Musical Theater Japan

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中川晃教インタビュー:音楽を巡る、新たな挑戦。

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中川晃教 宮城県出身。01年『I Will Get Your Kiss』でCDデビュー、翌年『モーツァルト!』で舞台デビュー。以来『ジャージー・ボーイズ』『HEADS UP!』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『グランドホテル』等の舞台や『精霊の守り人』等のTVドラマなど、様々なフィールドで活躍している。(C)Marino Matsushima

数か月の自粛期間を経て、再開しつつある劇場街。その中でも明治座でのコンサート、『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート、『SHOW-ISMS』等、八面六臂の活躍を見せているのが中川晃教さんです。9月からは日テレプラスにて、自身がナビゲーターをつとめる番組『中川晃教 Live Music Studio』がスタート。日々、挑戦を続ける彼に、自粛期間中に感じていたこと、そして“今”の思いをうかがいました。

“エンタテインメントの力を再発見できる番組に。”
『中川晃教 Live Music Studio』取材会レポート

 

7月のある昼下がり、都内のスタジオに現れた中川晃教さん、加藤和樹さん。2月に大阪で千穐楽を迎えたミュージカル『フランケンシュタイン』再演でもビクター・フランケンシュタイン役、怪物役で共演し、気心の知れた二人だけに、リラックスしたムードの中、取材会が始まります。

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会見で語る中川晃教さん、加藤和樹さん。互いにリスペクトを抱き、高めあう関係性がうかがえます。スタイリスト:AKIRA(中川晃教)、立山功(加藤和樹)
(C)Marino Matsushima

はじめに、中川さんから番組オファー受諾までの経緯についてお話が。
自粛期間中は、朝、起きて顔を洗い、シャワーを浴びて料理をして、庭の花の手入れや掃除をしたり…という日常生活を、感謝の気持ちとともに送っていた中川さん。(物理的な)孤独はネガティブなものではなく、自分を見つめる時間、前を向くための時間だと実感しながら、“何か出来ることを”と仲間たちと連絡を取り合い、それぞれ自宅から音楽を届けていくことにしたのだそう。

“Oh, What A Night”(『ジャージー・ボーイズ』)を歌って発信し、豪華な照明を受けてステージに出ることだけがミュージカルではないんだな…と感じていたころに届いたのが、今回の番組のオファー。明日も頑張ろうと思って頂ける番組が出来れば、と快諾し、書き下ろしのオープニング・ナンバーには即興でその時の気持ちものせ、出会いの素晴らしさ、舞台の楽しさを感じていただけるような曲に仕上げたい、と考えているそうです。

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もし互いに体が入れ替わったら何をしたいですか?の問いに、 中川さんは「加藤さんは内面が素敵なのに外見も素晴らしいナイスガイ。僕が持っていないものを持っている方なので、もしそれを手に入れたら乱用します(笑)。躓いた時、手を差し伸べられて、それが加藤さんだったらハッとなるじゃないですか。それをどんどんやってみたいです(笑)」(C)Marino Matsushima

ナビゲーターとしては、以前、ご一緒した由紀さおりさんの名司会ぶり…ゲストの話をしっかりと聞き、その方が言わんとしていることを引き出す手腕…を思い出しつつ、無茶ぶりも交え、ゲストのいろいろな要素をお届けしたい、とのこと。第一回ゲストの加藤和樹さんは日常的にも音楽的にも多才で、わかりづらい音符も読みこなせばギターも弾くとあって、(彼となら)何も怖いことはありません、と中川さん。

それを受けて加藤さんは、自粛期間中、自分たちで発信できることには限界があると感じる中でこの番組の話を聞き、エンタテインメントの必要性を改めて多くの人に届けられる、とわくわくしたそう。“アッキーさんはかなり自由な人だけど(笑)、きちんとするところはするし、頼りにもなる。誰からも愛されるし、彼こそ音楽”。その彼がナビゲーターなので、何も心配はなく、大船に乗った気持ちです。やっぱり音楽っていいよね、という前向きな気持ちになれる番組になれば…と、力強く語ります。

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体が入れ替わったら?の問いに加藤さんは「カラオケを一晩中やりたいですね。だって(中川さんのように)これだけ歌えたら、どんなに楽しいだろうといつも思うもの。もちろん、凄く努力されているのも知っているけど、どれだけ声出る!って思います。心ゆくまで歌いたいですね」 (C)Marino Matsushima

