Musical Theater Japan

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『The Dream Co-Star』岡田奈々インタビュー:“ここでしか観られないショー”に、現役アイドルの華を加えて

岡田奈々 1997年神奈川県出身。2012年にAKB48第14期生オーディションに合格し、デビュー。2017年、姉妹グループSTU48のキャプテンに任命。18年、初のソロコンサートを開催。22年『弥生、三月』でミュージカル・デビュー。🄫Marino Matsushima 禁無断転載

玉野和紀さんが構成・脚本・演出・振付を担当し、自身も出演するエンターテインメント・シリーズ「Dream」第三弾が近日、開幕。ミュージカル・ナンバーからジャズ、歌謡曲まで多彩な名曲を届けると同時に、スケッチ・コメディやオリジナル・ショート・ミュージカルも盛り込んだゴージャスで笑いもたっぷりのショーが、豪華キャストを迎えて展開します。

今回のステージに出演する一人が、『弥生、三月』でミュージカル・デビューを果たしたAKB48 の岡田奈々さん。力強い歌声でミュージカル界での活躍が期待される岡田さんに、玉野さんのもとで取り組む今回の稽古の手応えからアイドルとしての表現の工夫、これからの夢まで、たっぷりとうかがいました。

『The Dream Co-Star』明治座創業150周年記念公演
20代だからこその輝き、明るさを
出せるよう、意識しています


――岡田さんは今春、ミュージカル『弥生、三月』で夭折する高校生、さくら役を好演されました。生への渇望も夢もあるのに生きられない悔しさや、親友たちに“そのままのあなたでいて”と託す思いが歌声に溢れ、序盤で亡くなってしまう役柄ながら、最後まで彼女の存在を感じられた方は多かったと思います。一般のミュージカルには初出演だったのですね。
「AKB以外では初ミュージカルでした。初ということで常に不安というか、お客様に満足して帰っていただけるかなという気持ちを背負っていましたが、すごく素敵な作品で。初めてのミュージカルがこれで良かったと思いましたし、作品のキーパーソンというか、とても大事な役だったので、自分の成長にも繋がりました。あの役を演じたことで、歳をとることが楽しみにもなりましたね」

――歳をとることが楽しみに?
「女の子としては、いつまでもきれいでいたいし、歳をとって皺くちゃになるのはいやだなあ、なるべくきれいなまま生涯を終えたいなと思っていたのですが、さくらを演じることで、歳をとることの尊さを感じて。彼女は18歳で亡くなってしまうけれど、私自身は皺くちゃになるまで頑張って生きようかなって思うようになりました。(生きられなかった)彼女の分も、時間を大切にしよう、と」

――ミュージカルへの挑戦はいかがでしたか?
「本格的なミュージカルへの挑戦はすごく楽しくて、もちろん実力が伴わなくて葛藤するというか、実力のなさにうちのめされることもありましたが、私は歌が大好きなので、やっぱりミュージカルは楽しいなぁと思いながらやらせていただきました」

――AKBの歌を歌う時とは違う声を求められましたか?
「はい。『弥生、三月』の時に演出家の(菅野)こうめいさんから、“君はアイドルシンガーだね、そのアイドルらしい歌い方や喋り方をいったん捨てなさい”と言われて、やっぱり別物なんだなと感じました。(稽古で)その違いはこれだ!と掴むところまでは行かなかったのですが、例えばアイドルソングだったらメロディラインを楽しむことの方が多かったかな。メロディが気持ちよく聞こえればいいと思っていたけれど、ミュージカルの場合はそれより言葉がちゃんと立たなければならない、その人の気持ちが見えてこないといけない。だから楽しく歌うだけでは成り立たないのがポップスとは違うのだな、と思います」

――歌う時に、ポップスだとお客様をまず意識するけれど、ミュージカルだと相手役に向かって歌いかける、ということも…?
「そうですよね。アイドルはお客様のために歌うけれど、ミュージカルになると自分に問いかけているのか、相手役に問いかけているのか、全体に投げかけているのか、というのがその時々で変わるので、場面場面で相手は誰かというのを考えなければいけないのが大変でした」

前回のDream シリーズ『New Year's Dream』より。写真提供:明治座

 

――では今回出演される『The Dream Co-Star』のお話に移ります。構成・脚本・演出・振付の玉野(和紀)さんとは、以前からご縁が?
「今回が“初めまして”です。明治座さんも“初めまして”なので、なぜ私を⁈とびっくりしました。出演が決まって、Dream Co-Starシリーズの前回の舞台映像を拝見して、自分がこれまでやっていないタイプの舞台なので、わくわくしました。一つのストーリーを演じるのではなく、この舞台にはいろんな要素があるんですね。いろいろなアーティストさんのナンバーをカバーしたり、コミカルなスケッチや、デュエットや全員で歌ったり。作品というより“ショー”というのが近いのかな。ここでしか観られない、とても贅沢なステージですね」

――先ほど読者プレゼント用に色紙にポジティブ・フレーズを書いていただきましたが、岡田さんが選ばれたのは今回の舞台で演じるオリジナル・ショート・ミュージカルの台詞だそうですね。ミュージカルということで、歌も歌われる…?
「歌います。いろいろなアーティストさんのナンバーを歌いながら紡いでいくのですが、あの有名な曲がここに⁈しかもワンフレーズ⁈という感じで登場します。生演奏というのも贅沢ですよね」

