Musical Theater Japan

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宮沢賢治×アート×ミュージカルの幸福な出会い。『真昼の星めぐり』脚本演出・鈴木ひがし、出演・佐々木亜美、冨樫美羽インタビュー

わらび座『真昼の星めぐり』撮影:コンドウダイスケ


それぞれに悩みを抱えながら生きる二人の女子高生が、ある日突然現れたドラネコにいざなわれ、“イーハトーブ”という名の不思議な世界へ。
川底に生きるカニの兄弟、黙々と杉の世話をする青年など、さまざまな動物や人間たちと出会うなかで、少女たちが見出すものとは…。

秋田に拠点を置き、オリジナル・ミュージカルを発信し続けてきた“わらび座”と、知的障がいアーティストたちと新たな文化創造をめざしてきた“ヘラルボニー”がタッグを組み、宮沢賢治の作品世界をモチーフとしたミュージカルがこの夏、誕生。東北各県でのツアーを経て、10月には東京、そして12月には大阪での上演を予定しています。

 

『真昼の星めぐり』


宮沢賢治の世界にぴったりの、カラフルでイマジネーションをくすぐるヘラルボニー提供のアートに包まれた舞台。リアルな悩みを抱えた女子高生たちの自分探しの物語(脚本・徳野有美さん、鈴木ひがしさん)。日本の郷土文化を研究してきたわらび座ならではの、民舞を織り交ぜたコンテンポラリー・ダンス。耳なじみのいい音楽。そして地に足のついた俳優たちの確かな演技。

さまざまな要素が相乗効果を上げるなかで、最も特徴的と言えるのが、観客それぞれに光る玉を膝の上で抱えながら鑑賞する、という“没入型演劇”の趣向でしょう。ボールから放たれる光は場面ごとに自動的に色が変わり、客席をさまざまな色に染め上げます。

まるで主人公が旅する“宮沢賢治ワールド”の一部になったような気分を味わえる本作は、どのように生まれたのでしょうか。直近では『リトル・ゾンビガール~ノノとショウと秘密の森』の演出を手掛け、本作では脚本・演出を担う鈴木ひがしさん、そして本作の主人公である“あおい”と“めぐる”を演じる佐々木亜美さん、冨樫美羽さんに、たっぷりお話をうかがいました。

 

脚本演出・鈴木ひがしインタビュー:
(宮沢)賢治さんの存在を感じながら、皆で創り上げた舞台

 

鈴木ひがし 東京都出身。日本大学芸術学部文芸学科卒業。東宝株式会社演劇部演出部所属。2007~2013年『レ・ミゼラブル』(オリジナル演出版)ではジョン・ケアード氏から託されて日本版演出代行をつとめ、新演出版でも引き続き演出助手として参加。自身の演出作品に『ももクロ一座特別公演』(明治座)『リトル・ゾンビガール』(日生劇場)『ジュリアおたあ』(わらび座)等がある。 🄫Marino Matsushima 禁無断転載


――鈴木さんがわらび座で演出をされるのは2作目とのことですが、このカンパニーをどうとらえていらっしゃいますか?

「しっかりと構築して舞台を創って行くスタイルが、とても真摯な劇団だと感じます。商業演劇とは異なる丁寧さ、温かみがあります。おそらく彼らの普段の生活、そこで培われる関係性にもよるのでしょうね。秋田を拠点に活動している彼らは、東京の1回限りのプロデュース公演のようなチームでは出来ないような表現を期待以上にやってくれています」

 

――本作には様々な要素がありますが、どのように一つの作品にまとめていったのでしょうか?

