2月末を以て、建て替えのため一時休館となる帝国劇場。そのラストを飾る CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』が、15日に開幕しました。
現・帝劇でこれまでに上演された372作品のうち、全ミュージカル作品(53作品)の64曲を披露するコンサート。レギュラーキャストとゲストによるA~Gプログラムのうち、Aプログラムで行われたゲネプロの模様を、“前編”“後編”の2回に分けてレポートします!(これからご覧になる方のため、歌われる楽曲については一部を除き、作品名までの公開となっています)
シルバーとゴールドを基調とした緞帳“銀彩”の降りた舞台。オーボエを筆頭にまろやかな音合わせの音が聴こえ、オーケストラピットに指揮者・塩田明彦さんが笑顔で現れます。華々しい演奏が始まると、下手花道にコートを着た井上芳雄さんの姿が。
“紫の絨毯”…
“ステンドグラス”…
“1ベル鳴っても並んでるトイレ”…
観客にとっても馴染み深いキーワードが織り込まれたオリジナルソング「THE帝劇」を晴れやかに歌うと、井上さんは本舞台上にしつらえられた“帝劇楽屋口”へと吸い込まれ、瞬く間に眩いスーツ姿で再登場。
この日の出演者たち(レギュラーキャストは井上さんの他、浦井健治さん、小野田龍之介さん、甲斐翔真さん、佐藤隆紀さん、島田歌穂さん、三浦宏規さん、宮野真守さん。加えて、Aプログラム・キャストの生田絵梨花さん、崑夏美さん、涼風真世さん、平野綾さん、森公美子さん)も続々現れ、これまで帝劇で上演されてきたミュージカルのタイトルを、歌の中で順に紹介して行きます。53作品のネオンサインで埋め尽くされたステージが、何とも壮観。
井上さんの朗らかな挨拶に続き、いよいよ本編がスタート。森公美子さんら女性キャストが、躍動感たっぷりに『天使にラブソングを~シスター・アクト』のナンバーを、次いで佐藤隆紀さん、三浦宏規さん、宮野真守さんがエネルギッシュに『1789-バスティーユの恋人たち-』のナンバーを披露します。
甲斐翔真さんの激情迸る歌声とセリの上での官能的なタンゴが交錯する『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のナンバーが終わると、生田絵梨花さんが袖から現れ、自身にとっての“帝劇という存在”を語り、“次のコーナーではミュージカルに登場する素敵な恋人たちをご紹介します”と橋渡し。今回のコンサートはこのように、コーナーごと、もしくは数曲ごとにキャストが一人ずつ現れ、帝劇にまつわるエピソードを語って次にバトンを渡すという流れになっています。
その後もデュエット集、メドレー集、ジュークボックス・ミュージカル、ウィーン・ミュージカル…といったテーマで、“あの大作”“この名作”の選り抜きのナンバーが、舞台左右のアーチ部分に過去の舞台写真を映し出しながら続々披露。
過去にその役を演じたキャストによる歌唱もあれば、意外なキャスティングで歌われる楽曲もあり(特に、一見意外ながらもその方のプロフィールを思えば納得、の絶妙のキャスティングが、2幕で歌われる『SPY×FAMILY』)、なつかしさと新鮮さが交互に味わえる場面の連続です。
あるナンバーでは俳優たちが客席に降り、通路を笑顔で歩いて(駆け抜けて)行くのも嬉しい趣向。盆舞台、セリなど舞台機構を活用したナンバーもあり、照明も一曲一曲、緻密に出演者たちに注がれており、愛着ある劇場のために全てを出し尽くそうというスタッフたちの気概が、随所に感じられます。
25作品のナンバーが歌われたところで、通常のコンサートなら終演…となってもおかしくないところですが、このコンサートは特別。ここで25分間の休憩です。
(後編に続きます)
(取材・文・撮影=松島まり乃)
*無断転載を禁じます
*公演情報 CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』2月15~28日=帝国劇場 公式HP
*LIVE配信、ライブビューイングも有り。