お互いについて、加藤さんは初共演時、稽古場で中川さんが歌う姿に“なんて贅沢な空間なんだと思った”そう。アーティストとしては、自分とは違う根っこがあり、音楽への接し方など、本当に自由な人だと感じる。その歌声は、“皆さん、天使の歌声とおっしゃるけど、天使の歌声って聴いたことあるんですか?(笑) 僕は、人を魅了する声、それに尽きると思っています”。稽古場の発声練習を聴いていると、自分の声を楽器として認識していて、それを体現していると思える。生まれ持ったもの+努力で培ったものがあって、しかもそれが進化し続けている…と感じているそう。

いっぽう中川さんは、共演が続く中で、加藤さんは気遣いのポイントが自分と似ており、誰かが突出するのではなく、カンパニー全体が成長していくことを目指す、そのためにとても気を遣う人なのだと感じたそう。表現者としては、彼はクリエイタータイプで、どうしてこの曲がこう成り立っているかということをしっかり把握するタイプ。一緒に歌いたいと思えるアーティストだそうです。

番組のアイディアとしては、例えば『フランケンシュタイン』で加藤さんが(怪物と二役の)アンリとして歌った「君の夢の中で」を中川さんが歌い、中川さん演じるヴィクターが歌った「後悔」は加藤さんが歌う。あるいは、誰もが知っているクラシックに歌詞をつけ、ポップスとして歌うという中川さん自身のCDの中で、「花のワルツ」に「旅人」というタイトルをつけ歌った曲を、自粛期間中に加藤さんのYoutubeチャンネルでセッションした。これをスタジオで実際にやってみよう、という話をしているそう。具体的な構想に、取材陣の想像も膨らみ、おおいに期待が高まります。

“信じた時に、可能性は現れる。”
中川晃教インタビュー

 

続いて、中川さんにさきほどのお話をもう少し、深めさせていただきました。

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率直にここ数か月の心模様を語る中川さん。(C)Marino Matsushima

――先ほど、自粛期間についてのお話がありましたが、中川さんは“日常生活”をポジティブに送っていらっしゃったとのこと。当時は悲観的に感じる方も少なくありませんでしたが、中川さんにはそうした“暗黒時代”はなかったのですね。

「どうでしょう、あまりなかったかもしれません」

 

――それは、やりたいことがたくさんあったから…?

「今回のような時は特にそうだと思いますが、そうでない時であっても、何をしたとしても、メリット・デメリット、ポジティブな意見・ネガティブな意見の両方が常に生まれると思います。様々な立場の方がいらっしゃるので、いろんな意見があっていいと考えています。

でも、音楽をやっている時の僕は激しい人に見えるかもしれないけれど、普段の僕はそうじゃなくて。そういうことに心を左右されるのはハッピーではないな、心を落ち着かせていたいな、と思っていました。
ニュースを聴いていると、確かに大変な事態ではあるけれど、町は町で動いていて、スーパーも開いていて。それぞれにシフトを持ち、対応する中で生活は動いていて、そんな必要最小限の中で、日が昇って、沈んでいく。そこに僕は喜びを得ることが出来ていました。

状況が突然、ではなく少しずつ変わっていったことも、大きかったかもしれません。
(年があけて)“怖いね”とか“気をつけようね”と言いあっていたのが、2月の大阪の『フランケンシュタイン』のころには、ちょっと危うい空気もあったけれど、ギリギリ公演を終えることが出来たんです。千穐楽の日には、満席のお客様が皆様、マスクをされていて、こちらから見える光景が真っ白。後にも先にも観たことのない景色でした。お客様が自覚を持って来てくださっていることが有難くて、カーテンコールでも皆さんのおかげでこの日を迎えられました、気をつけて帰りましょうとお話して、僕もマスクをして、いつも以上に念入りに対策をして新幹線に乗りました。

その後、『チェーザレ』のための乗馬練習で郊外のキャンプ場に行ったら、思いのほか人で賑わっていて、大丈夫になったのかな、と思っていたら、お客様を入れてやることになっていたライブ会場での収録が突如無観客でやることになり、翌日の、東京文化会館小ホールでの毎年やらせていただいているコンサートも延期になって。少しずつ、それまでとは違った流れになってきたことを肌で感じました。いきなりではなく少しずつの変化だったので、スケジュールがさっと空白になった時、確かにはじめは不安もあったけど、おっしゃっていただいたように、そのうち“この機会にあれも、これもやりたい”というものがどんどん溢れてきました」