「わらび座さんからのオーダーは、まず宮沢賢治さんの作品何点かを盛り込みながら、イーハトーブの世界を表現してほしい、というものでした。

そしてヘラルボニーの知的障がい者アートを使いたいということと、光るボールを使いたいということもありました。

それらを念頭に、どういう話にするかというのを、脚本家の徳野さんや制作の方たちと話し合って、プロットを何十個も作り、今の形に辿り着きました」

 

『真昼の星めぐり』より、「やまなし」の世界。撮影:コンドウダイスケ

 

――宮沢賢治と言えばやはり『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』といったところが有名ですが、今回は敢えてそれら以外の作品がモチーフになっていますね。

「宮沢賢治の作品は広く読まれていて、お好きな方は本当に思い入れがあると思うので、それを壊したくなかったんです。

特に『銀河鉄道の夜』は読者それぞれに(イメージとして)強烈なものがあると思うので、違う要素を入れ込んでしまうと作品が壊れてしまう。主人公ではなく、行商の男・鳥捕りや車掌のようなサブキャラなら本作に登場させてもいいかな?と考えたりもしましたが、複雑な話になってしまうと思い、やはり(『銀河鉄道の夜』には)敢えて手を出さないようにしました。

あと、わらび座さんの方から、今までと違う視点から見た世界という意味合いで、“クラムボン”で有名な『やまなし』をやってみたいというお話もありました。(注・小さな谷川の底で二匹の蟹の子たちが語らう物語。“クラムボン”という謎の造語が頻出し、これが何を指すのか、諸説あるようです)

川底から見た世界観を表現しながら、あおい達が何かを感じている姿を描く、そういう流れであれば入れ込みやすいかなと考えました。

 

『真昼の星めぐり』より、『虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)』の世界。撮影:コンドウダイスケ


次に『虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)』、これは虔十という知的障がいのある人が、700本の杉を植え、それが人々にどんな影響を与えたかという話で、今回、知的障がい者アートを使っていることとリンクさせたいという思いもあって採用しました。

そして『どんぐりと山猫』。(一郎少年が山猫に乞われ、どんぐりたちの裁判に参加する物語。)私が一番偉いと主張しあうどんぐりたちに、一郎が“一番バカと呼ばれる人が一番偉いんだ”と言って諍いをおさめる、これをもう一つのテーマとしようと思いました。本作では、イーハトーブの世界に迷い込む主人公の一人で、いつも学年一位を目指している高校生“あおい”が、この場面に迷い込み、一郎の台詞に衝撃を受けるという構成になっています。

 

『真昼の星めぐり』より、「どんぐりと山猫」の世界。©Marino Matsushima 禁無断転載


宮沢賢治の作品の解釈はいろいろあるかと思いますが、僕らは今回、『どんぐりと山猫』では、どんぐりたちが山猫裁判長を慕っていて、“僕が一番山猫さんに愛されているんだ”ということを主張し合っている、という裏設定を作っていました。

それによって、“そうじゃないよ。愛されようとするのではなく、愛することをしなさい。俺が俺がと前に出るのではなく、一番後ろにまわって誰かをしっかりサポートしたり、寄り添うのが“愛”なのでは”というメッセージを伝えられるのではないかと考えました。

本作の主人公、あおいとめぐるは、こんなふうにどこか不思議なイーハトーブの世界を旅するのだけど、今回気をつけたのは、主人公が二人いると、結論として同じ道を歩き出す、つまり同調して同じ答えを導きだすことをしがちだけど、それはさせたくないなと。

それぞれが何かを発見して、自分の意思で“一番バカ”の象徴であるどんぐりの帽子をかぶり、自分の意思で、舞台奥にある早池峰山(北上山地の最高峰)をモチーフにした山を登っていく。それぞれ違う山道を選んで上り詰めた、その山頂には、賢治さんが探し求めていた、“本当の幸い”があるのではないか…という物語にしています」

 

