Musical Theater Japan

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THE CONVOY SHOW 石坂勇×山野光インタビュー:懸命に感じ、考え、愛すること

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石坂勇 東京都出身。THE CONVOY SHOW創立メンバーの一人。ストレート・プレイから時代劇、2.5次元、ミュージカル(『プリシラ』等)まで幅広く活躍している。山野光 大阪府出身。幼少期にダンスを始め、ミュージカル(『イン・ザ・ハイツ』『ドン・ジュアン』等)やバックダンサー(米津玄師)で活躍している。©Marino Matsushima 禁無断転載

切れ味抜群のダンスと歌、芝居を融合させたTHE CONVOY SHOW。1986年に誕生し、2016年からは若手メンバーも参加している唯一無二のショーが、35周年記念公演を行います。長く愛されるその魅力とは、そしてこのショーを構成する方々とは。今回の14名の出演者の中から、オリジナル・メンバーの一人である石坂勇さん、そして『イン・ザ・ハイツ』等のミュージカルでも活躍している山野光さんのお話をお届けします!

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

――石坂さん、今、(読者プレゼント用の)色紙に「REAL LOVE」と書いて下さいましたが、その心は?

石坂「人に対してというより、自分自身に対するメッセージです。ダンスにしても何にしても、周りの人より愛を持っていないと期待にも応えられないし、迷惑をかけてしまうこともある。もっと自分自身に対して、リアルに考えろよ、愛を育てろよ、という意味です。

例えば、何かすっきりしないことがあるとして、その原因は何だろう、と追求することも愛。“ま、いいか”と思ってしまったらそこで(進化が)止まってしまうからね。稽古をしていても、ただ(振付けられたから)手を伸ばせばいいというものじゃなくて、何かあるから伸ばすんじゃないのか。触れたい、届けたい何かがあるから、精一杯手を伸ばす。そういうことを含めて“愛”なんだと思っています」

――早くも、身体表現とは何か、という核心に入ってきましたが、こういった石坂さんのお話を山野さんは普段、稽古場でよく聞いていらっしゃるのですか?

山野「(深く受け止めながら)いえ、初耳です」

石坂「敢えてこういうこと、話さないものね」

山野「でも今、お話をうかがっていて、自分の中でも共感する部分がありました。僕はマイケル・ジャクソンに憧れて4歳でダンスを始めて今年15年目なんですが、与えられた動きと動線をこなすことに頭がいっていて、ダンスの“意味”までは、考えてはいてもどこかしっくりきていなかったんです。でも最近、自分が体を動かすだけで人の心を動かせられたら、と深い表現を研究し始めたので、勉強になります」

石坂「もうそんなこと思ってるの?早いね(笑)」

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

――表現者として、お互いをどう御覧になっていますか?

石坂「僕が若いころは、一日にダンスのレッスンを2,3回やって、隙間の時間にリハーサルをして、終わったらクラブで朝まで遊んで、という生活をずっとしていたんです。40をちょっと過ぎたころに、踊りはもう限界かなと思っていたら芝居をしている自分を“こいつ面白いかも”と思えるようになって、ダンスレッスンは少しずつ減らし、俳優としての最低限の筋力を残すため、バレエだけ残しました。

そうして一時期、芝居に集中してから踊ってみたら、以前のダンスの感覚とはまた違って、“ダンスもまた台詞だし、芝居なんだな”と思えたことで、もう一度楽しめる自分になれた。それで、踊ることで何を芝居として伝えられるか、ということに(目標が)変わりました。今、若いメンバーの無茶な動きを見ていて、“俺も昔こういうことやってたな~、今、やれるうちにやったらいいよ”と思うけど、僕自身は恋しくはないな。たくさん稽古して、たくさん遊ぶといいよ(笑)。

ただ稽古していればうまくなるというものではなくて、特に男の子は“遊び”がないと魅力が生まれない。ちょっと雑で弱くて、という女の子にない要素をフルに生かしたらいいと思う。“あいつ、いい歳して何やってるの”と言われるくらいでいいの。一つのステージで“凄かった”なんて評価されても、次にやることが素敵じゃないと意味がない。だからこそ一生懸命心で感じて、頭で考えて、何が来ても負けない愛を育てるしかない。“俺は誰よりもこれが好きだ”と言える自分でいたいですよね」