――ストーリー自体も、とある有名なお話がベースのようですが、ひねりがある、と…?
「あります。“新説”という感じで、面白いと思います」

――出演者一人一人の個性に応じてパートは割り振られていらっしゃるでしょうか。
「玉野さんが実際どう決めていらっしゃるかはわかりませんが、私に関しては見て下さっているなと感じます。ソロナンバーに関しては、好きな曲を候補にしていいよということで、私からJ-POPを10曲ぐらい提案させていただいた中から選んでくださって。英語の曲を歌わない?ともおっしゃってくださったのですが、短期間でマスターできる自信がなかったので、不安ですと言ったら違う曲の提案をして下さいました。意志を尊重して下さるし、すごく優しい方です」

前回のDreamシリーズ『New Year's Dream』より。写真提供:明治座

 

――ダンスもたくさん踊られますか?
「私に関しては一曲だけしっかり踊る曲があります。ダンスは苦手なのでちょっと不安ですが(笑)、びしばし教えていただいてやらせていただいています」

――動画サイトではヒップホップ系のダンスをされている動画もあがっていましたが…。
「その曲だけは踊れるように頑張るんです。同時にいろんなことをすると“あれ?”となるかも(笑)。今回も、その一曲だけ一生懸命(ダンスを)頑張っています」

――ご自身の中で、今回テーマにしていることは?
「 ”勉強“です。今回、こんなに素晴らしい方々とご一緒するなかで、自分は一番年齢的にもキャリア的にも若い方なので、たくさん吸収して勉強して、成長に繋げていく期間にできたらと思っています。本当にいろんな畑の方々が集まっていますが、すごくあたたかくて皆さん優しいです。実力派の方々だけに、最初はもっと怖い感じかな、怒られるかなと思っていたんですが、むしろ褒めてくださったりとか、質問にも答えてくださったりアドバイスをくださったり。人柄から出来上がっている方々です」

――それぞれのカラーを出すことを求められると思いますが、岡田さん的に“ここを頑張ろう”というものはありますか?
「自分の役割的には、まだ現役アイドルというところもあるので、ステージに華をもたせて、若さで頑張るぞ!という心意気です」

――“華”って目に見えないものですが、どんな工夫をされていますか?
「なんだろうなぁ。20代にしか出せない輝きだったり、明るさを出せたらいいなぁと思います。(共演の)お姉さま方は歌声にすごく色気があって、自分は色気ではたぶん戦えないから(笑)、なるべくかわいらしくポップに歌おうかな、といったことは思っています。全体を見ながら、自分の役割はなんだろうと思ってやっていますし、たまにそういった中で大人っぽいところを出せたら、ギャップが光るかなと思っています」

――ちなみに、在籍されているAKB48はとても大所帯ですが、その中ではどのように自分を輝かせていますか?
「AKBは90人ぐらいいるので、自分らしさの出し方については、皆悩んでいますが、私の場合はとにかく髪色を変えて、見つけてもらおうと(笑)。歌番組でもぱっと“いるね”と思っていただけるように、とにかく見た目を変えています。AKBの楽曲はスローなパートがあまりなくて、歌声で判別していただくのが難しいので、まずはビジュアルで攻めています」

――“いるね”、と注目されたうえで、ずっと見てもらうには…?
「見た目以外で言うと、カメラに一瞬しか映らない中でどれだけ印象付けられるか。何を思われてもいいから、意味のある瞬間になればと思いながらやっています。例えばメンバーの中にはウインクが上手な子がいますが、そういう子が多いからわざと自分はやらない、とか考えてやっています」

――今回、どんな舞台になればと思っていらっしゃいますか?
「一番は、自分の歌声でお客様を感動させられる舞台になったらいいなと思いますし、今回共演させていただく方のファンで、初めて私を見て下さるという方も多いと思いますので、そういう方々に印象に残るような存在であれたら嬉しいです」

岡田奈々さん。🄫Marino Matsushima 禁無断転載

――AKBグループからは、ミュージカル界に躍進されている方が続々いらっしゃいますが、岡田さんも『弥生、三月』に出られたことで、今後もミュージカルを続けていこうと思われていますか?
「自分の中の夢は、一人で武道館を埋めてライブをやりたい、ということなのですが、それとは別に、ミュージカルをやりたい、という思いもあります。今回、玉野さんとお話していて、今回の出演者の中には名作ミュージカルに出演している先輩方もいらっしゃるので、君も狙いなよと言っていただいていて。自分の中ではまだ途方もないことではありますが、そこを目指せるように実力をつけていきたいです」

――どんな作品がお好きですか?
「どちらかというとポップス系の音楽を聴いてきましたが、ミュージカルも勉強して、いろんな声を出せるようになっていきたいです。玉野さんからは、(今回共演する)堂珍(嘉邦)さんも出演されたロックミュージカルが次にオーディションをやる時は挑戦してみたら、と言っていただいているので、まずはそこかな、と。きれいでかわいい方はたくさんいらっしゃるので、ロックでちょっと風変わりな役どころとか、違ったところから攻めてみたいです」

――ライブ活動とミュージカルの双方で活躍できるといいですね。
「ライブでは存分に自分を表現して、ミュージカルではその役柄になりきるということが出来たら、理想の活動になります。それに備えて、昨年から定期的にボイストレーニングをしたりして勉強中です」

――どんな表現者を目指していらっしゃいますか?
「難しいですが、自分の中では今、“振り幅お化け”を目標にしています。いろいろな表現が出来る人。ミュージカルだけで活躍されている方も、ポップスだけの方もいらっしゃいますが、私は欲張りなので、全部出来るようになれたら。アニソンも歌ってみたいです。あなたの中に何人住んでいるの?と思っていただけるような表現者になっていきたいです」

(取材・文・撮影=松島まり乃)
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*公演情報 明治座創業150周年記念公演『The Dream Co-Star』9月9~15日=明治座 公式HP

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