『真昼の星めぐり』より。©Marino Matsushima 禁無断転載


――主人公を、小学生でもなく、大人でもない“女子高生”としたのはどんな理由からでしょうか。

「“おぎゃあ”と生まれ、僕たちは人生というドラマをたくさんの喜怒哀楽を感じながら成長していきます。高校生くらいになると、あおいやめぐるの年頃は、これまでの自分、今の自分、これからの自分と、「人生」を考え悩むことも多いでしょう。“おぎゃあ”と生まれて“生きる”ということに小学生でもなく大人でもない、センシティブになる世代として高校生を選びました。」

 

――1幕ラストの、あおいたちと鹿たちとの交流はどこかプリミティブで、トランスを誘うシーンとなっています。

「『鹿(しし)踊りのはじまり』がモチーフです。宮沢賢治さんの原作にある、鹿たちが歌う歌詞に曲をつけました。花巻にある宮沢賢治記念館の学芸員で、今回作品協力・方言指導をしてくださっている牛崎敏哉さんにお話をうかがい、原作を方言で朗読してもらって録音したものを、音楽の竹内聡さんが聴き、作曲しました。

また、わらび座さんならではの民舞を入れたいということだったので、(花巻の)鹿踊りをみんなに習いにいってもらって、その後に振付の江上万絢さんにコンテンポラリーにアレンジしてもらい、加えて、あおいとめぐると鹿たちのドラマに沿う動きを、民俗芸能構成の栗城宏さんと僕も一緒になって作っていきました」

 

舞台にはヘラルボニーの契約アーティスト11名の作品が登場。©Marino Matsushima 禁無断転載


――舞台を彩る知的障がい者の方々のアートは、いくつか候補がある中から選ばれたのでしょうか?

「ものすごい数の作品があって、ヘラルボニーさんのほうでデータ化されているのを、かたっぱしから拝見して、現代~川底~杉林~…と変わっていく各場面に合いそうな作品を探しました。

今回、ヘラルボニーさんのアートを使うことでボーダーレスな世界観を表現していますが、彼らの作品には本当に自由なものがあって、何にもとらわれない。好きだから描いたというのが、虔十の、好きだから杉を植えたという動機と共通しているんですよね」

 

――観客が光る玉を抱きながら観るのも、素敵な趣向ですね。

「理想としては、その人の体温によって色が変わったり、目が見えないお客様にも振動が伝わるといいねと言っていたのですが、そこまでやってしまうとものすごい予算になってしまうので(笑)、こちらのほうで、舞台の内容と連動して色が変わる操作をしています。膝の上で抱えていただくことで、光が自分のものになるような感覚を味わえるし、周囲を見回すととてもきれいです。2階席のある劇場なら、2階から見下ろすと壮観だと思います」

 

『真昼の星めぐり』より、「なめとこ山の熊」の世界。©Marino Matsushima 禁無断転載


――特に大変だったのはどんな部分でしたか?

「みんな大変でしたが、普段より、こうなるだろうと決めてかからないように作ったつもりです。なるべくみんなの意見を取り入れながら、そこで生まれるものを探す。こちらの思いを提示すると、みんながいろいろやってみてくれる。そんな中から生まれてきたのがこの作品です。

どのセクションも誰も答えがわからないなかで苦労してやってきたけれど、稽古場で誰がイニシアチブをとるわけでもなく、作品が勝手に動き出す…。“もしかしてここに(宮沢)賢治さん、いるんじゃないの?”と思えた稽古場でした(笑)」

 

――特にどんな方にご覧いただきたいですか?

「どの年代の方も間違いなく楽しめると思いますが、主人公と同じ、高校生ぐらいの子たちには一番響くかなと思います。そのいっぽうで大人たちも、何か思い出したり考えたりということもあるでしょう。

感覚的にも不思議な世界観なので、ふだん使わない五感を刺激すると思います。僕としても、ふだん作っているミュージカルとはちょっと違うものができたと思っています。小さなお子さんから大人の方まで、ご覧いただけたら嬉しいです」

 

あおい役 佐々木亜美・めぐる役 富樫美羽インタビュー:
最後に「星めぐりの歌」を歌う時、“宇宙”と“人生”を感じます

 

