分の中に取り入れ、成長していく物語ととらえることもできるのかな、とか色々考えています。 

そう思って観てみると、ソロの『EPIPHANY』にしても、彼は柔軟性を手に入れ、自分を縛っていたものから解放されていくんだなと、さらに興味深く響くと思います。本当によく出来たミュージカルなんですよね」 

 

――現時点ではまだお稽古序盤とのことですが、GOLDとSPARKチーム、それぞれどんなカラーになりそうでしょうか?  

 

大音「GOLDチームは、『ジャージー・ボーイズ』の経験者が3人いますし、他の 2人もいろんなミュージカルで活躍されている方なので、ちょっとしたアカペラでも、ものすごくハーモニーが綺麗です。今回の5人で、“過去一のハーモニー感”を狙いたいなと思っています。 

あと、出演者たちの関係性ってそのまま舞台に出るものなのですが、今回は全員が昔からの知り合いなので、これまでの時間で培ってきたものをバンと出せる、唯一無二のチームになれたらいいなぁと思っています」  

若松「SPARKチームは2019年公演で誕生して以来、続投メンバーと初参加のメンバーが混在していたのですが、今回は前回と全く同じメンバーというのがすごく有難いです。お客様の中にはそれぞれに、あの時のSPARKが好きだったという印象があると思いますが、今回のSPARK最高!と思っていただけるように頑張りたいなと思っています」  

 

――2025年の『ALTAR BOYZ』、どんな舞台になったらいいなと思われますか? 

 

大音「自分が入る意味をしっかり作っていきたいです。新参者として、僕はみんなのように遊んだりはそこまでできないかもしれないけど、だからこそ、いろいろなものを削いで、本作の根幹の部分を担っていけたら。それによってこれまで何度も本作を観てきた方にも、『ALTAR』ってこういう話だったんだと新たに発見していただけるよう、新鮮な公演に出来たらいいなと思っています。 

これはまだはっきりとは言えないのですが、今回、今までのアルターではあまりなかった、とある曲のキーを変える試みがあるかもしれなくて、そのあたりも“どの曲だろう”と楽しみにしていただけたらなと思っています」  

若松「前回は2チームに出演して、いろんなことに挑戦させていただきましたし、回数的にも他の方の倍やっているので、いろんな記憶があるのですが、いい意味でそれを一度手放して、僕も初めてくらいの気持ちで、一から丁寧に作っていこうと思っています。前回御覧いただいた方にも、新鮮に見ていただけるような形でお届け出来ればと思っていますし、僕自身本当にSPARKチームが大好きなので、今年また皆で出来ることに感謝しながら頑張りたいと思います」 

 

――お二人は『ジャージー・ボーイズ』でも共演されていた旧知の仲。お互いをどんな俳優ととらえていらっしゃいますか?  

 

若松「彼はいい意味で、計算の人です。計算というと聞こえは悪いかもしれないけど、自分が求めるゴールに向かって積み上げていく、それこそフランキー・ヴァリを演じるために、何をどうやっていったらいいのかを、外への働きかけも含めて、着実に積み上げていく人だなと思っているので、それがマーク役にどう反映されて、どんなマークになるのかがとても楽しみです」 

大音「渓太はいい意味で、自分のワールドを持っている人です。前回の『ジャージー・ボーイズ』の時、僕が“今日お客さんに笑ってもらえるかな”みたいなことを(開演前に)言ったら、“僕はそんなこと考えないでやってるよー”って。すごく心が強いというか、表現に対する自信があって、いい意味で周りに影響されないんです。だから毎回、彼のジョーイを見るのが楽しみでした。 

あと、『ALTAR』では特に必要な“柔軟性”や、コメント力とかがとてつもなく強いんですよ。  

先程お話した懺悔コーナーは、本当に現場でお客様からその日いただいた手紙を初めて読むわけですが、その時の処理能力が尋常じゃないし、スピードが速い。 打ち返す速度が、まるで脊髄でアンサーしている感じです」 

若松「確かに、懺悔コーナーの時は脊髄で喋ってます(笑)」 

大音「しかもそれが面白いんです。本作は彼のその特殊能力が存分に発揮されるステージなので、若松渓太を楽しみたいなら『ALTAR BOYZ』だろう!とさえ思います。合同公演で会うのが楽しみでしょうがないです」  

若松「すっごく楽しみです!」 

 

大音智海さん、若松渓太さん。©Marino Matsushima 禁無断転載


――プロフィールについても少しうかがえればと思います。若松さんは洗足学園音楽大学ミュージカルコースのご出身なのですね。 

 

若松「僕は(ミュージカルに関して)ずぶの素人として大学に入りました」 

 

――ずぶの素人でも入れるのですか? 