 

――元来、発想の転換が早い方なのかもしれないですね。

「僕も皆さんと同じだと思うんです。先のことは誰にもわからない。ワクチンが出来なければ、いろんなことが元通りには動き始めない…。それはもちろん不安です。でも、そんな切実な現状があるからこそ、興行をうって下さる方が延期せざるをえないだろうという判断をされたということは慎重な判断だと受け止めることが出来たし、楽しみにしてくれた方のために何か出来ないだろうかと、ツイッターを通して音楽を配信させていただいたりしていました。ポジティブな発想が出来たのは、生まれつきなのか、恵まれていたからなのかはわからないけれど、皆が熟慮されているなかで、前向きな気持ちを大切にしないと、ということは思っていました」

 

――表現者には2タイプあって、内から生まれてきたものを発露したい、という思いがまずある方と、他者に尽くしたい、という原動力に衝き動かされている方がいらっしゃるような気がしますが、中川さんのお話をうかがっていると、後者のような気がします。ご自身ではどうとらえていますか?

「若い時は、誰もが自分の可能性にかけて進んでいくと思うんですよね。振り返ってみると、僕もたくさんの出会いの中で学ばせてもらいながら、どんどん自分に自信を持てるようになったり、自分が(自分自身を)作り上げていくんだという気持ちになっていきました。でも経験や努力不足で、気持ちはあっても出来ないこともあって。簡単に“挫折”という言葉は使いたくないけど、ジレンマとか葛藤も経ながら、30代に突入しました。急がば回れの精神の時もあれば、がむしゃらにやる時もあって、そういう積み重ねがあって、今回の番組のような成果が実感できるところに来ています。

でも、そこで安定とか、安堵することが目標ではないんです。皆さんから“活躍してるね”と言っていただけるのは嬉しいけれど、僕が満たされるのはその、もう一つ先。音楽の世界で自由になれる、人の心に届けることが出来るのが僕の歓びなんだ、と思うだけではダメで、実際にちゃんと喜んでいただけたと実感できないと意味がない。そして、常に動き続けるということ。(コロナウイルス禍で)ライブ活動が出来なくても、形を変えて皆に音楽を届けることはできます。例えば、今回の番組にもいろんな可能性があるじゃないですか。誰にも予測のつかない新たな環境の中で、今までやってきたことのすべては今まで通りにできなくとも、一つは出来るかもしれないし、その一つの扉の中にさらに扉が10個隠れているかもしれない。信じた時に、可能性は現れる。自粛期間を経た今は、そんな思いを持っています」

 

――以前から、中川さんには“ミュージカル作り”の夢があることをうかがっていますが、今回の番組はその“ラボ”的な存在になるでしょうか?

「ラボという言葉を使っていいかわからないけど、そうなるかもしれないですよね。僕はいろんな歌番組を見てきた世代だし、今も『FNS歌謡祭』『ミュージックフェア』といろんな番組にお世話になっていますが、そういう(既存の)番組の模倣には限界があると思うんです。それより自分の経験をもとに作り上げるほうが僕らしいのかなと思うし、そこに可能性を見て下さった方々が背中を押して下さってもいます。

ショーって、人生と重なると思うんですね。涙も笑いもすべてあって、悲しく終わるのもショーかもしれないけど、必ずフィナーレがあってお客様に拍手をもらうじゃないですか。ショーの主人公は、(観ている)みんなの人生を生きている、ともとれます。中川晃教という実態と、ミュージカルというエンタテインメントの中での役、その両方が僕自身だと思うので、その二つがないまぜになったショーが(この番組で)創造できたら面白いかな、と思っています」

例えば放映の度に一つの物語性を持つオリジナル曲を披露して、最終回に全体テーマが浮かび上がる“ソングサイクル・ミュージカル”も面白いかもしれないですね、とお話してみたところ、“なるほど。そういえば、僕のオリジナル曲はよく物語性があると言われています。”と目を輝かせていらっしゃった中川さん。様々な体験を経て、彼がどんなクリエーションに踏み出してゆくのか、興味は尽きません。

(取材・文・撮影=松島まり乃)
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放送情報 『中川晃教 Live Music Studio』日テレプラスで独占放送 9月27日(日)18:30~20:30 (8月29日21時~にStreaming +ver.を先行配信)
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