(左)佐々木亜美 秋田県出身。2018年初舞台。主な出演作「いつだって青空」「ゴホン!といえば」「青春(アオハル)するべ!」(右)冨樫美羽 北海道出身。2019年初舞台。主な出演作「ジパング青春記」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アキタ」「ジャングル大帝レオ」©Marino Matsushima 禁無断転載


――お二人ともご出身は北国ということで、宮沢賢治については思い入れが深いでしょうか。

佐々木亜美(以下・佐々木)「私は秋田出身で、正直、岩手の方に比べると(思い入れは)薄いと思いますが、小学校の教科書に本作にも出てくる『やまなし』が収録されていましたし、『銀河鉄道の夜』はよく耳にすることがあって、宮沢賢治さんは身近な作家さんです」

冨樫美羽(以下・冨樫)「私は北海道なのですが、宮沢賢治さんはわらび座で何度か扱っているので舞台を観ると素敵だなと思いますが、原作についてはちょっと難しいなという印象をもっていました。でも今回、母熊役の佐藤千明という、岩手出身のメンバーから“宮沢賢治の世界は“理解する”より“感じる”ものだと思っている“と聞きまして。なるほど、感じるようにしてみると、賢治さんの中にある景色がようやく自分の中に見えてきて、こういう楽しみ方があるんだなと思いました」

 

――本作にはたくさんの名場面がありますが、お二人が特にお好きなのは?

冨樫「虔十のシーンがすごく好きです。ヘラルボニーさんのアートとわらび座の世界観、そして照明が融合する感じが本当に好きですね。私達は“息を吐いて、吸って”と虔十に教わるのですが、吸った瞬間に本当に世界がきらきら輝いて映るんです。演者として幸せだなと思います」

佐々木「私も虔十や『鹿踊りのはじまり』で、アートと融合した総合芸術だなと実感しますが、個人的には、最初に何気なく思い出した“星めぐりの歌”を、いろいろ旅した後に最後に歌う時、壮大なものを感じるんです。あの瞬間が本作のまとめというか、宮沢賢治さんの世界、宇宙を感じて、自分の人生を辿ったり、未来を見つめたり…。“何か”が詰まった歌だなぁ、と感じます」

 

『真昼の星めぐり』より、「鹿踊りのはじまり」の世界。©Marino Matsushima 禁無断転載


――作品のために描かれたのではない、既存のアートとの共演はいかがですか?

冨樫「皆さん、自由な作風だなと感じていらっしゃると思いますが、本当に、こうでなければという制約がない世界観が、宮沢賢治さんの作品と親和性が高いなと感じます。稽古で初めてセットを見た時、すごく自然にとけこめました。抽象的だけど、新しく、どこか不思議に感じました」

佐々木「初めてセットデザインを見た時、あまりに華やかで、この前で芝居をしてもセットに負けてしまうのではと思ったのですが、びっくりするくらい自分たちも馴染んでいるし、安心して飛び込んでいけます。賢治さんの頭の仲が表現されているのかな。(抽象画なので)時には花に見えたり、山に見えたり。いろんなものに見えてくるのがこれまでにない感覚です」

 

――客席の光の玉は、舞台の上からはどう映りますか?

冨樫「私たちが一番きれいな景色を観ているかも…(笑)。“星めぐりの歌”を歌うラストは、本当に客席が星空に見えます。自分たちと同じ高さに星空があるので、よけいに宇宙にいる感覚になるのかもしれません。

他のシーンでも緑、白、赤といろいろな色に変わっていくので、まるでお客さんが感じていることをボールが表してくれて、皆で共感しながら舞台を一緒に作っているような感覚を抱きます。ステージだけでなく客席含めてイーハトーブになっています」