 

若松「入れます! もしかしたらちょっとだけ歌が得意だったかもしれないけれど、本当にバタバタと準備してずぶの素人で入学して、四年生の時にはもう『レ・ミゼラブル』に出ていました」 

大音「凄いよね…」 

若松「だから本当に育てていただいたというか、洗足に入ってなかったら、そういうことにはならなかったんじゃないかと思っています。学内公演のために、大学がブロードウェイの舞台の版権を買ってくれたり、そういう機会もすごくあって、さっき彼が言ってくれた処理能力とか、地に足をつけて舞台に立つというところは、大学で培ったことなのかなと思っています」 

大音「でも在学中に『レミゼ』って、スペシャルだよ、君は」 

若松「そんなことないです。ある程度は運で、それを回していただいたのはやっぱり大学だったなと思っています」 

 

――ダンスも在学中の数年で踊れるように? 

 

若松「そんなことないです。『レミゼ』はほとんどダンスのない演目で、ダンスに関してはやっぱり『ALTAR BOYZ』の経験がとっても大きかったです。キャストが五人しかいなくてずっと踊らなきゃいけないので、ダンスをどう見せたらいいのか、この作品に出たことですごく向上したような気がします」 

 

――目の前の若松さんは穏やかで、どちらかと言えば奥ゆかしい方ですが、『ジャージ―』のジョーイ役では、全く違うキャラクターでしたね。 

 

若松「舞台上で起こることは、その役がやっていることなので…という距離感です。僕、稽古場が苦手で、いろいろな人が目の前にいて、蛍光灯の下でワーって演じることに気後れしてしまったりするのですが、そういう時に“これはこの役がやっていることだから”と思うことによって、自分を解放できたりするので、確かに舞台上と実際の印象が違うことはあるかもしれないですね」  

 

――大音さんは最近、NYでジョン・ロイド・ヤングさん(注・『ジャージー・ボーイズ』オリジナルキャスト)と共演されたのですよね。 

 

大音「そうなんです。もともと、僕はシンプルにジョンのライブを見に行く予定だったのですが、ジョンの好意でステージに立つことに急遽なりました。 

NYに行って急遽、ビリー・ジョエルの後ろで叩いてたドラマーさんとか、歴史を作ってきた一流の方々と一緒にリハをしまして、54 BELOWという、レア・サロンガさんとか、アーロン・トヴェイトさんとか、そうそうたるスターたちが立ってきたステージに立って、“日本のフランキー・ヴァリ”と紹介されて、お客さんに“20年観てきて、あなたはジョンの次にいいフランキーだ”と言ってもらえて…。ブロードウェイの舞台に立つなんて、全ミュージカル俳優の夢だと思いますが、実際にはビザだったり、永住権、国籍が必要という中で、ゲスト出演という形で立つことができて、人生でこんなことある?という旅になりました」 

若松「映画みたい!」 

 

――現時点でのビジョン、今後こういう表現者になっていきたいなというものはありますか?  

 

若松「先程色紙に書いた通り、幸せは見つけるものだと思っているので、その時その時の…演者としてだけでなく、人として、豊かである方を選択しながら幸せを見つけて、僕からも幸せをお渡しできるような人生を歩んでいけたらいいなと思っています。 ふわっとしていてすみません」 

大音「素敵だよー」  

若松「いい意味で、お仕事として皆さんにお届けしますという気持ちで、一つ一つの作品に本当に一生懸命取り組みたいです。俳優として大きくなるぞというよりは、一つ一つ着実に、頂いたものを形にしてお届けするということに注力したいです。 

やってみたいものとしては、僕は『レ・ミゼラブル』という重い作品からスタートして、『ALTAR BOYZ』でもマークやアブラハムという、ちょっと重い部分のある役をやっていたので、ひたすら底抜けハッピーなコメディで、ポンコツな役をやってみたいです(笑)」 

大音「僕の大きな目標の一つが、日本のミュージカル界を代表する俳優になることです。 

ミュージカルってまだまだ、マイナーだと思うんですね。例えば映画の『国宝』とか『シン・ゴジラ』であれば、誰に聞いても“聞いたことある”と答えると思うけれど、日本で何年もやっている『ジャージー・ボーイズ』や『ALTAR BOYZ』でさえ知らない人も少なくない。ミュージカル自体見たことないという人もいらっしゃるでしょう。 

だからミュージカルをもっともっとメジャーなものにしていくためには、誰かがやってくれるよ、いつか待ってたら世界は変わるよではなく、自分から動くしかない。そして発信力を持つために、自分が役者として力を持つしかない。フランキー・ヴァリという夢は叶ったけど、これからもいろんな役をやっていきたいです。フランキーとして、成長していく人間を演じる機会をいただきましたので、まだ見ぬ魅力的な作品の中心的な役もどんどん演じながら、ミュージカルの魅力を伝えていきたいなと思っています」  

 

(取材・文・撮影=松島まり乃) 

*無断転載を禁じます 

*公演情報『ALTAR BOYZ』12月5~18日=I’M A SHOW (アイマショウ)※【Team GOLD】・【Team SPARK】・【Team SAPPHIRE】の3チーム制で上演。 
合同スペシャル公演 12月27~28日=有楽町よみうりホール 公式HP 

*大音智海さん、若松渓太さんのポジティブ・フレーズ入りサイン色紙をプレゼント致します。詳しくはこちらへ。