山野「石坂さんてめっちゃ深いんですよね。動かなくても、既にかっこいい…」

石坂「(舞台で)動かなくていい?(笑)」

山野「踊ってるときもすごく素敵で、僕も負けてられないなと思うけど、お芝居している時もかっこよくて。それに引き換え、自分は立ち振る舞いがダサいと自覚しています」

石坂「“居ずまい”っていうやつだね」

山野「難しいです。オリジナル・メンバーの皆さんの中でも特にサムさんはかっこよくて、ひそかに勉強させてもらっています」

石坂「僕はメンバーの中でも一番テキトーだからね(笑)」

山野「でも丁寧なんです」

石坂「いつも“本気出せよ”とリーダー(今村ねずみさん)に言われて、“やるときはやります”と言っている、コンボイの中の異端児ですから。で、本番が始まったら“いただきます”というタイプです(笑)」

山野「かっこいい…」

石坂「子供の頃、皆が放課後に徒競走の練習をしている時、俺は真っ先に帰っちゃうの。でも誰も起きてない時間に起きて練習して、運動会で1位とって“あいつ遊んでたのに何で”と言われるタイプ」

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THE CONVOY SHOW vol.41 『コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載

――『プリシラ』で陣内孝則さん演じるトランスジェンダーのバーナデットと恋仲になるボブ役も、すこぶる素敵でした。

石坂「あれは難しかったです。海外版では髪の毛が薄くてうだつの上がらない中年男性の役ですごく悩んだんだけど、陣内さんが“悩むことないよ、とっても素敵だよ。(石坂さんのボブからは)愛が伝わるし、すごく芝居しやすいよ”と言ってくれて助けられました。昭和の銀幕のスターと一緒にやってきた最後の世代の陣内さんにそう言っていただいたら、元気になるよね。最終的には“リアルな俺でいいや。奥さんでもない人に振り回されて仕事もうだつがあがらない俺が、もし陣内さんと出会って心が動いたら…ということでやってみよう”と思いながらやったら、本国から観に来たプロデューサーさんたちが“日本版のボブがベストだ。僕らが求めていたのはこういうボブです”と言ってくれて、嬉しかったです。

振り返ると、僕が困ったり壁にぶつかると、こんなふうに必ず誰かが手を差し伸べてくれたんですよね。コンボイのメンバーもそうで、僕が持ってないものを仲間たちが持っていて。

そういう人たちが日々、どんどん増えながら、僕の背中を押してくれている。もう何十万、何百万人もいる。彼らがいてくれるから、僕は何も怖くないんです。僕、こんなにたくさんの人と出会ってるんだぜ、というのが僕のプライドだし、生きる勇気に繋がっているのかな」

山野「(圧倒されて)そうなんですね…」

石坂「だから一人で頑張る必要ないんですよ。僕は“座組”というものが大好きで、コンボイに限らず、どの座組も、稽古期間の一か月でぎゅっと一つの家族のようになる。“初めまして”と言っていたのがいつの間にか“また絶対一緒にやろう”と言い合うまで深まれる。皆で切磋琢磨して、努力しているからですよね。これが好きで、だからこの仕事、やめられないんです」

『THE CONVOY SHOW Vol.41 コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載 

――コンボイを観たことがない人に向けて、一言でコンボイを表現するとしたら?

山野「うーーーーん、まずは観に来て!と言いたいです(笑)」

石坂「やっている本人たちもうまく説明できないよね。お芝居であり、歌も踊りもタップもあるし、時に太鼓を叩いたり。いつか“コンボイって一つのジャンルになったらいいね”と言い合っていたら、僕らの後に出来たグループがインタビューで“一言でいうと僕らコンボイみたいなことをやってます”と言っていて、お、やっと来たな、僕ら一つのジャンルになったんだな、と思えた。コンボイはコンボイでしかないので、とにかく観に来てほしいです」

――今回、どんな舞台になればと思っていらっしゃいますか?

山野「それはもう“素敵な舞台”にしたいです」

石坂「それが本音だよね」

山野「その一部を僕が担うということを自覚して取り組みたいです。35周年の節目ということがなくても(今村)ねずみさんの脚本がとっても素敵なので、それをどれだけ増幅させて、若手の僕が新しい風を吹き起こさせてもらうか。そこで生まれるいいエネルギーを皆さんに感じて、楽しんでもらえたらなと思ってます」

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THE CONVOY SHOW vol.41 『コンボ・イ・ランド』より。©Marino Matsushima 禁無断転載

(取材・文・撮影=松島まり乃)
*公演情報 THE CONVOY SHOW vol.41『コンボ・イ・ランド』東京公演12月10~18日=こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ 大阪公演12月30~31日=森ノ宮ピロティホール 公式HP
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