佐々木「昨日、カーテンコールでもお話したのですが、最初にボールが点灯した時、客席から“うわあ”という声が漏れるのが、舞台袖にいてもダイレクトに聴こえてきます。舞台って笑い声や拍手はよくあるけれど、“うわぁ”というのは聴いたことがなくて。この感動、驚きを体験できるのは、一緒に舞台を作るうえでとてもいいことだと思っています。私自身も多くのものをいただいています」

 

主人公たちが本能のままに踊る、終盤のダイナミックなダンス。©Marino Matsushima 禁無断転載


――本作では、お二人がいわゆる“女性らしさ”にとらわれない、かなりワイルドな振付を思う存分踊っていらっしゃるのも見どころです。

冨樫「振付の江上さんはコンテンポラリーの方で、動きに無理がないんです。筋肉を駆使しないといけない振付がなくて、合理的で踊りやすいです。めぐるとあおいの感情に合わせ、心のままに作ってくださっています。最後に皆が星めぐりを歌っている中で無心に踊るシーンなどはものすごく幸せです」

佐々木「コンテンポラリーダンスをわらび座がミュージカルで踊るのは初めてだし、個人的にも初挑戦でしたが、わらび座のやってきた民族舞踊との相性がすごくよくて、どう合わせていこうかという作業をする必要がありませんでした。無理なくその世界に滑り込んで、心が躍る感覚があり、全身が歌い踊り喋っている感覚があります。すごく疲れますが(笑)、思いっきり体と心を動かしています」

冨樫「特に『鹿踊り』は印象的なのではないかな。わらび座がやってきた民族舞踊とは全然違うけれど、どこか同じ。私達の体に馴染んでいる感覚があります」

 

視覚障がいを持つ方のために用意された、10分程度の音声解説。各自の役どころや衣裳について、俳優たちによって語られています。事前に作品世界を知っておきたい方も視聴可能。©Marino Matsushima 禁無断転載


――極力“誰もが観に来れる”公演を意識し、車いす席はもちろん、バリアフリー字幕席、補助犬同伴席、リラックスエリアなどを設置したり、“鑑賞マナーゆるめの回”が設けられている作品でもありますね。

佐々木「“鑑賞マナーゆるめの回”があったことで、入院中のお子さんと、叶うと思っていなかった観劇が出来た、というお声をいただきました。そういう方に来ていただくために準備はしていたけれど、実際に来てくださると、本当にやってよかったと思います。何度も観ることはできなくとも、貴重な一回が“来て良かった”と思ってもらえるものになったら嬉しいですし、それまで諦めていた方にも、観劇を楽しんでいただけるきっかけになったらと思います」

 

聴覚障がいを持つ方向けの、字幕モニター。俳優たちの台詞にあわせ、スタッフが手動で字幕を出しています。©Marino Matsushima 禁無断転載


――他にも、熱いコメントが集まっているそうですね。

冨樫「アンケートを読んでいると、特に20~30代の女性から、共感のコメントをいただいています。めぐるやあおいが感じている悩みは、特に多くの女性が思春期に経験したことなので、“めぐるは私だと思った”とか、“(この作品を観て)過去の自分の中にある悲しい気持ちが浄化されてゆくのを感じた”とおっしゃっていただけて嬉しいです。私たちと悩みを共有しながら、一緒に旅していただける。そういう方に来て頂けるのも、この作品ならではだと感じています」

 

舞台を見慣れない方のためのリラックス・スペースも。©Marino Matsushima 禁無断転載


――お二人自身についても少しうかがえればと思います。わらび座には在籍何年目でしょうか?

佐々木「役者になって8年目です。わらび座の養成所で2年間勉強した上で入団しました」
冨樫「私も養成所出身で、今年で7年目です」

 

――わらび座の魅力はどんなところにあると感じていますか?

冨樫「もともとはファンではなかったのですが(笑)、ミュージカル俳優になりたくて、どうしたらなれるかなと考えていた高校3年の時、芸術鑑賞でわらび座と出会いました。わらび座では俳優は社員という形になると知り、ここなら安心して送り出せると両親が言ってくれたので、とりあえず養成所で勉強することにしましたが、わらび座の人たちって本当に温かくて、優しくて。

誰かを思う心が無いとわらび座の芝居は出来ないし、それはお客さんたちに対してもそう。作品にも真摯に向き合っていて、私はこの劇団の、“舞台芸術が生活必需品になることを目指す”という理念に共感します。

心が豊かになることで人生は豊かになる…それは本当だなと思うし、お客様の豊かな人生の一端を担えたらと思いながら取り組んでいます。役者をやるならわらび座でないと、という気持ちで在籍しています」

佐々木「私はもともと、わらび座ファンでした。高校生の時に初めて観て“生きている人たちが舞台に立っている”のを観た思いでした。舞台に対して本気で生きている人たちに出会ってわらび座を目指したので、実際に入って、大変なこともいっぱいあるけど、皆で一生懸命“生きている”と思いながら仕事をしています。その仲間がたくさんいるのが、わらび座。作品も、命をテーマにしていたり、自分が生かされていると感じさせる作品が多く、“生きている”ことを実感できる劇団です」

 

(左)冨樫美羽さん、(右)佐々木亜美さん。©Marino Matsushima 禁無断転載

 

――読者の中には、俳優を夢見る若い方々もいらっしゃるかと思います。特にこういう方はわらび座に向いているよ、といったことはありますか?

冨樫「わらび座にやって来る人は、びっくりするほどダンスも芝居もやってきた人が少ないです。むしろ、未経験の方が向いているかも。私は少し踊りをやってから養成所に来て、“私って何も出来ないな”と打ちのめされました。プライドが邪魔していたのだと思います。まっさらな人こそのびるというか、2年間で何を掴んでいくかが大切なんです。養成所の周りには娯楽が全くないので(笑)、稽古に打ち込むしかありません。でも稽古場を24時間好きに使えるし、本当に芝居をやりたいというまっすぐな気持ちがあれば受け入れてくれる場所なので、ぜひ多くの方に来て頂きたいです」
佐々木「もちろん日本のどこで頑張っていらっしゃる俳優さんたちも素晴らしいと思いますが、わらび座にいると、自分を見つめることからしか、本当のお芝居は生まれないなと感じられます。仲間たちとたくさん会話をして考えて、自分やまわりを見つめられるようになれる場所だと伝えたいです。その仲間が増えたら嬉しいです。ぜひ秋田にいらしてください!」

 

――どんな表現者を目指していますか?

冨樫「今回の舞台を通して、鈴木ひがしさんに出会えたのは私達にとって大きなことでした。ひがしさんは、一人一人が“今、何を感じているか”を大事にワークショップをやってくださって、壁を触ったとき、相手役の目を見たときに何を感じるか、2か月をかけて丁寧に気づかせてくれました。作品にどう向かうかも大事だけど、共演者やスタッフとどう関係を築くか、優しさを与え合うか。技術も大事だけどそういうことこそ大事だな、誰かを思える役者でありたいな。これからもいっそう、そういう思いを大事にしていきたいです」

佐々木「私は、言葉を大事にする表現者でありたいと思っています。ミュージカルには踊りも歌もあるけれど、芝居と同じように言葉が詰まっていて、その言葉の温かさ冷たさ、背景をよく考えて、自分から表すことができる人間でありたい。その言葉をもって共演者やお客さんに対して、また自分に対しても真摯に向き合っていける表現者でありたいなと思っています」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
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*公演情報 イーハトーブシアター『真昼の星めぐり』9月28日=電力ホール(仙台)、10月4日=札幌市教育文化会館大ホール、10月18~26日=こくみん共済coop ホール/スペース・ゼロ(東京)、12月27~28日=サンケイホールブリーゼ(大阪) 公式HP
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